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同じ画面

同じ画面(エレベータ編)

作者: 活呑
掲載日:2026/02/05

僕は、20Fのボタンを押した。


エレベーターには先客がいて、10Fのランプが灯っている。


落ち着いた香水の香りが、ほんのりと漂っていた。


扉が閉まる。


籠が動き始める。

室内は無言だった。見知らぬ人同士なら、エレベーターで会話はしない。

いつからか、そうなった。この国のマナーだ。


駆動音が下がり、6Fに止まった。


扉が開く。


掃除用具の入った籠を押したおばさんが立っていた。

「あらあら、ごめんなさいね。あ、7Fお願いします」


おばさんは、すいっと乗り込んでくる。


扉が閉まる。


エレベーターは、また上り始めた。


「……ごめんなさいね。お邪魔だったかしら」


僕は、初めて室内の女性に目を向けた。

彼女の方も、こちらを見ていた。


室温が、少しだけ上がった気がした。


二人とも、慌てて視線を逸らす。


7Fに着いた。


「がんばれ」

おばさんは僕の背中をぽんと叩いて、エレベーターを降りていった。


僕は、閉のボタンを押す。

振り返るわけにはいかなかった。

顔に血が昇っているのが、自分でもわかる。


背後で、くすりと笑い声がした。


10F。


彼女が降り、振り返る。

「西原です。あなたは?」


僕は、咄嗟に開のボタンを押していた。

「佐藤です。あの……」


彼女は付箋に何かを書き、僕に渡す。


「では、また明日。おやすみなさい」


彼女はくるりと背を向け、歩き出した。


エレベーターのブザーが鳴り、僕はボタンから手を離した。



僕の携帯に、彼女の電話番号が増えた。


かける勇気は、まだない。


画面には、20Fのランプだけが灯っていた。



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