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対峙

「マスター!」

受付嬢のニーナが小走りでジークに駆け寄ってくる。

「どうした?」

ギルドマスターの部屋で、資料を読んでいたジークは顔を上げた。

「かの子ちゃんが魔力切れで倒れました。」

魔力切れ?あいつ初歩でどれだけ力使ったんだ。

ジークは少し呆れながらも、今行く、と伝え立ち上がった。



私が失神して何時間か経った後、目が覚めたのはもう夕方に近かった。

救護室のふかふかのベッドで、どうも気持ちよく寝ていたらしい。

起きると、隣にはジークが座って、私を呆れたような目で見ていた。

「お前、魔力切れで倒れるなんて、子供でも限度が分かるぞ。」

「す、すいません…。」

だって楽しかったんだもの、というと余計に怒られそうで言わない。

「かの子。」

不意にジークが真剣な表情をするので、どきっとした。

「お前…いびきかいていたぞ。」

……ジーク。それは聞きたくなかった。

お前だけだ、空気読めないの。

リカさんもニーナさんもめちゃくちゃ読めるのに!

私が変な表情になっていたのが面白かったのか、ジークは笑いをこらえている。

でも途中から噴き出して大笑いし始めた。

こいつ…。

許さん!!!

私がむきぃとなってジークに襲いかかろうとすると、カーテンが開かれた。

「お姉ちゃん…?」

キースくんが立っていた。

私は、パンチの体勢を高速で直して、笑顔でなあに?と答えた。

ジークはまだ爆笑している。

後で覚えとけよ、ジーク。

「あの、あのね…。」

キースくんがもじもじしながら私に何かを差し出した。

小さな黄色い花だった。

「お姉ちゃん!元気になってね!」

私がそれを受け取ると、キースくんは私に手を振りながら走り出した。

…キースくんの好意に久々に胸キュンした。

これが本物の天使というものか。

私も笑顔で手を振りながら、一方でジークに腹パンを食らわしたのだった。




「お前、パンチ力はあるな。」

ジークが今だ少し笑いを含んだ声で私に話しかける。

ギルドからの帰り道。

ジークはマントを脱ぎ、普段の恰好をしている。

私と一緒にいることで闇帝とばれないか?と思うけど、学校の人たちはみんな貴族が多いから外には出ないみたいで会わないそう。

私は怒っている。

花も恥じらう乙女のいびきをジークはずっと聞いていたらしい。

ちょっとは気を使える男になってほしいものだ。

また笑いだすジークに私がもう一度パンチを食らわそうとした時、後ろから聞きなれた声がした。

「姉さん…?」

この声は。

振り向くとやっぱり。

玲央くんだった。

玲央くん、昨日の晩までは覚えていたけど、君のことをすっかり忘れていた姉をどうか許して。

魔法を使うことに浮かれてました。

「れ、玲央くん…。」

とりあえず、やあ、と手を上げる。

玲央くんはなんだか微妙な顔をしていた。

そりゃそうだ。

姉が免疫のない男と一緒にいるのだもの。

不思議にも思うよね。

「姉さん、元気そうで良かった。」

それでも、私のことを心配してくれる玲央くんはやっぱりイケメンだ。

ふと、ジークを見ると、剣呑な目つきで玲央くんを見ている。

お、どうしたどうした?

「勇者様がどうしてこんな町中に?」

ジークが呟くように、玲央くんに言い放った。

すると、玲央くんも目つきが険しくなる。

「お前…あいつか。」

二人は私を置いて、にらみ合う。

え?どうしたらいいの?

私は置いてけぼりをくらって、彼らに接点があったか考える。

ないない。

私は姉として、そしてジークの弟子(?)として彼らの戦いを止めなければ…。

私はすばやく弟にチョップし、ジークにはほっぺをビンタする。

私の攻撃に彼らの視線がこっちに向かう。

うわあ。めちゃくちゃにらまれている。

「なんで二人につながりがあるのか分からないけど、イケメン同士で争うのはやめよ?女子の皆さんの注目の的になるよ!!」

私の言った通り、イケメン二大巨頭がにらみ合っていると、女性陣の好奇の目がきらきらしている。

うんうん。分かるよ。

私も見つめる側に行きたい。

二人は私の言葉にはっとしたように、互いに目をそらした。

「姉さん、できるだけこの男と仲良くしないで。」

玲央くんはそれだけ言って、同世代の女の子たちの元に戻っていった。

ほほう。

もうハーレムができあがりつつあるな。

というか、え?

ジークと仲良くしないで、って。

私は対するジークを見ると、若干不機嫌そうに行くぞとだけ言って先に歩き出した。

え?

どういうことだろう?

二人に一体何があったのかな?

私はジークを追いかけつつ、玲央くんの言葉の意味が分からずにいた。




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