9話ー斗南清二の撮り鉄日誌(番外)と 在川家に弟誕生、望と夏休み(1)。
カシャカシャカシャカシャ
カメラの音が響く。
蒸気機関車が有蓋貨車を牽いて走り行く。
一人のそこそこ老齢の男性が「奮発して良かったなぁ…」とカメラを見て言う。
一般界から輸入した、レンズ交換式デジタルカメラを見てしみじみとしていた。
その後、汽笛が聞こえたので、またファインダーを覗き込んで、カシャカシャカシャカシャとカメラの音を響かせた。
そこまで有名な撮影スポットでは無かったが男性が一人、カメラを持って来た。
護衛は警戒をする。
そこそこ老齢の男性が帽子を取り、挨拶をする。
「何を狙っているのですか?」
カメラを持った、30代くらいの男性はびっくりして腰を抜かす。
そう、一般界との戦争後に退位させられた前国王の斗南清二であったからだ。
30代くらいの男性は「とととととと、斗南清二様!?!?!?」と驚き、「お邪魔ですよね…、僕はこれにて失礼!」と敬礼をして行ってしまった。
護衛は言った。
「斗南様、そこまでなさらなくてもいいのでは?」
斗南清二は「せっかくの縁だ。挨拶くらいしてやらないと、可哀想だろ?」と言う。
護衛は「斗南様は前国王で象徴的な立場にあったことをお忘れですか?あんなことをしたら、逃げるに決まっているじゃ無いですか?」と言う。
斗南清二は「相変わらず、口が悪いな…。でも、頼りにしているからな」と護衛に伝えて、そのまま再びカメラのファインダーを覗き込んだ。
また汽笛が聞こえたのだ。
護衛は事実を言っただけでございますと、言いたかったが、頼りにしていると言われたのと、清二がファインダーを覗き込んでいたのを見て言うのをやめたのであった。
私は花見朱莉と花守優華とで買い物に出掛けていた。
花見朱莉は「お嬢様は素が良いので、何を着ても似合われますわね?」と言う。
花守優華が何かを着ても、花見朱莉は何も言わないが、私が何かを着てみせると、花見朱莉は何故か褒めてくれた。
そんな状況だったので、すっかり花守優華はすねてしまった。
花守優華の様子に気付いた花見朱莉が慌てて褒めるが、花守優華はすっかりへそを曲げてしまった…。
私は花守優華を見て言う。「やっぱり、優華は可愛いよ。初めて会ったあの日からね?今はもっと可愛いから自信を持って良いよ」
花守優華は「それは本当…?」と言い泣いていた。
私は「本当だよ。だから、もっと自信を持って」言う。
花守優華は「良かった…。後、私。今は望ちゃんに拾われて良かったと思っているの」と言った。
私は「え?」と言い。
花守優華は続けて「昔は恵まれた環境に置いて貰ったのに、散々嫌だととか、望ちゃんのことが好きになれなかったり、でも今は良かったと思っているわ」
私は自分勝手で、花守優華の気持ちを考えていなかった。
あらためてそう感じるようになった。
私はだから、「ごめんね…。私、いつも自分の事ばっかりで、優華の気持ち全然考えてなかった…」と言う。
花守優華は「ちょっと、なんで望ちゃんまでしんみりなっているの?しんみりなるのは、私だけで良かったのに…」と言う。
私と花守優華は花見朱莉が運転する車で、自宅まで帰った。
年が変わると、クラスも変わるので。
私は誰と一緒のクラスになるか、気になっていた。
新学期が始まり、私は花見朱莉の送迎で学校へと向かった。
玄関に張り出された紙を見て、クラスを確認する。
秀島怜奈と一緒のクラスになっていたのを確認して、私は少し安心した。
担任は女性の先生らしい。
私は色々とホッとしながら、教室へと向かった。
その先生は新学期早々、進路の話をするタイプの先生だった。
私はその話を聞いて、もう三年生かぁ。としみじみと実感が湧いた。
私はその話を聞いてから、勉強を頑張らなくては思い。
家に帰ってから、早速配られた宿題のプリントや参考書を進めていった。
花見朱莉はいつまで続くかな、みたいな目で見ていたが、それすら気にせずに勉強を進めた。
季節は初夏頃。
私に弟が出来た。
名前は在川孝介。
私は幾分か古くさい名前だと思ったが、キラキラし過ぎないこのくらいの名前が良いって言って、父親も母親も納得した様子だったので、私は何も言わなかった。
私は弟が出来たが、それより進路を良いとこ決めて両親をぎゃふんといわすと、誓ったので。
弟には目もくれず、ひたすら勉強を頑張ることにした。
私は次のテストで全教科100点を取った。
これには父親も母親も、花見朱莉も花守優華も驚いていた。
私が周りの子に勉強を教えることにつれて、私から秀島怜奈が離れていく。
次第に秀島怜奈は私が話し掛けても逃げるようになってしまった。
たしかに、秀島怜奈は私と違って、テストの点数は良くないが、友達をやめるような素振りまでしなくても。
私は悲しかった。
その頃になると、秀島咲奈も近寄ってこなかった。
秀島咲奈にはひどいことをした自覚があったが、秀島怜奈には何にもしてないのに、避けられるようになってしまった。
夏休みに入った私は、花見朱莉と花守優華を連れて、新型機関車のお披露目イベントに行っていた。
私は何故か、新型の機関車がずっと気になっていたのだ。
新聞でも性能などの情報は出るが、機関車の形はシルエットだけで公開されていなかったからだ…。
花見朱莉は楽しそうだが、花守優華はあきれ顔をしていた。
そもそも、あんまり興味が無い様子だった。
扇形機関庫の真ん中にそれらしい車両がカバーを掛けておいてあった。
お披露目の時間になり、私はカメラを構える。
凸型のいかにも、旧式といった見た目だったが、おそらく一般界側が技術供与を拒んだ所為だろう。
イベントも終了間際。
物販のコーナーであれやこれや私が自分用のお土産を買いあさっている時だった。
ふと見慣れた人影が。
私は思わず声をかける。
「咲奈!?????」しかし、その人影は何処かへ行き、見失ってしまった。
私は、自分用のお土産をお会計に通した。
「ギリギリ足りてよかった」と私は言う。
花守優華は、なぜか汽車のデザインされた腕時計を買っていた。
花見朱莉は傷だらけのシンプルなデザインの懐中時計を買っていた。
キッチンタイマー代わりに使うらしい。
普通の懐中時計をキッチンタイマー代わりにするのは器用だと思ったが、それよりも見た目がボロボロなのが気になった。
私は思いきって聞いてみた。「なぜ、そんなボロボロな懐中時計を買ったのですか?」
花見朱莉は答える。「これは電車の運転台に据え置いて実際に使われた懐中時計で、ちょうどキッチンタイマー代わりにするのが、良いと思ったので買ったまでです。電車の運行に携わっていただけあって、秒針も停止しますし、日差もそこまでないでしょうし。良いと思ったのです」
私の時計は母のお下がりで秒針が止まらないので、そんな機能があるのを初めて知ったのだった。
私は鉄道グッズと部品を中心に買っていた。
まだ夏休みは長いのに、予算のほとんどを使い果たしていた。
私は花守優華が魔法の練習をするというので、私もついていった。
花見朱莉も護衛としてついてきた。
私は花守優華があの時に買った汽車の時計を付けていた上に、秒針が1秒に一回動くタイプである事に気づいた。
私は花守優華に「それ、新しい時計ね?」と言う。
花守優華は「そう、この前買ったの。電池の交換だけで長く動くし、私は今までの時計より、こういうのが好みなの。面倒はなるべく省きたいわ」と答えた。
そうやって、話すうちに魔力演習場に私たちは着いた。




