8話ー死といじめと復讐
次の日、学校では禁止されている魔導具を持ってきて現地雇用の先生と魔法バトルになった生徒がいるという話題でずっと持ちきりだった。
私も混血ながら魔法が使える身として、肩身の狭い思いをすることになった。
私が来るなり、皆がその話題をしたいのに別の話題に変えたのを察したから。
秀島咲奈はもしかしたら、退学処分になる可能性もあった。
私は深く深く溜め息を吐いた。
隣に座る女の子が話し掛けてきた。「在川さんも大変ですね…」
私はびっくりして「何が、大変…」と言う。
隣に座る女の子は「普段、仲良くしている咲奈さんだっけ?退学になる可能性が高いなんてね?」と言い、何故か私に微笑みを掛けてきた。
隣に座る女の子は倉田美穂。
名前は知っているが、そこまで仲は良く踏み込んだ関係になったことは無い。
倉田美穂は「今度は私と深い関係になりませんか?」と言ってきた。
私は内心、なに言ってるんだこいつって思いながら、平静を装って「咲奈とも無理に付き合わせられて居ただけだしね?そこまで深い関係じゃ無いよ?あと、まだそういうのは早い気がするのよね。だから、もう少しやりとりをしてから考えますね?」と言う。
倉田美穂は「てことは、私とやりとりをしてくれるってこと!?」と言い喜びの眼差しを向けてきた。
私は(うわ…、地雷だったかぁ…)と思いつつ、「そうそう、ペースが合うかも大事ですし、まずは連絡先交換から」と言い、(仕方なく)とりあえず連絡先を交換した。
秀島怜奈は大変そうだった。
一応、秀島咲奈の姉だからね。
そんな、秀島怜奈の様子を覗いていると、後ろの気配を感じた。
倉田美穂だった。
私は1歩下がって、「怖いですよ。倉田さん」と言い、そのまま逃げて行った。
その時だった、倉田美穂から鬼のように連絡が来たのは…。
「逃げるなんてあんまりですわ」
「どうして、逃げたのですか?」
私はあまりの恐怖でどうして良いのか、分からない。
私の近くに立ったのは、秀島怜奈だった。
秀島怜奈は「望ちゃん大丈夫?」と私を気遣ってくれた。
私は「ごめんね…。怜奈さん…。咲奈が退学になるのはきっと私の所為なんだ…」と言い涙が溢れて泣いた。
秀島怜奈は私の事を受け止めて「望ちゃんは過去に戻りたくなかったんだよね?私は出来ればあの時、戻って止めていればってずっと後悔しているよ。その上、今の養父に繋いでくれた人に冷たくあしらわれたけど、あれは愛故だと聞いて、あの時に戻ってもう少し、大人な対応を出来て居たらってずっと後悔しているの。戻りたいも戻りたくないもあくまで本人の意志が尊重される必要があると思うの。だから、咲奈から魔法の小道具の話を聞いたとき、私は羨ましく思ったし、更にそんな道具を私利私欲の為に使おうとした咲奈が許せなかったの。だから、現地雇用の先生に私が告げ口したの。だから、退学になるのなら、私の所為だよ…。後から生まれた妹を愛せないなんて、私は姉失格ね…」
秀島怜奈は「あと、私は望ちゃんは過去にしがらみの無いタイプのだと思ったから、望ちゃんを連れて過去に戻るって言ったときは、妹に、あんた正気か?唯一の友達を失うぞ?とは思ったけどね…」と言い私の頭を撫でた。
何故か秀島怜奈は落ち着いた口調で私を安心させようとしてくれた。
私は何か裏を感じて「どうして、私に優しくしてくれるのですか?」と聞いてしまった。
秀島咲奈は「うーん、今回の件は私にも責任があるから?」と言い、そんな感じではぐらかされてしまった。
みんな嘘が上手いものだ。
私が下手すぎるだけか…。
次の日、学校へ行くと倉田美穂からの視線を感じた。
私は「どうしたの?」と声を掛ける。
倉田美穂は私の隣に座ってから、「なんで、浮気してるの?」と言った。
私は訳が分からない、付き合ったつもりも無いしで。
「何のことですか?あなたは私の何なんですか?まだ付き合っても居ないのに束縛するのはやめて!だから、あんまり関係が深くない人と連絡先を交換したくなかったのよ!!」と食い気味に私は反論をする。
倉田美穂は黙ったまま立ち上がり、そのまま姿を消した。
その後、校庭から鈍い音がした。
私は現実が信じられず、目を塞いだ。
次の日、私は学校を休むことにした。
在川浩二と在川花海には花見朱莉が事情を説明してくれた。
流石にこうなった以上は休むことを容認してくれた。
花見朱莉は私に気を遣って「今日はデパートで服を見ませんか?お嬢様が欲しいって言っていた服を」と部屋に居る私に声かける。
私は「別にいい、行かない…」とだけ答えて引きこもった。
花見朱莉は「そうですか…、気分でも変わると良いと思ったのですが…」と言い暗い様子でドアを閉めた。
続いて花守優華が来て、「朱莉さん、落ち込んでいたよ…。一緒に謝ってあげるからさ?ね?出掛けよ?」と言う。
私は「そっとしといて…。あんな風になったのも私の所為だし…。自分を過信していたから、こうなったんだ…」と言った。
花守優華は私の部屋から、そっと居なくなっていた。
花見朱莉が花守優華に「お嬢様、どんな様子でした?」と聞く。
花守優華は首を横に振り「あれは重症ね…、あのままここで腐ってもおかしくない」
在川浩二が花見朱莉を呼ぶ。
その為、花見朱莉は居間へと行ってしまった。
花守優華は廊下に一人取り残された。
花見朱莉は在川浩二から、妻の花海が第二子を妊娠したので、その間の家事を頼むという話をされた。
花見朱莉は「お嬢様にはどうやって、どういうタイミングでお伝えすれば良いでしょうか?」と訊ねた。
在川浩二は「確かに、なんせあんな状態だからねぇ…。色々と辛いことはあっただろうけど…、まぁ、花見さんに任せるから、言えそうな時に言ってやってくれないか?」と言う。
花見朱莉は「そうですね…、そういう話は旦那様がされた方が良いかと…」と言う。
在川浩二は「あんな状態だけど、まともに取り合って貰えるのか…?」と言う。
花見朱莉は「でも、それは家族の話なので私が伝えるのも違うと思いますから」と言う。
花見朱莉は「では、持ち場がありますので。これにて失礼致します」と言い席を立ち持ち場へと戻ってしまった。
在川浩二はスマホのメッセージアプリで「望。大事な話がある。居間に来てくれないか?居間に行くのが厳しいのなら、望の部屋に行って話がしたい」と送った。
私はスマホが鳴ったのに気がついた。
しかし、見る気分になれなかったので。
放置をしてしまった。
次の日、部屋のドアを叩く音がした。
父親だった。
私はドアを開けて言う。「何…?」
私の覇気がいつもと違って無かった父親は驚いた様子だった。
父親は「スマホは見たか?」と言う。
私は「ここ1-2日は見ていない…」と答える。
父親は「大事な話がある。居間に来るか部屋に入って話すか決めて欲しい」と言う。
私は「居間で聞くわ…」と言い、一緒に居間に降りていった。
どうやら、母の花海が二人目の妊娠をしたらしい。
そして、花海が入院などをしてる間は花見朱莉が代わりにここの家事を務めるらしい。
私は正直に喜ぶ事が出来なかった。
無理にでも学校に行かないと、姉としての体裁が保てなくなるからだ。
次の日、私は暗い顔をして学校へ向かった。
運転手の花見朱莉は「無理をしてまでは行く必要はありませんよ…。お嬢様」と気を遣ってくれたが…。
私にとっては、余計なお世話だった。
言わなかったけど…。
学校に着けば、案の定。
陰でコソコソヒソヒソ言われる始末だった。
だって、倉田美穂は私の所為で死んだのだから…。
しかし、姉としての体裁を守るためには仕方なかった。
学校に行くほかなかった。
しばらくして、秀島怜奈に私は呼び出された。
秀島怜奈は私の事をひどく心配したようで、「望ちゃん大丈夫?今日も色々と陰で言われたみたいだけど…」と聞いてきた。
私は「あぁ…うん…。色々と言われたよ…」としか、答えられなかった。
秀島怜奈は「無理は良くないから、いつでも言ってね?私も力になるから…」と言って
くれた。
秀島怜奈の優しさは嬉しかった。
しかし、私は分からなかった。
秀島怜奈がここまで私に優しくしてくれるのかが…。
違うクラスながら、私が悪口を言われないように護衛をしてくれたり、いじめられそうになったら、身を挺して守ってくれたり。
本当に世話になりっぱなしだった。
何故、ここまで優しくしてくれるのか…。
本当に分からなかった。
次の日は安心して、学校に行けると思っていた。
しかし、そう現実は甘くなかった。
次の日になると、他の生徒から標的に秀島怜奈もされていたのだ。
そうなると、私の事までをかまっている事は困難であった。
その為、私は昨日以上に激しい陰口などに晒されることになった。
しかし、物を隠されたり汚されたりしなかったのは不幸中の幸いだった。
手を出されることも無く、私の方はまだ平穏だった。
しかし、秀島怜奈の方は、物も平気で隠されるわ、顔を殴られるわ。
本当に散々な目に遭っているようだった。
私は秀島怜奈を殴っている女子生徒にどうやってやめさせるか、思案する。
魔法をちらつかせれば、一時的には居なくなるが、秀島怜奈の立場がより危うくなりかねない。
私は魔法を使って、手持ちのフイルムに女子生徒が秀島怜奈を殴っている瞬間を念写した。
それを家で魔法現像して、そして写真にした。
次の日、秀島怜奈を殴ろうとしている女子生徒に写真を突きつける。
女子生徒は私を睨み「なんのつもり?」と言う。
「これ以上、怜奈に手を出すのなら、これを先生に渡します」と私は言う。
女子生徒は勝ち誇った顔をして写真をビリビリに破いた。
「で?」
私は「では、渡してきます」と言い立ち去る。
女子生徒は「ビリビリに破いたのに?」と言うがそれは無視。
10枚印刷していたし、ポジは家に置いてあるので幾らでも焼き増しが出来るからだ。
私は秀島怜奈の担任の先生に例の写真を1種類ずつ渡した。
正義感が強く、曲がった事が嫌いな先生であったので。
あの女子生徒も担任の前では、いじめをしない。
私は「今も、先生がいないので秀島怜奈は殴られていると思います」と言うと、先生は「これはひどいわ…、今すぐ教室に行くわ」と言った。
女子生徒は秀島怜奈にバケツに入った水を掛けた。
そして、何度も殴る殴る。
その時、教室のドアが開いた。
女子生徒は驚く。
「せっ…。先生…」
「これは秀島さんが蹴っ飛ばして、こぼしただけで…」
先生は女子生徒を連れて行く。
その後、秀島怜奈をいじめていた女子生徒は推薦入試の話が、消えて無くなったらしい。
そういう話もあってからか、秀島怜奈へのいじめは数日たったら落ち着いてようだった。
しばらくして、秀島咲奈も復学していつも通りにの日常なった。
しかし、私は秀島咲奈より、秀島怜奈の方とよく話すようになっていた。
秀島咲奈はそれに不満そうではあったが…。
ある日、秀島咲奈は私に「せっかく戻れたのに私だけが、のけ者じゃない…」と言った。
私は「そんなつもりは無いわ…」と答える。
しかし、秀島咲奈は納得していないようで、感情が収まらない。
「なんで、私よりいつも怜奈と話してるくせに!!!」
私は、そんな状況の咲奈に怜奈に優しくされたから、あれ以降仲良くなってとは口が裂けても言えなかった。
ただ言われるがまま、私は言葉のサンドバックになって、しばらくしたら解放されたが。
どっと疲れて、そのまま迎えの車に乗って帰った。
花見朱莉は「お嬢様、かなりお疲れのようですが、何かあったのでしょうか?」と言う。
私は「花見さんは、分かってしまうのね…。」と今日あったことを話した。
花見朱莉は「確かに、それは大変な問題ですね…」と言う。
私は「まぁ、でも無理だもんね?花見さんに言ったって環境を変える事は出来ないからねぇ…」と言い、車の窓から遠くを見つめた。
花見朱莉は「そうですね…」としょんぼりした様子で答えた。
その声からは本当に私の力になりたいが、なれないジレンマを感じた。
家に帰ってからは、花見朱莉に勉強を教えてもらい。
ご飯を食べて、お風呂に入って。
布団に入る。
花見朱莉は私に勉強も教えてないとダメだし、更に私たち家族の食事の用意までしないと、いけなくなっていた。
いくら花海が妊娠している間だけと言っても、花見朱莉の負担が大きすぎる。
しかし、花見朱莉は文句一つ言わず全てをこなす。
花守優華も気を遣って、手伝うと言い出す始末だ。
しかし、花見朱莉は「ありがとう。気持ちはうれしいけど、これは私の仕事だから」と言って断ってしまった。
私は訳が分からなかった。