旧校舎のうわさ
初めての投稿です。
多くの方に読んでもらえたら嬉しいです。
「ねぇ、知ってる?旧校舎の噂話」
これは、私の友達が近所のおじいさんから聞いたお話です。
そのおじいさんも私たちと同じこの高校に通ていたそうです。
おじいさんの時代はまだ旧校舎が使われていて、その当時はきれいな校舎だったようです。
ある日、こんなうわさ話が広がりました。
旧校舎には誰も知らない地下がある。
その地下には、工事作業中に亡くなった人たちが捨てられている。
そんな噂です。
ですが、物好きはいつの時代にもいるもので、その地下の扉を見つけてしまいました。
中に入ると、腐ったにおいが漂っています。
「きっと、何年も閉めたままだったからじゃね?」
そういって笑って片づけました。
懐中電灯を片手に中の探索を始めます。
すると一人の少年の足に何かが当たりました。
「おぅ!」
「いたいなぁ~」
「え、お前の足?」
一緒に来ていた子に問います。
その子は青ざめた顔で言いました。
「お、俺じゃない・・・」
二人は青ざめます。
「痛いと言っているだろう。最近の子供は礼儀を知らんなぁ。懲らしめてやろう」
二人は後ろも振り返らずに一目散に上の階への階段を上りました。
ですが、あまりに急いでいたからでしょうか。
階段を滑り落ちてしまい、そのままなくなってしまいました。
確認すると二人の足首には誰かに強く握られたかのような跡がくっきりと残っていたそうです。
それからというもの、階段で足を滑らす者、どこかで頭を強く打ち付ける者、上から何かが降ってくる者・・・。
様々な形で生徒が次々と死んでいったそうだ。
学校はそれを自殺、とはせず、工事不備による事故として片づけ、旧校舎の取り壊しが予定された。
だが、工事に携わる人たちが次々と原因不明の謎の死を告げる。
怖くなった当時の大人たちは、後者をそのままにして、付近の森を開拓して今の新校舎を作ったそうだ。
旧校舎の地下へ続く扉は今も開いたままになっている。
その扉から、様々な幽霊たちが飛び出し、旧校舎の中でさまよい続けている。
だから、もしも旧校舎に足を踏み入れるときは十分に気を付けなければならない。
あなたも、旧校舎をさまよい続けることになってしまうから。
ある日、友達の七海に誘われました。
「旧校舎に行ってみない?」
私は、旧校舎のうわさを聞いた直後だったため正直怖くて行きたくなかったのですが、七海の前で虚勢を張ってしまい、
「いいよ。怖くなっても助けないからねww」
などと言って約束してしまいました。
今週の金曜、その日が来るのをブルブルと震えながら迎えました。
「ねぇ、今日は13日の金曜日だね」
怖がっていると知られたら馬鹿にされると思い、そんな話をしながら旧校舎に足を踏み入れました。
その日は夏休みだったので外はものすごく暑かったのですが、一歩足を踏み入れると寒いと感じました。
私は怖くなり、隣の七海にしがみつこうとしました。
しかし、そこに彼女はいません。
「七海~、七海っ~‼ どこに行ったの~‼」
大きな声で叫びますが、音がどこまでもどこまでも反響して聞こえます。
まるで、奈落の底に落ちたかのような気分です。
とにかく一度出ようとしますが、ドアは先ほどまで開け放たれていたにも関わらず、私の目の前で音もたてずに閉じていきます。
動こうとしても、体が張り付いたかのように一歩も動けません。
扉が閉まり切った瞬間、力が抜けるようにその場に座り込んでしまいました。
どこからか歌が聞こえてきます
♪~旧校舎の床は水没しています。
皆さんは知っていますか?境界。
境界は此岸と彼岸・・・二つの岸辺をつなぐ海
そこは行く当てのない死者と、怪異と、だれからも忘れられたモノたちの世界・・・
あなたは戻れる?あなたは戻れる?~♪
そしてその歌に混ざってこんな囁き声も聞こえてきます。
~また誰か来たの。
人間ってのは懲りないな、俺たち怪異にちょっかいを出すからこうなるんだ
さぁどうする?さぁ、どうする?
泣いてわめく?うるさいな 一口で食べてあげる
戦意の喪失? そうか、じゃあ、この地で朽ちるといい
さぁ、どうする?
水を探そう。
清めの水
この校舎で唯一、水の出る水道・・・
さぁ、見つけられる?
俺たちを清めてくれる水
俺たちを彼岸へと導く水・・・
さぁ、動け!動け!
己の命をささげてでも我々を導く水を探せ!~
「み・・ず・・。みず。水を探せばいいのね」
「それで私の命は助かるの?」
誰も答えてはくれません。
歩き出す少女
その後ろにふっと現れる人影
彼は、彼女の後姿にこう囁きます。
~歩くしか道はないのでしょうか?
それならば歩き続けましょう。
命が尽きるまで
水を見つけるまで
私の身を、あなたの身を清めてくれる水を
私を癒す水を
水道を探す
特別な、大切な水道
きれいな水道 輝く水道
きっと きっと あなたは見つけられると信じて?~
「今、後ろから何か聞こえたような?」
私は怖いので気にせずに歩くことにした。
旧校舎は地上3階地下1階の計 4階建てだ。
私がいるのは、正面玄関から進んだ中央廊下だと思う。
旧校舎の間取りは念のため調べてきていた。
逃げ道を覚えるためだったはずなのに、逆のことをしているなんて皮肉だろうか。
私は、トイレの表示があるところ、教室の前、そして校舎の外を探したいが、外はおそらく出ることができないからこの二つのエリアでいいと思う。
1階から順番に3階まで回ったのだが、どこも水道の蛇口が切断されていたり、そもそも水道自体が取り壊されていたりと水が出せるような状態ですらなかった。
「はぁ、3階まですべてダメ。ということは旧校舎の地下、つまりこの現象のすべての始まりであるところに行かなくてはいけないのか」
私は、恐怖で縮こまってしまいたいのをどうにか収めながら、地下へと続く階段を探した。
すると、しばらくすると誰かが倒れているのが分かった。
「っ…七海っ」
それは七海だった。
何か紫色の靄のようなものが見える。
きっと、このせいで七海は倒れてしまったのだろう。
私は七海がまだ息があることを確認した。
そして、七海の手に握られている紙も。
「ん?紙?」
読んでみると、私宛へのものだと分かった。
内容はこうだ。
『真央へ
この手紙をあなたは見つけてくれたかな。
まさか、入って早々にはぐれるとは思いもしなかったよ
私が歌っていたの聞こえた?
私は、実は前に一度ここに入ったことがあるの
その時に私は、地下へと続く階段を見つけた
でも、水の出る場所へは永遠とたどり着けなかった
そう
私は今もこの中をさまよい続けている
学校へは私が分身して通い続けている
もしも卒業までに見つからなかったら、私はどうなってしまうのかわからない
だからお願い 真央
私を助けてほしいの
私が倒れているところから少し行くと階段がある
その階段の裏側に扉があって、そこを開けると地下へと続く扉があるわ
その先のことは言えないけれど、あなたならきっと大丈夫だから
時折聞こえる、歌や囁き声によく耳を澄ませて
きっと手助けしてくれる』
「私は、どうすれば…」
七海を助けるべきなのは、自分でもわかっているのだ。
だが、 そのための勇気がない。
自分もさまよい続けることになったらと思うと怖くて仕方がない。
「真央、助けて、怖いよ」
そんな声が聞こえた気がした。
そうだ七海はずっとこの暗闇の中にいるんだ。
私に助けを求めてきたんだ。
ここで助けなくてどうするんだ。
私は、階段の裏側にある扉を開けた
地下への扉を開けると今までよりも一段と気温が下がったような気がした。
中は真っ暗というわけではなくほんのりと明るく、わざわざスマホの明かりをつけるまでもないようだった。
だが、締め切られているはずの地下なのになぜこんなにも明るいのだろう。
私はそんな疑問を抱きつつも壁を伝いながらゆっくりと下へと降りて行った。
地下につくとまた扉があった。
そこはいかにも古そうな雰囲気が漂っており、木造の扉だった。
扉の下半分は水につかったのかボロボロになっている。
押しても引いても開かず、試行錯誤しているとまた歌が聞こえてくる。
♪~押してーもダメ
引いてーもダメ
人間さん、人間さん
どうやって扉を開けるのかしら
あぁ そうだ
今は新しい扉ができてるのよね
自動で開く扉
急に横に滑り出す扉
あんな風にあかないかしら~♪
「自動で開く扉?あっ‼自動ドア」
私はすがる思いで扉を横にスライドした。
「あ、開いた!」
私は中に入った。
今度は真っ暗で、自分の一歩先さえもわからない。
私はスマホを取り出してライトをつけた、そして。
「う、嘘。何なの、これ」
そこはまさに地獄だった。
私が今いる場所はおそらく学生ホールほどの広さだろう。
だが、広いと感じるような要素はみじんもなく、所狭しと死体があった。
その中には、私の通う学校の制服もある。
そして、この旧校舎がまだ学校として機能しているころのものとみられる制服もあった。
「まずは、ここを通ってどこからかでなきゃだよね」
私は扉を探し、その扉を目指して死体を踏まないように気を付けて歩いた。
なぜか、絶対に踏んではいけないのだと感じた。
扉にたどり着きホールの外についた。
見上げると天井は窓になっていて十分な明るさがあった。
私はスマホをしまい、ふと後ろを振り返った。
「キャーッ」
思わず悲鳴を上げる。
なぜなら、今出てきた扉の所に死体の顔が密集していたのだ。
「われらを踏まなかった。
われらを踏んでしまえば、同じようにここをさまよう運命だったのに。
この少女は他と違うぞ。
右に進んではならぬ、決して右にこの道を行く出ない。
左に曲がるのだ、左へと突き進め。
曲がれるところはすべて左だ。」
私はその通りに左に進もうとしたのだが、なぜか足は勝手に右へと進んでいく。
「え、なんで。なんでこっちに行くの。」
私はどうにかして左に行こうとした、その時だった。
左の道が崩れ始めたのだ。
もしも左の道に進んでいたとしたら、私は、岩につぶされて死んでいたのだろう。
「地下の住民のいうことは信じてはいけないのね」
私は、心に固く決めてまた前に進み始めた。
私は、しばらく角を右に回り続けた。
すると、そこには古びた扉が待っていた。
私は、少しためらいつつもその扉を開けた。
その時初めて暖かいと感じた。
私は、一歩足を踏み入れる。
その瞬間、肩が重くなった気がした。
後ろを振り返ると、
「きゃぁ~っ」
私の後ろには、死んだ人たちの遺体が連なっていたのだ。
「われらも一緒に外に出たい。われらの家族に会わせてくれ。お前だけ外に出るなど、絶対に許さぬぞ。
お前もわれらと一緒にこの地に沈むのだ。」
私は怖くなって、腰が抜けてしまう。
だが、自分に活を入れなおし、私は水道探しを再開した。
暫く歩き続けると、水道が10個ほどあった。
どれも、歌にあったようにずっと地下にあった割にはきれいで、蛇口をひねれば水が出そうだった。
「なぜだ、なぜっ入れぬのだっ~!!」
見ると、亡霊たちは水道のそばには近寄れぬみたいだった。
「どれをひねればいいの…?」
私は、10個の蛇口を眺めながらつぶやいた。
私はふと目をつむり、突き当たった一つをひねることにした。
「よし、これだ」
私は勢いに任せて蛇口をひねった。
(「そういえば、歌とか囁き声がしばらく聞こえてないな」)
と頭の片隅で思いながら。
私は、恐る恐る目を開く。
手には水がかかっていた。
「あっ、水だ。やった。水が出たわ!」
そう喜んでいると、急に水が赤く染まった。
そして、手に激痛を感じた。
血がにじむその両手に文字らしきものが書かれていた。
⁅ われらの代わりに外に出るお前の使命は、われらの思いを晴らすこと ⁆
⁅ お前は一生、われらの思いを心身に刻みながら生きるのだ ⁆
旧校舎のうわさを聞いて、旧校舎に入り込んだ、真央と七海。
七海はすでに幽霊だったんですね。
真央は水道を見つけて、水を出すことはできましたが水道のお告げとして、これから先ここで亡くなった人たちの思いを担いでいくことになりました。
他の水道をひねれば、運命は変わったのでしょうか?
旧校舎で亡くなり、その思いが浄化しきれず、旧校舎でさまよい続ける亡霊たち。
旧校社から無事脱出できたけれども、亡霊たちの思いを担いで生きていかなければいかず、地上でさまよう運命の真央。
どちらにせよ、さまよわなければいけないのでしょう。
さぁ、旧校舎の謎はどんどん深まっていきます。
町中に伝わる怖い伝承。
それはあなたのそばにも迫ってきていることでしょう。
次に、この地下の水道をひねるのは、あなたなのかもしれません。