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私の婚約者はピンク髪の男爵令嬢に奪われました。でも、私は大国の皇太子の婚約者になれました。めでたしめでたし…………………………そして私は全てを失った。

作者: 巫月雪風

 私、ミリア・トリスティア公爵令嬢の婚約者、アレク・シンクレアは小国、シンクレア王国の王太子だった。

 彼は成績がよろしくなく、私との仲もあまり良くなかった。


 そして、私と彼が貴族が学ぶ学園に通っていた時に、事件が起きた。


 彼は、ピンク髪の男爵令嬢レイナ・シュクルテルに恋をしたのだ。

 二人はいつも一緒に行動していた。


 そんな時、私に声を掛けて来たのが隣国である超大国、ガルデリア帝国の皇太子アルベルト・ガルデリア様だった。

 彼は私の悩みをよく聞いてくれた。


 そして、卒業パーティでの彼からの一方的な婚約破棄。

 だけど、そこで救いの手が現れる。


 アルベルト様だ。


 なんと、アルベルト様が私に求婚してきたのだ。

 私の答えはもちろんYES。


 こうして、私はガルデリア帝国の皇太子妃になった。


 その後のシンクレア王国の没落っぷりは酷い物だった。


 なにせ、現国王のたった一人の子供であるアレク・シンクレアが、王命である婚約を勝手に破棄をするという問題を起こしたのだ。

 それにより、彼が王太子にふさわしくないという意見が王国貴族から出てしまい、王太子は廃嫡。

 そして、次期王太子の座を狙い、親戚同士が争い合う内戦が勃発。


 我が帝国は、内戦に苦しむ民を救うため、内戦に介入。

 帝国は王国を併呑し、平和になりました。


 めでたしめでたし。






 王国併呑から一週間後。

 戦争終結パーティ


「私、アルベルト・ガルデリアとミリア・トリスティアの婚約を、今ここで破棄する!」


 私は耳を疑った。

 戦争終結から忙しくて会えなかったのに、久しぶりに会ったらいきなりの婚約破棄だからだ。


「そんな、なぜですか!理由を教えてください」

「理由か……理由は貴様が王国の人間だからだ。既に王国は無く、元王国貴族の貴様は平民同然。そんな人間を皇太子妃にするわけがなかろう」

「なっ……」


 確かに、それは正論かもしれない。

 でも、私は彼の為、ひいては帝国の為に尽くした。

 元王太子妃だった私は、帝国に様々な極秘情報を伝え、帝国の圧勝に可能な限り貢献したのだ。

 なのに……なのにこんな仕打ちを受けるなんて…………




「当たり前よね。そもそも、シンクレア王国の公爵令嬢風情が我が帝国の皇太子妃になろうだなんて、おこがましいにもほどがあるわ」

「まったくだ」


 困惑している私に、そんな周囲の声が聞こえて来た。

 帝国貴族達の声だ。



「平民はこの皇宮に入る事は許されない。この無礼は今までの功績で無罪とする。兵士達よ。この平民を今すぐ追い出せ!」

「かしこまりました!」


 何が起こっているか解らない私は、兵達にパーティ会場から連れだされたのだった。


 こうして皇城から追い出させた私は、ただフラフラと城下町を歩いていた。

 帝国に私の家族はいない。

 王国にいた私の家族は戦後処理で処刑される事が決まっているし、そもそも今更王国には帰れない。

 私が帝国の手助けをして王国を滅ぼした事など、調べるまでもなく明白だからだ。

 この事実は民ですら知っている。


 今の私に居場所はない。


 ひそひそ話も聞こえて来た。

 

「見て、裏切り王女よ」

「あー、あれが。自分の国を男の為に売った女」

「怖いわよね。男の為なら国がどうなってもいいって思っている女って」

「ほんと、ほんと。あんな女が皇太子妃だなんてこの国大丈夫?って思ってたけど、どうやら追い出されたみたいね」

「あら、当然じゃない。自分の国を大切に出来ない人間が、嫁ぎ先の国を大切に出来るわけないわ」


 耳が痛い。

 民の声は正しい。


 私は、町から走って逃げだそうとした。

 その時だ。


「見~つけた!ミリア様!」


 そんな楽しそうな声が聞こえて来た。

 その声には聞き覚えがあった。


「あなたは……」


 そこにあったのは、一台の馬車。

 そして、それに乗っているのはピンク髪の男爵令嬢、レイナ・シュクルテルだった。


「なんで、あなたがそこに……」

「まぁ、そんな事はどうでもいいからさ、乗って」

「え、でも」


 私が馬車に乗るのを躊躇すると……


「いいから乗れよ。それとも力ずくで乗せられたいか?」


 そう凄んできた。

 その圧倒的迫力に、私は逆らう事も出来ず、馬車に乗るしかなった。


 馬車が動き出す。

 乗っているのは、私と、対面にいるレイナ譲だけ。


「いや~。あなた、面白い様にハマってくれたわね」

「ハマった……それってどういう事?」

「あー、まだ気づいてないんだ」


 レイナ譲は笑った


「我が帝国はね、王国を乗っ取るつもりだったの。そのために利用したのがあなた。あなたを利用する為に、私は学園で王子様に近づいたの。王子様が私に惚れて婚約破棄を言い出すようにね。婚約破棄が起これば、王国に内戦を起こす事なんて、私達には簡単だもの」

「……つまり、あの内戦って」

「そう、帝国が裏で糸を引いてたわけ。もちろん、泥沼になるようにバランスを考えながら、ね」

「ひどい!あの内戦で、民が何人死んだと思ってるの!」


 そう言った私に対し、レイナ譲、いやこの女は楽しそうに笑って言った。


「そう言って民が~とか言って深く考えないあんたのような奴、使いやすくて助かったよ。だって、民の為って言えば平気で国を裏切るんだもの。王国の裏の情報、ありがとうございました~。おかげで楽に征服出来たって皆喜んでいたわよ~」

「くっ!」


 悔しくて、悲しくて。

 私は彼女を睨みつけた。


「あ~、そうそう。王国の王子様のアレクだけどさ、別に私の事好きじゃなかったよ。私が無理やり付きまとっただけ」

「嘘、嘘よ!だったら何で婚約破棄なんて」

「それはね、ほら、最初の計画では王子様が私に惚れて~、だったんだけど、うまくいかなかったから、帝国と王国が裏で交渉したわけ。あなたと婚約破棄したら、その後帝国の公爵令嬢と結婚させるってね」


 そう言う事か。

 自国の公爵令嬢と大国である帝国の公爵令嬢。

 どちらが政治的にいいかは一目瞭然。

 それに、帝国に恩を売れる。

 そういった考えで婚約破棄をしたわけだ。


「ま、当然新しい婚約者なんて嘘だけどね。騙される王国も本当に馬鹿」


 王国を手に入れたい帝国の陰謀とも気付かずに。

 そして、全て思惑通りに行ったわけだ。



 だけど、疑問が残る。


「あなたは?あなたはどうして帝国の企てに協力したの?」


 この女だって王国貴族だ。

 報酬が目当てで裏切ったのかとも思ったが、帝国が王国貴族との約束を守るとは思えない。

 企てを知っていたなら、この女はその事を理解しているはずだ。


「あ~、私は元々帝国の人間」

「え?」

「というか、帝国暗部の人間なんだよね。本当のレイナ・シュクルテルはとっくに私が始末したわ。学園に入学する直前に、ね。学園では寮暮らしだったから、彼女をよく知らない人ばかりだし、元々彼女の友人なんてほとんどいなかったから入れ替わりは簡単だったわ」


 そう、なんだ。

 最初から帝国の掌の上で踊らされていたんだ。

 そうして全てを失った私は、ただ泣く事しか出来なかった。


 それからしばらくして。

 気づくと馬車は、誰もいない荒れ地に来ていた。


「んじゃ、降りて」


 彼女の言葉に、もはや抵抗する気力も無くなっていた私は、従うしかなかった。

 その先に何が起こるかを理解しながら。


「で、最後に何か言う事ある?」


 そんな彼女の言葉に、私はこう返した。


「私が何を言ったところで、聞いてくれる人は誰もいません」


 私は全てを失った。


 誰も私を信じない。

 私の愛する人はもういない。


 誰に何を言えと?


「そう、じゃぁね」


 それが、私の聞いた最後の声だった。




♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 かくして、歴史ある王国は地図から消えた。

 王国民は全て帝国の奴隷とされ、過酷な生活を送らされることとなる。

 安価な労働力として、使い捨ての兵士として、安価な性奴隷として。


 生きながらにして地獄を味わう王国民の怒りは、裏切り者の売国奴、ミリア・トリスティアへと向けられた。


 歴史書には、ミリア・トリスティアは自ら皇太子妃の座を降りた後、王国民を専門とする奴隷商として財を築き、帝国の世界征服に貢献したと書かれている。













「帝王様も優しいわよね。王国を滅ぼしたお礼として、奴隷商としてぼろ儲けさせてくれるなんて」


 奴隷商、ミリア・トリスティアと呼ばれる女性は、一時期ピンク色に染めていた髪を撫でながら、そんな独り言をつぶやくのだった。

お楽しみいただけましたでしょうか?


馬鹿は主人公でした、と言う話です。

多くの作品で主人公の立場の人間が、実は利用されている展開を考えた際に、この作品が出来ました。


よろしければ、ご意見ご感想、レビュー以外にも、誤字脱字やおかしい箇所を指摘していただけると幸いです。

いいねや星での評価もお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
他の女に現を抜かす婚約者を内心見下しておきながら、自分も他の男と似たようなことしておいて、そして口説かれたらあっさり着いて行く令嬢にモヤモヤしてたのでこの展開は面白いと思います あと、最後の方に出てた…
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