表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神亡き世界の破壊論 ~全盛期の力を失った男が、再び世界を蹂躙するまで~  作者: KEN.AAA
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/10

第6話『略奪という名の正義と、朽ちた鍵』

「傲慢な破壊神」と「苦労人の聖女」が、腐った世界をぶっ壊して救う話です。

面白いと思ったらブックマーク、評価をいただけると励みになります!

王都を出てから三日。


 西へ向かう街道を、奇妙な二人連れが歩いていた。


「はぁ……はぁ……、ま、マーク様……少し、休憩しませんか……?」


 聖女リシアは、膝に手をついて荒い息を吐いていた。


 聖職者用のローブは裾が汚れ、整っていた銀髪も砂埃まみれになっている。


 聖女とはいえ、彼女は深窓の令嬢のような育ちだ。


 舗装されていない荒野の道を、三日三晩歩き通しというのは過酷すぎる。


「あぁ? もうバテたのか?」


 先を行くマークが、心底不思議そうに振り返った。


 彼は悠々と歩いているだけに見えるが、その歩幅は大きく、リシアが小走りでやっと追いつける速度だ。


「……あのですね。一般人は、魔力で身体強化して歩いたりしないんです」


「軟弱だな。もう少し頑丈にできてろ」


「私はモノじゃありません! 人間です!」


 リシアは涙目で抗議した。


 この男、伝説の破壊神のくせに、旅の常識がなさすぎる上に、自分を完全に「モノ」扱いしてくる。


 そもそも、目的地が遠い。


「あとどのくらいなんですか、その『起動の指輪』がある場所は」


「もうすぐだ。この先にある宿場町の手前、古い(ほこら)に隠してある」


 マークは懐から地図を取り出し、指で弾いた。


「いいか、リシア。これから向かう砂漠の遺跡には、俺が配置した防衛システム――『殺戮ゴーレム』どもがウジャウジャいる。

 奴らは融通が利かねぇ。指輪なしで入れば、俺だろうがテメェだろうがミンチにされる」


「ミ、ミンチ……!?」


「だが、その『起動の指輪』があれば、奴らは俺を主人と認識して平伏す。無駄な戦闘を避けるための必須アイテムだ」


 なるほど、とリシアは頷いた。


 魔力が回復しきっていない今のマークにとって、無用な消耗は避けたいところだ。


「なら、急がないと……きゃっ!」


 リシアが歩き出そうとした瞬間、足がもつれて転びかけた。

 限界だ。足のマメが潰れ、もう一歩も歩けそうにない。


「……チッ。面倒くせぇな」


 マークが舌打ちをした、その時だった。


 背後から、ガラガラという車輪の音と、馬の嘶きが聞こえてきた。


「おい、そこを退け! 邪魔だ!」


 振り返ると、豪奢な装飾が施された馬車が、砂煙を上げて迫ってきていた。


 御者台にはガラの悪い男たち。


 そして窓からは、見るからに裕福そうな太った商人が顔を出し、葉巻をふかしながらこちらを睨んでいる。


「チッ、薄汚い巡礼者か。貧乏人が道の真ん中を歩くんじゃねぇ! 轢き殺されてぇのか!」


 商人が怒鳴ると、御者たちがゲラゲラと下卑た笑い声を上げた。


 馬車の荷台には、鎖に繋がれた亜人(デミ・ヒューマン)たちが詰め込まれているのが見える。奴隷商だ。


「ひっ……! す、すみません!」


 リシアは慌てて道脇へ避けようとした。


 だが、マークは動かない。


 むしろ、道の真ん中に仁王立ちになり、興味深そうに馬車を見つめていた。


「……へぇ。 悪くねぇ造りをしてやがる」


「ちょっと、マーク様!? 轢かれますよ!」


「おい、デブ」


 マークは商人を指差し、ニヤリと笑った。


「その馬車、俺によこせ」


 一瞬、場が静まり返った。


 次の瞬間、商人の顔が真っ赤に染まる。


「な、なんだと貴様ァ!? 誰に向かって口を利いている!

 私は王都でも有数の豪商、バルバロス様だぞ! 衛兵! やれ! この無礼者を八つ裂きにしろ!」


 商人の命令で、護衛の傭兵たちが剣を抜いて馬車から飛び降りてきた。


 五、六人の屈強な男たち。リシアが悲鳴を上げる。


「ま、マーク様! 逃げましょう!」


「逃げる? なんでだ?」


 マークは心底不思議そうに首を傾げ、一番最初に斬りかかってきた傭兵の剣を――素手で掴んだ。


「――ッ!?」


「遅ぇ」


 バキッ!


 剣ごと傭兵の腕をへし折り、そのまま襟首を掴んで馬車の方へと投げ飛ばす。


 人間が飛んでくるとは思わなかった馬たちがパニックを起こし、馬車が大きく傾いた。


「ひぃっ!?」


「な、なんだコイツは!?」


 残りの傭兵たちが怯むが、マークは止まらない。


 あくびをするような軽い動作で、次々と男たちを殴り飛ばし、蹴り飛ばし、わずか数秒で全員を砂の上に這いつくばらせてしまった。


「ば、バケモノ……!」


「おい、降りろ」


 マークが商人の襟首を掴み、窓から引きずり出す。


 商人は地面に転がり、高そうな服が泥だらけになった。


「こ、金か!? 金ならやる! だから命だけは……!」


「いらねぇよ、そんな端金(はしたがね)。俺が欲しいのは足だ」


 マークはリシアの方を向き、顎で馬車をしゃくった。


「乗れ、リシア。これなら砂漠まで楽に行ける」


「ええっ……!?」


 リシアは、気絶している傭兵たちと、震え上がっている商人、そして強奪された馬車を交互に見た。


「マ、マーク様……こ……これって、良いんですかぁ~?」


 リシアは半泣きだった。


 聖女として、盗みは罪だ。


 しかも公衆の面前での強盗である。


「あぁ? 何が良いんだ?」


「だ、だって、泥棒じゃないですか!」


「泥棒?」


 マークは鼻で笑った。


 そして、荷台に積まれていた鎖を引きちぎり、捕らえられていた亜人たちを解放しながら言った。


「見ろ、こいつらを。人をモノ扱いして肥え太った豚だぞ?

 世界がこんなに荒廃してるってのに、自分だけ贅沢三昧とはな。

 ――こんな奴らに使われるにゃ、この馬車は勿体ねぇ!」


「え……」


「俺が有効活用してやるのが、この馬車にとっても、世界にとっても一番の『論理的解決』だ。

 テメェの足を休ませるためだ、感謝して乗れ」


 マークの言葉に、解放された亜人たちが涙を流して感謝し、一目散に逃げていく。


 商人は腰を抜かして失禁していた。


 確かに、結果だけ見れば「悪党を成敗し、奴隷を解放した」ことになる……のだろうか?


「うぅ……論理が滅茶苦茶です……」


 リシアはガックリと項垂れながらも、疲労には勝てず、恐る恐る馬車のふかふかなシートに座った。


 罪悪感はある。あるが……正直、めちゃくちゃ快適だった。

 

 快適な馬車の旅で、数時間の道のりはあっという間だった。


 宿場町の手前。


 街道から少し外れた荒れ地に、ぽつんと小さな石造りの祠があった。


「ここだ」


 マークは馬車を止め、祠の前で降りた。


 6000年の風雪に耐えたその石組みは、今にも崩れそうだ。


「ここに、『起動の指輪』が?」


「あぁ。俺が封印される直前、一番信頼できる結界魔法をかけて埋めた」


 マークは自信満々に祠の中に入り、祭壇の下を蹴り飛ばした。


 ガコン、と音がして隠し扉が開き、中から古びた金属製の小箱が出てくる。


「あったぞ。俺の魔力にしか反応しない特注品だ」


「す、すごいですマーク様! これがあれば、次の砂漠の遺跡も安全なんですね!」


「おうよ。あの殺人ゴーレムどもをペットみたいに侍らせてやるぜ」 


 マークはニヤリと笑い、小箱の留め金を外した。


 パカッ。


 蓋が開く。


「さぁ、6000年ぶりのご対面だ――」


 マークの言葉が止まった。


 リシアもまた、箱の中を覗き込み、絶句した。


 そこにあったのは、指輪ではなかった。


 指輪の形をしていたであろう、赤茶色の「粉」だった。


「…………は?」


 マークの間抜けな声が響く。


 乾燥と経年劣化、そして6000年という絶望的な時間の経過が、金属さえも(むしば)み、土へと還していたのだ。


 風が吹き、箱の中の粉がサラサラと舞い上がって消えていく。


「……あ」


 リシアが小さな声を漏らす。


 マークは空になった箱を持ったまま、微動だにしない。


「……嘘、ですよね?」


「…………」


 沈黙。


 しかし、その静寂を破るように、リシアの背後から「ズズズ……」という、重たい岩石が擦れるような音が響いた。


 同時に、巨大な影がリシアをすっぽりと覆い隠す。


「え……?」


 リシアが恐る恐る振り返る。


 そこには、祠の岩壁と同化していたはずの岩塊が、人の形を成して立ち上がっていた。


 身長3メートル。全身が堅牢な岩でできた、自動防衛人形。

 その単眼(モノアイ)が、不気味な赤い光を放ち、侵入者であるリシアを見下ろしている。


「あ、あ、あの……マーク様? 後ろに……」


「あぁ、そういえば忘れてた」


 マークは箱の塵をパンパンと払いながら、さも日常会話のように言った。


「ここにも、泥棒除けのゴーレムが一体配置済みだ」


 ギギギ、とゴーレムが拳を振り上げる。


 指輪を持たぬ者は、すべて排除対象だと言わんばかりに。


「いやぁぁぁぁぁッ!!」


 リシアの絶叫が、夕暮れの荒野に虚しく吸い込まれていった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


面白い、続きが気になる!と思ったら、下の「★★★★★」から評価をお願いします!


出来る限り※毎日22時には更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ