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第一章 幸せの意味も、不幸の意味も分からずに 1

映し鏡のセルジュのシーンから、徐々に物語が始まっていきます。

挿絵(By みてみん)


ロゴ:どりむきゅ様 @dreamQ0114 より頂きました。



△ルブル


 世界破壊の組織「ダート」を創設する。 魔女 能力 カラプト


 世界の片隅にて森に囲まれた魔女の城に住まう。


 メアリーとは恋人関係。



△メアリー


 魔女の召使 能力 マルトリート


 世界破壊の組織「ダート」を創設する事を主であるルブルに提案する。


 魔女の館にてルブルの召使をしている女。

 

 同性愛者。


 ルブルとは恋人関係。




△セルジュ


 能力 映し鏡




 ダリアという女に失恋し、夜の街にて後を付けていた処、

 メアリーに興味を抱かれて、

 ダリアを共にさらい、ダリアの肉体に自身の脳を入れられて、

 恋する女の肉体を得た男。


 組織「ダート」のメンバーになる。




△アイーシャ


 能力 ネクロ・クルセイダー



 ルブルの作り出すゾンビの集団と、

 幻影使いメアリーに敗れ、敗北し、

 魔女の城にて、メアリーによって玩具にされる。





△ケルベロス


 能力 アケローン


 黒いコートを纏った筋肉質に精悍な顔の男。


 能力犯罪者を収容する「アサイラム」の暫定的所長を務めている。



△インソムニア


 能力 ダンス・マカーブル


 能力者ギルド「ドーン」の強力な能力者の少女。

 ゴシック・パンクのファッションに身を包んでいる。



△グリーン・ドレス


 能力 マグナカルタ


 炎使いの女。

 先の戦闘でボロボロに傷付き、川沿いで倒れていた処をメアリー達に助けられて、「ダート」のメンバーに加わる。


 赤い髪に、竜の鱗のような甲冑を身に纏っている。



△ウォーター・ハウス


 グリーン・ドレスの恋人。

 過去のエピソードで死亡している。




△イゾルダ


 強大な力を持つ人型の生体兵器。 能力 イーティング・スター


 大柄の男の姿をしている。




△メビウス・リング


 能力 ウロボロス


 能力者ギルドである「ドーン」の創設者。

 人間サイズの黒いドレスを纏った金色の巻き髪をした球体関節人形。






 狂人は狂人を呼ぶのだろう。


 きっと、それだけは確かな事なのだろう。自分は、どうしようもないくらいに狂っていて、だからこそ、彼女は彼を呼び止めたのだ。引き寄せてしまったのだと言ってもいいのかもしれない。


「あの娘の事が好きなのね?」


 メアリーと初めて会った時の事だ。

 その日は、夕暮れだった。

 街頭で、ダリアを遠くから眺めていた時だった。どうしようもない程の嫉妬心に苛まれていて、どうすれば、あの女を殺せるか、ばかりを考えていた。


 その感情をどうしても、止められそうになかった。何度も、自分の醜悪な気持ちを押し殺そうとした。他の事をやって、気持ちを消し去ろうともした。

 けれども、どうしても駄目だった。

 だから、何とかして、ダリアという自分を傷付けた女に、復讐してやろうと思ったのだった。


「あら、貴方、ストーカー気質なのね。粘着的で嫉妬心が強くて、被害妄想も強くて相手に嫌悪されるタイプ」

「ああっ、何だよ? 俺はそんなにおかしいのかよ?」

「私好みの素敵な人だって言っている」


 メアリーは、嬉々として、そんな事を断言した。彼女は買い物篭をぶら下げたまま、しばらくの間、ずっと彼に対して付き纏っていた。


 セルジュはずっと、付き纏ってくる、この女を仕方無く、好きにさせる事にした。

 どうやら、メアリーは、ある城の主のメイドをしているとの事だった。生活必需品を買った帰りに、たまたまセルジュを見つけて、興味を持ったとの事だった。


 ストーカーのストーカーというのも、何だか変なものだなあ、とセルジュはその時は思った。滑稽以外の何物でも無かった。

メアリーは、セルジュの想い人である、ダリアについて、深く追求した。セルジュは煩わしいながらも、丁寧に答えていった。


 そう、ダリアは同級生だった。

 自分が女に対して、恋心なんて抱くなんて思ってもいなかった。

 そういったものは、それこそ軟弱なものだと思って、セルジュはひたすらに、勉学を学んで、エリートの道を歩み、将来は、弁護士か国家公務員にでもなりたかった。


 内向的な彼は、ひたすらに、頑強な肉体を持つ者や、野蛮な性格をしている者達を嫌悪していた。

そんなわけで、彼は友人が少なく、ずっと暗い青春を送り続けていた。

 恋愛感情なんかに惑わされる自分が気持ち悪くて仕方が無かった。

 結果、上手くいかずに嫌悪された。


 セルジュはダリアが憎くて仕方が無かった。自分の事をもっと理解して欲しかったし、愛しても欲しかった。

 けれども、セルジュは彼女に拒まれた。

 まるで、返事などしてくれなくなってしまった。

 ひたむきに、妬み、恨んだ。


 けれども、毎日、毎日、片隅にダリアの顔と声が重なる。

 どうして、上手くいかなかったのだろう。そういった後悔の念ばかりが重なっていく。

 けれども、時間は巻き戻らない。


 セルジュに少なからず好意を抱いていたダリアはもはや、存在しない。まるで、別の何かが憑依したかのように、彼女の顔をした蝋人形か何かが喋っているように、ダリアは冷たい視線で、セルジュを害虫でも見るかのような眼で拒み続けるのだった。

 そんな時だった。

 メアリーは颯爽(さっそう)と現われた気がする。


「あの女の人格消して、あの女の身体に入り込んじゃえばいいじゃない?」

「お前、何言っているんだよ?」

 セルジュは、メアリーという女の言っている事は、最初、質の悪い冗談なのだと思った。


「私だったら、そうするわ。それが純粋な愛の形だと思っているから。踏み躙ればいい。彼女の心が手に入らないなら、彼女の心なんて消し去ってしまえばいいの。貴方が彼女になるの」

 セルジュは、彼女が何を言っているのか、まるで分からなかった。


「“ルブル”が創り出したものが、闇市で売られている。私は気の合うお友達が欲しい。ねえ、貴方のお名前、何て言うの? 貴方、見込みありそうだから。もしよかったら、私達の仲間に入らない?」

 そう。

 悪魔の甘言に魅入られてしまったのだった。

 その日から、セルジュの人生は全て変わってしまった。


 こんな者達が、この世界に存在しているとはまるで思わなかった。

 けれども、今の自分を安心させているのは、メアリーなのだ。

 何処までも、堕ちていこうと思った。



 鏡の間。


 それはルブルという名前の“魔女”の城の中にある、セルジュのお気に入りの場所だ。というよりも、この部屋は、魔女から彼に与えられた特別な場所なのだと言ってもいい。

 彼は自らの容姿を舐め回すように見ていた。


 四方に、鏡が張られている。

 かつて、好きだった女、ダリアの姿が鏡には映っていた。

 セルジュは、彼女の肉体を乗っ取って、メアリーの仲間として、“この城”の中に住んでいるのだ。


“魔女”の作り出した道具が、手術を行ったのだ。

 頭蓋を切開して、脳を交換する手術だった。

 セルジュの強大なまでの嫉妬が、メアリーという魔女の召使の食指を動かして、セルジュは、片思いの相手であるダリアの肉体を手にしたのだった。


 今は、とにかく、自分の肉体が好きで堪らない。

 恋焦がれて独占したかった女の身体だ。大事に扱わねばならない。

 そのうち、ルブルに頼んで、自己再生能力を持つ肉体にしようと考えている。ただ生活しているだけでも、小さな怪我などは引き起こしてしまう。


 部屋の中央には、大きなスクリーンのTVが置かれている。

 彼は映画を見るのが、とても大好きだった。

 彼はくちゃりくちゃりと、大きな皿に盛ったチェリーとラズベリーの束を口にしながら、スクリーンに魅入っていた。


 彼はどうしようもない程に、純愛の劇が大好きだった。

 とてつもないハッピー・エンドに終わる恋愛の話が好きだった。

 不幸な結末なんていらない。

 今が幸福だと信じたいからだ。

 イゾルダはソファーに寝転がりながら、いつも何かしかの本を読んでいた。

 彼は、右目を髪の毛で隠した男だった。肉体は筋骨逞しかった。


 そして、とても寡黙な男だった。

 いつも、真っ黒なマントを纏っている。

 そして、よく花瓶に花を入れていた。何の種類の花なのかは、セルジュには分からない。イゾルダいわく、自分で品種改良した花らしかった。

 花は美しい薄桃色(うすももいろ)をしているが、何処か歪で不気味だった。


「なあ、イゾルダ。いつになったら、俺達は侵略戦争を起こすんだ?」

「知らん。メアリーに聞けよ。“何よりも邪悪な精神”を集め、“何よりも世界を憎悪の渦で満たしていく”らしいが、あいつ、本当はあんまりやる気が無いんじゃないのか? ルブルといつも、イチャつきやがって。何なんだろうな、あいつらは」

 セルジュはそんな風に、イゾルダに軽口を叩く。


 二人共、何だかんだで、今の生活に満足していた。

 セルジュはメアリー達のお陰で、自分の望みが叶った。だから、彼女に対する不快感はこれといって無い。

 イゾルダの方も、自分の居場所が見つかって安心しているのだと言った。彼は、いい加減に一人で多くの“能力者達”を返り討ちにするのには疲れ切っていたのだと言う。

 どうやら、特殊な力を有している者達は、この城の外に、何名もいるらしい。

 興味はそそられるのだが、どうにも、怖いなあ、と思う二つの感情が、セルジュの中で、錯綜していた。


 結局の処、ルブルは人体実験に熱中する余り、人間の征服に関しては深い関心は無く、メアリーの方も、いい加減な指揮系統ばかり取っていた。


 ただ、みんな自分達は異質で異形な精神の持ち主である、という事を共有したいだけだった。

 それに、人間征服を行う為のリスクはそれなりに高かった。

 何処に敵対する強力な能力者が隠れているのか分からない。

 きっとみんなが、此処にいるのは、もっと単純な理由だ。


 みな、居心地の良い空間に満足していた。

 純粋に楽しい事をやりたい。

 そんな想いだけで、侵略を始めている。人々を踏み(にじ)る事を考えている。



挿絵(By みてみん)


セルジュ



黒死病の天使・登場人物紹介一覧。↓


https://ncode.syosetu.com/n0733es/1/

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