7話ー教科書に載っている人物とまさかの血縁。名無しの権兵衛と新しい世話係(2)
在川花海の父と母。
すなわち私の祖父母が家に訊ねてきた。
私はその顔に何処かで見覚えがあった。
教科書を開いた。
私は一人、「やっぱり似てる…」と言い。
呼ばれたので、そのまま祖父母と一緒にすごす。
私は気になったので聞いてみた。「おじいちゃんの名前ってなんて言うの?」
祖父は「そういえば名前を言ってなかったな。東嗣治。嗣治でも東さんでもおじいちゃんでも好きに呼ぶがいい」と言う。
私はびっくりした。
教科書に載っている人物が自分の祖父だったのだ。
私は慌てて、教科書を取りに行き祖父に見せる。
私はゼーゼーハーハーいいながら「これって、おじいちゃんなの?」と訊く。
祖父はびっくりした様子で、「まさか、教科書に載っているとは…」と言い、教科書の文字を読んでいた。
祖父は「やったことの内容的に、僕に間違いはない…。ただ昔の肖像を使うのはやめて欲しいな」と言い笑う。
私には近現代史の教科書に載っている人物の血が流れていて、しかも祖父という比較的近い代の人物が教科書に載っていたのだ。
そう思うと、勉強のやる気が湧いてきたのだった。
祖父達は朝には帰ると言った。
かつて異端と言われてから、一般界へといったので、入国すらままならなかったが今は普通に入れて、その上、孫にも会えた。
なので、思い残すことはない。
その笑顔が印象的だった。
まぁ私の母、花海は斗南華の話題を出されて露骨に不機嫌になったが。
その会話の節々から、斗南華とのわだかまりの原因が分かった。
菅原涼太という、男性を取られた事によって斗南華のことが、あまり好きになれないらしい。
楽しいことのある日はあっという間に過ぎて、祖父母が帰りの列車に乗る時間になった。
祖母の東千代子は言う。「望ちゃん。また会える日を楽しみにしているよ。娘達に自分のルーツを見せることが出来たし、あとは先祖のお墓にもお参りすることが出来たし、とっても有意義だったわ」
私は「こんな近くに、祖先のお墓があるなんて知りませんでした…、今度、暇があれば草むしりをするわ」と言う。
祖母は「気に掛けて貰えるだけでも、うれしいわ」と言う。
銅鑼が鳴らされて、「列車が発車します」と拡声器を持って駅員が叫ぶ。
祖父母とその娘達は列車に乗り込む。
在川花海は大きく手を振った。
私もそれにつられて隣で手を振る。
一般界に帰る二人の娘達も手を大きく振り返してくれた。
次の日、休みだったので街を歩いていると。
花見朱莉が「後ろに例の権兵衛がいます」と言い私の事を抱えて急にしゃがんだ。
その直後、攻撃魔法が飛んできて歩道を抉った。
花見朱莉は銃で反撃をする。
その後、魔法を使った反撃へと切り替える。
花見朱莉は大きな結界を張る。
しかし、それをいともたやすく割って権兵衛は入ってきた。
「魔法界の王立空軍の元軍人がその程度かい?」と名無しの権兵衛はあざ笑うように言う。
花見朱莉は「結界は解除しました。お逃げくださいお嬢様!!!」と言う。
私は「だって、そんなことしたら、朱莉さんが…」と言う。
名無しの権兵衛は「おっと、そこの世話係には興味は無え。興味があるのはそっちのガキンチョだ。何故、俺に興味を持ったんだ?」
私は「それは花守優華に話を聞いたから…」と素直に答えた。
名無しの権兵衛は「あいつまだ生きてたんだな…。牛込に改姓しろってしつこく迫られていたけど、改姓しなかったあの女」
私は「そんな、言い方は無いでしょ!!!」と言う。
名無しの権兵衛は「まぁ、改姓してたら今頃殺されていてもおかしくないからなぁ。しなくて正解。牛込家は執着が激しいから」と言い。
「牛込家は俺みたいに割り切って、なんでも捨てて適応できる方が少数派。俺は名前を完全に捨てたおかげで牛込の監視をくぐり抜けているのさ。大半の野郎が幼少期の教育で、いや洗脳だな。それによって名前を捨てれば生きられるのに名前を捨てられずに、見つかって殺されている。おっと、喋りすぎてしまった。興味があるならアジトに来るが良い。歓迎はしないがな」と名無しの権兵衛は言い姿を消した。
花見朱莉は私に慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか?お嬢様」
「私は大丈夫…。それより、王立空軍にいたって本当なんですか…」と聞く。
花見朱莉は「在川浩二様は知ってみえるのですが…」と言い、重い口を開いた。
花見朱莉は適性があったので、かつては王立空軍の魔導航空部隊にいたこと。
一般界の空軍機に歯が立たずに撃墜されたが、生き延びたことを語った。
そして、花見朱莉は「今日は帰りましょうか」と言う。
私は「そうね…」と答えて、帰りの車に乗った。
花見朱莉も車に乗ってエンジンを掛けて、そのまま私の家へと向かった。
次の日、花見朱莉の送りで学校へ向かった。
花見朱莉は「昨日は大変でしたね」と気遣ってくれた。
私は「今日の帰りの迎えは誰が担当ですか?」と聞く。
花見朱莉は「何もなければ、私がきっと担当です」と言った。
歴史の授業をいつになく真面目に授業を受けた私は、歴史の先生に「頭を打ったのではないか」と心配されたが、親戚が教科書に載っていると言うとややこしくなるので、適当にはぐらかした。
そして、帰る時間。
花見朱莉は車で迎えに来ていた。
私は後部座席に乗り込んだ。
花見朱莉は言う。「お嬢様はお車の免許を取ろうとは思わないのですか?」
私は「取れたら、取ろうかなとは思っている」と答えた。
花見朱莉は「無理して取ることもないですが、取れるなら取っておく方が良いと思います」と言い運転を続けていた。
自宅に着くと、近くに見慣れない車が止まっていた。
私と花見朱莉は守りの体制を維持しながら、家に入ろうとする。
不審車から人が降りてきた。
その人物は間違いなく名無しの権兵衛と呼ばれるあの人だった。
花見朱莉は「また、あなたですか…」と溜め息を吐いた。
名無しの権兵衛は「牛込家がいかに腐っているかを、聞く気はないかい?」と言う。
私は遠回しにこの前の約束(した覚えはないけど)を果たせと言いに来た気がした。
私ははっきりと「約束はしていないし、していないから果たせないわ」と言う。
名無しの権兵衛は「言うことを聞かないなら、実力行使も出来るんだけどなぁ?」と言い、魔法を出す真似をする。
私は「そんなことをしたら、魔法界自体がタダで済むとお思いで?」と言う。
続けて、私は「知っていると思うが、私は一般界から派遣された治安維持軍の現地司令官の娘なの。そんな、荒っぽい手を私に使ったとなれば、魔法界は消し去られて、石器時代に戻るわ」と言う。
名無しの権兵衛は「一般界だって、そこまではしないだろうが、俺自身や魔法界全体に対してそれなりの報復をする可能性は考えられるから、出来れば俺も荒っぽい手は使いたくない。ここは穏便に付いてきてくれないか?」
私は「身の安全は保障されますか?」と言う。
名無しの権兵衛は「最大限確保はする」
花見朱莉は口を挟み「必ず、生きて帰して貰わなきゃ、困ります。私の責任問題になりますし」と言う。
名無しの権兵衛は「じゃあ、そこの旧軍人も付いてくるか?」と言う。
花見朱莉は「え!?」と言う。
名無しの権兵衛は「そのまんまの意味だ。来い」と言い、そのまま結界を張り、それを瞬間移動させた。
私と花見朱莉は名無しの権兵衛のアジトにいた。
「牛込家は表向きは同士討ちを禁止しているが、昔は除名制度などのある秩序ある組織であったが、今は権勢拡大のために同士討ち以外は何をしても良い組織に変わってしまった。
あの頃とは違うのだよ。」
名無しの権兵衛は「あの頃の牛込は本当に魔法界を救うような組織であった、斗南家の優柔不断などに対して、強硬に出るのが牛込家であったから…。だが、今は違う。ただのヤクザに成り下がったのだ。だから、俺はお前の邪魔をしない。だから、俺の邪魔はしないでくれ」と言う。
名無しの権兵衛は続けて「花守優華は牛込が命の恩人だと、思っているかもしれないが、組織にとって役に立たなくなったら、温情すら無く肉弾にするのが今の牛込だ。だから、本当の命の恩人は、お前であり、本当は在川浩二や在川望に感謝をするべきなんだよ。だから、花守優華に伝えて欲しい、名無しの権兵衛の邪魔をしないように、それは現魔法界側の秩序を守るためにも必要なことだと」と言った。
しばらくすると、私と花見朱莉は家の前に居た。
私と花見朱莉はそのまま家へと入る。
在川浩二と在川花海が心配そうな顔をして、私たちを迎え入れた。
事情の説明を花見朱莉がしてくれている隙に、私は花守優華の部屋へと向かう。
ドアを開くなり花守優華は「どうしたの?」と言う。
私は「優華、名無しの権兵衛は筋の通った人だわ。だから、優華が何かを思っても、権兵衛の邪魔はしないで欲しいの」と言う。
花守優華は「突然どうしたの?私はもう、牛込とも名無しの権兵衛とも関わるつもりは無いわ…。だから、言われなくとも邪魔などしないわ」と答えた。
私は「それなら、いいのだけど…」と言う。
花守優華も何か心変わりがあったのだろうか?
一人部屋で花守優華は「言われなくも…分かってるよ…。今のあの家系は腐っていて…、だから、それを潰そうとする名無しの権兵衛の気持ちも…。痛いほど分かってるのよ…」そう言い一人泣いていた。
その頃、花守優華が育ったあの裏通りで建物が爆発し多くの死者が出た。
牛込家の指導者や、その跡取りとされた牛込まりな、そして牛込家に仕える重鎮家の人たちが多く亡くなった。
生き残った分家の牛込は名無しの権兵衛こと折部高氏を名指しで非難する。
除名された人を暗殺せずに名指しで非難するのは、異例の事態だった。
これに対して、名無しの権兵衛こと、牛込抵抗軍側は牛込の分家が主導権を握るために本家を潰したクーデターだと主張し、決定的な証拠を公開すると発言をした。
その後、牛込抵抗軍側は証拠を出せないようにする妨害があったと発言をし、証拠を公開する。
何度も、追跡を逃れて生きてきた牛込抵抗軍側のリーダーは牛込の分家よりはるかに警戒心が強く、狡猾であったので。
牛込の分家は魔法界側の警察に目を付けられて。
そのまま、拘束されたらしい。
そのニュースは一般にはチラッと流れた程度だった。
しばらくして、折部高氏は私の元を訪れた。
「一般界の軍部が協力してくれたおかげで、私は牛込を潰して生き延びることが出来ました」と言う。
私は「私は何もしてませんよ。だけど、これからは名前を名乗って生きられますね?」
折部高氏は「これからは生みの親が付けてくれた元々の名前、折部高氏を名乗って生きます。でも、まさかあのタイミングで牛込の分家が本家を潰すためにクーデターを起こすなんて思わなかったね…」と言う。
私は「あれは高氏さんが仕込んだ訳じゃ無いんですか?」と言い驚いた。
折部高氏は「分家を見ていると不憫だなって思って、本来クーデターを起こさず、名指しで非難されなければ、分家だけは対立しないって約束をさせて見逃すつもりだったのだよ。だから、今回も分家には直接は手を下していないし」と言う。
私は「確かに、治安機関に拘束されただけですもんね…」と言った。
折部高氏は「じゃあ、今度はいつ会えるか分からないけど、またね」と言う。
私は「面倒ごとに巻き込まれるのは、もうごめんだわ」と言う。
折部高氏は「もう、牛込は潰れたし、面倒ごとは起きないさ?」と言い手を振って別れた。
私は一つ溜め息を吐いて、そのままカフェを後にした。
次の日、私は学校で秀島咲奈に呼ばれた。
秀島咲奈は「牛込まりなが死んだって本当?」と聞いてきた。
私は「えぇ、恐らく本当だと思うわ」と答えた。
秀島咲奈は「牛込家の内紛で死んだっていうのは本当?」
私は「恐らく本当だわ」と答える。
秀島咲奈は「もう一度、魔法の手合わせをしたかったわ…」と言った。
私は「相性の悪い相手とは何をやっても負けるわ、手合わせなんてしない方が良いと思うけど…」言う。
秀島咲奈は「でも、相性の悪い相手に勝つ方法って気にならない?」と言う。
私は「気にはなるけど…、でも逃げるが勝ちって聞いているし…」と言う。
秀島咲奈は「もし、過去に戻れるならどうする?」と聞いてきた。
私は「別に…、戻りたくは無いかな…」と言う。
秀島咲奈は「実は過去に戻れる道具があるの?一緒に使ってみない?」
私は「私は別に行かないよ、行きたくないし…。行きたいなら一人で行ってよ」と言って、そのまま立ち去ろうとする。
しかし、秀島咲奈は私の袖を掴んで「一緒に来てくれないとここから飛び降りる」と言う。
私は秀島咲奈を問いただす。「過去に戻って何がしたいの?」
秀島咲奈は「それは牛込まりなと戦って、もう一度、白黒はっきり付けたいのよ。あの時はあなたに促されて逃げたけど…」
私は「死んだら戻れないかもしれないわよ?私は戻れないなんてごめんだわ」と言い逃げ出そうとする。
すると、屋上のドアが開いた。
秀島咲奈は舌打ちをし「現地雇用の先生かよ…」と言った。
先生は「先生に対してその口の利き方はないんじゃない?話は聞かして貰った、一般学校は魔導具の持ち込みは禁止なので、没収します」と言い鞄から怪しい懐中時計を出して没収していった。
秀島咲奈は笑い「腕時計がその魔導具よ。没収するならこっちよ」と言い魔法の力で跳躍する。
先生も詠唱を始めて、秀島咲奈にと空中戦を始めた。
私はその隙に屋上から抜け出して、そのまま迎えの車に乗った。
私は花見朱莉に「今すぐ、車を出して!!」と言う。
花見朱莉は上の方で不穏な空中戦が起きていることを察していたのか「わかりました」と言い車を飛ばした。






