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ある旅の日の記憶
賢治が先日、出かけた旅で訪れた地域、その地の一時の捉えて描いた作品には、一匹の動物が描かれている。描かれたその場所とは、決して著名な名勝地、観光地ではなく、決して歴史的意味付けのある場所でもないのでありますが、とても印象的な一瞬を、賢治がこの目に、我が目に、焼き付けておきたかった場所だったのでありました。
里を横切る道にたたずんでいたのは、野生化された犬なのか? それとも狼か? 狐か? 賢治はよくわからないままにその生き物を眺めていた。人と離れて相当な時間が経っていると思われ、野生化されている。旅人との邂逅に、たぶん面食らっていたのであろう。ただただ、視線を交わして挨拶するだけの出会いであった。取り残された里の風景の現状を目の当たりにし、記憶の奥底に刻み付けていたのでありました。
そもそも賢治の人生にとって、旅とは必須のアイテムであります。人生において旅がなければ人生そのものが成り立たないと云っても良いのです。旅が先か? あるいは人生が先か? といった議論は置いておくとして、僕自身にとっての旅の重要性、なかんずく、旅がもたらす精神の高揚感については、過去からの人生の贈り物だと云って良い。まさしく人生にとっての旅の重要性を再認識させるにはこれ以上ない気分なのです。




