泣き骸
そう…。
これは、儚く、泣き虫な、幼い少年の物語。
少年の1日は、いつも同じ事の繰り返し。
病弱で寝たきりの母親を支えるために、彼は毎日、村の農作業を手伝い、そのお金で生計をたてていた。
もちろん、毎日大変な思いをした。
優しい母親の笑顔と温もりが、少年にはなによりも大切だった。 世界でたった一人の大切な存在。
母親もまた、一生懸命、自分の為に頑張っている息子の姿に何度も涙し、そして何度も抱きしめた。
『苦労ばかりかけて、ゴメンね。』
母親の口癖だった。
父親は居ない。
少年が産まれて間もなく、母親と少年を残し、亜人種との争いに駆り出されて行ったのだ。
それ以来、父親の消息は不明だ。
この世界は、亜人種。 つまり《人間種》の他に《ドワーフ》《獣人族》《海人族》などの種族が生活している。
全ての種族は皆仲良く…そんな、素敵な話は無い。どの種族も、互いの領地を奪い合う為に毎日、争うことをやめない。
今日も何処かで、沢山の命が奪われ、何処かの国は優雅に勝利を祝っている。
少年は今日も村の農作業をしながら願う。
『どうか、こんな争いが終わりますように。』
しかし、そんな少年の願いとは裏腹に、争いの火種はどんどんと拡大していくのだった。
ある日、少年はいつも通りに仕事に出かけた。
いつもの時間、いつもの場所へ。
しかし、いつもの場所に他の村人の姿は無く、辺りを探しても姿が見えない。
少年は気付く。
遠くから聞こえる、村の人々の悲鳴が。
亜人種が、この村にまで攻めて来ていたのだ。こんな、辺境な山奥の村に。
既に、人間種の全ての人々は気付いていた。
我々、人間種に…【勝ち目など無い戦いだった】と。
村のあちこちから、火の手が上がっていく。それをただ、呆然と眺める少年。
そして、少年の脳裏には微かな絶望が過った。
家に一人、寝たきりで居る、少年のかけがえのない、大切な母親の存在に。
『お母様!!』
少年は走った。
何度も足がもつれ、転びながらも必死で。
何度も転んだからだろう、足の怪我からは血が出ていた。
少年の瞳から、涙がこぼれ落ちる。
しかし、その涙は足の痛みからではない。
たった一人。この世に自分を産んでくれた、優しく温かな母親の身を案じて…。
…………………
…………………
…………………
…………………
少年は、我が家の前で、ただ呆然と立ち尽くしていた。
涙はもう既に枯れている。
開け放たれていた扉の向こう。
母親がいつも寝ていた場所。
その場所には……
……無残な姿の母親の亡骸が転がっていた。
少年は叫んだ。声が枯れるまで。
そして全てを憎んだ。何度も地面を殴りながら。
その手は、もうボロボロになっていることにも気付かずに。
村の方から数人の足音が聞こえる。
しかし、少年の耳には、そんな音すら聞こえない。
そして、その足音が目の前で止まる。
泣き崩れる少年の、命の灯火を断ち切ろうとする音。
少年はふと顔を上げる。その顔は、涙や自分の拳の血で汚れていた。
そして、泣き虫な少年からは、想像もつかない様な恐ろしい笑顔でこう言った。
————全て壊してやる。
初の、短編小説を書かせて頂きました。
ほとんど思いつきで書いたので、内容はごちゃごちゃしてるかと思いますが、もし良ければ読んで頂けると嬉しいです!
中途半端で終わっていますが、その後の少年の未来がどうなったかは、見て頂いた皆様の想像にお任せ致します!




