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第7話(最終話)
ベンチの下に潜む三毛猫があおあおと鳴いた、あまり聴いたことのない声。ちくわが恐る恐る近づくが、パーソナルスペースを保つための警戒音と思われた。決して人間には発しない鳴き方、猫が生きていくための狡猾さ。
背骨に沿って流れていく体液の冷たさを、一秒の経過とともにぽとぽとと感じる。
ちくわはそっと後ろにつく。ベンチの上には香箱の黒猫もいて、その様子を静かに見守っていた。じわじわと距離は縮まってゆく。狩りを知らないはずのちくわ。頭を低く下げて慎重に、音をたてずに。ぴりぴりとした緊張感。
百戦錬磨の猫には、ぬるま湯に浸かって生きている飼い犬の相手なんて暇つぶしにすぎない。ひと睨みし威嚇すると、ちくわはぴょんと飛び上がり、尻尾をお尻にぴったりと貼りつけて、私に身を寄せた。
「怖いなあお師匠さんたち。怒らんでもいいのになあ、ちくわ。また機嫌のいいときに遊んでもらおな」
ちくわは濡れた透明な瞳で私を真っ直ぐに見る、『なにが? ちくわはぜんぜん平気ですけど』私はふふと笑ってから「せやな、猫なんか怖ないな、ぜんぜん怖ないな。だって甲斐犬やもんな、ちくわは」
ちくわも多少は、嘘をつくのかもね。




