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気がつけば、そこには奴がいる!

作者: おりん
掲載日:2026/09/30

気がつけば、そこには奴がいる!―元野良猫はちお―



「じゃあね、みきちゃん。明日ね」


「じゃあ、まゆちゃん。明日ね」


「ばいばい♪」


いつものどおり3つ目の信号で、みきは真っすぐ進み、まゆは信号を渡る。


みきにとって今日の学校は嬉しいことがたくさんあった。2限目の算数は、先生に当てられてボードで計算することになったけれども、なんとか無事に解くことができた。3限目の音楽は、歌のテストで、ものすごく緊張した。だけど勇気を出して自分なりに精一杯歌ったら、先生に「いい声しています」と褒められた。皆からも大きな拍手をもらった。給食には大好きなフルーツポンチが出た。ラッキー♪

それで終わらないで、5限目の体育のドッヂボールには、憧れの杉下くんからパスをもらった!ドキドキした。さらに放課後の掃除の時間に、モップを持った杉下くんに「歌、いい声だったよ」と言われた。超ハッピー!最高だよ!



◇◇◇



はやくお母さんに言いたかった。褒めてもらおう。だんだん歩くスピードが速くなって、小走りなってしまいには全力疾走に近くなってしまった。さすがに歩道橋を上ったところで息が切れてしまった。


「あーしんどい。歩こう」


階段を下りたら、膝に手をついて息を整えた。顔を上げようとしたところで、地面になにか紙が落ちていた。


「変な紙。あんまり見かけない大きさね」


とりあえず拾ってみた。よく見てみると・・・。


「あ・・・千円札だ」


千円は小学3年生にとっては大金だ。みきの一月のお小遣いと同じだ。


「えーーーーすごーい!」


思わず辺りを見回してしまった。


「どうしよう。あった所に置いとく?持って帰ってお母さんに渡す?それとも、交番に届ける?でも、どこにあるのか分かんないし・・・」


落とし主がいないかと、もう一度キョロキョロ見回してみるけど、それらしい人はだれもいなかった。


やっぱり、お母さんに渡そう。


落とさないように、ランドセルに千円札は入れておいた。心臓がドキドキして裏通りを歩いた。


誰かに取られないか心配になった。家までは、まだ歩いて10分くらいかかる。


大丈夫かな。取られそうになったら大声を出せばいいんだっけ?そんなのできるかな。そうなったら歌のテストより緊張するよ。


みかは大パニック。


千円だ。千円よ。大金よ。



◇◇◇



「にゃん」猫の声がした。


右側の家のブロック塀の上に猫がいた。


この子か。


「にゃん」


わたしを見てる。


「なによ。あんたなんかにあげないわよ!」


その猫は、ぴょんとブロック塀から飛び下りた。


もう一度「にゃん」と鳴いて、顔を左の道の方に3回振った。そして、右手を挙げてクイッ、クイッとその方向を指さしたように見えた。


「なに?」



◇◇◇



その先には婦警がいた。彼女はおばあちゃんに道を教えているようで、右腕を上げて説明しているようだった。


間違いないよ。あの格好は間違いないよね。


そうだ、あの婦警さんに渡せばいいんだ。


「猫ちゃん。ありがと。いない・・」


「あの・・・・・」


「はい。何年生かな?」


「3年です」


「どうしたの?真っ赤な顔をして」


「あの・・・・・千円札を拾いました」


「そうなの?それを私に知らせに来たの?」


「はい」


「ありがとう。そうしたら、交番に来てくれるかな。少しお話を聞かせてくれる?すぐ終わるから」



◇◇◇



「はい。ありがとう。これでお終いです。おうちに誰かいるかな?みきちゃん、とってもいいことしたから、お家の人に教えてあげたいの。いまお母さんはお家にいる?なにか電話番号とかわかるもの持ってないかな?」


「ここにあります」


ランドセル左側の黄色いキーホルダーにお母さんの携帯番号が書いてあるシールが貼ってあった。


「はい。ありがとう。お母さんに連絡しますね」



◇◇◇



帰り道、お母さんから


「みき、いいことしたわね。お母さんさんは本当にうれしいわよ。お父さんにも教えてあげて、いっぱい褒めてもらおうね」


と、笑顔のおかあさんから言われた。それがとってもうれしかった。


「うん」



◇◇◇



帰宅後、お母さんのスマホが鳴った。


「みき。あの千円札の落し主が見つかったそうよ」


「ホント!」


「あんたと同じ3年生だって。あの婦警さんからよ」


「それでね。これから家にお母さんと一緒にお礼に来たいって。どうする?」


「そんなのいいよ。べつに・・・」


「でも、こんなこと滅多にないから、せっかくだから来てもらいましょうね」


「う・・・・・ん」



◇◇◇



玄関のドアホンが鳴った。


どんな子かな。緊張する・・・・・。なんて言えばいいんだろう。「ありがとう」じゃないし「どういたしまして」じゃあ偉そうな感じがするし「これからは気をつけてね」お姉さん?


玄関からお母さんの声がする。


「はい。まぁ、わざわざすみません。ありがとうございます」


向こうのお母さんの声がする。


「いいえ、とんでもありませんわ。お礼を言うのはこちらですから」


2人とも声が大きい。


「もうこの子ったらあんなに学校にお金を持っていったらダメと言っていたのに、それを聞かずに持って行っちゃったから、こんなことになるんですよ。歩道橋のあたりで落としてしまったらしいんです。本当に本当にありがとうございました。これはほんの気持ちですが、皆さんでお召し上がりください」


「いいえ。このようなものいただくなんて、こちらが申し訳なくて」


これ、いつまで続くんだろう・・・・・。


「いいえ。どうぞお収めくださいませ。でないと気持ちが収まりませんので」


「そうですか。では遠慮なく。ありがとうございます」



◇◇◇



「ほら、あんたも前に出て来てご挨拶なさい」


向こうのお母さんが言っている


「ほら、あんたも奥に隠れていないで、玄関に来なさい」


今度は、わたしがお母さんから呼ばれた言われた。


「はい」


「はい・・・」


「あれ、みき!」


「え、杉下くん!」



◇◇◇



「にゃーーーーん♪にゃん(英美ちゃーーん♪ただいまー)」


「はちお、おかえりっ」


「にゃん、にゃん」


「てるちゃんは、縁側でひなたぼっこしてるわよ」


「にゃん、にゃん」



了





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