第4話
それからの数日、何度も本部に呼び出されることになった。
私は見たことを偽りなく話した。同じことを話した。本部の人はその都度、私の言葉の、あるいは内臓の裏側までも覗こうと目をぎらつかせる。告げ口のようで罪悪感に苛まれているというのに、求めている答えに辿り着くまでは手を緩めないつもりでいる。
仕事にも支障をきたしはじめたので、直属の営業課長に訴えてみた、課長は気の毒にと言って眉毛をハの字にして喫茶店に連れていってくれた。何でも好きなものを食べるといいよと、いつもはケチな課長が大盤振る舞いの様相。遠慮なくみつ豆を頼んだ。ここのみつ豆は寒天が非常に美味しい、こだわっているだけあって値段もそこそこ。それでも課長はにこにこしている。
「そやろ、紙袋な。持ってたやろ」
顔を上げると、課長が気の毒そうな顔をいっそう気の毒そうにして、私を見つめていた。スプーンを止めて、その顔に笑いそうになりながら「紙袋?」と呟くと、持ってたやろ? とまた課長が言って、舞台の上の藤山直美の演技みたいにふざけた感じで、さらに気の毒そうな顔をした。
その時私は、紙袋よりも課長の顔が気になっていた、頭の片隅で紙袋ってなんやろうと考えながら吹き出しそうになるのを必死に堪える。
「やっぱ、持ってたんやな」
課長は最後にそう言って、また私を見て安心した風に巧妙に笑った。
その後、取り調べはさらに激化。紙袋について何度も訊ねられる羽目に。途中で課長のあの胡散臭い小芝居を思い出して笑っている場合ではなかったことを後悔したが、その内、正しいことが何なのか、自分の持っている記憶さえも疑いはじめた。
脳がじんじんと痺れて、私の正義が暗闇の中でぽっかり浮かぶ。うんと手を伸ばす。ようやく掴んだものは、絶対的な解答。
確信。そう、確信しかなかった。




