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イケメン猫様ズに溺愛されています①  作者: はやしかわともえ
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誰とキスする?

それは土砂降りの日曜日のことだ。僕は兄さんと車で、大型ショッピングモールで買い物をした。

帰り際、ペットショップが目に入って僕たちは硝子の内側にいる子犬や子猫を見て癒やされた。

「可愛いなぁ」

僕がそう呟くと兄さんに頭を撫でられる。

「命を与るって大変だぞ。まあでも、いつかな」

僕は兄さんのそんな言葉が嬉しかった。車に買ってきた荷物を載せて、僕は助手席に座った。

早く僕も車の免許が取りたい。そのためにバイトだって始めたのだ。

なんのバイトかというと、ファミリーレストランの調理補助だ。ちゃんと作り方もマニュアル化されていて、その通りに作るのだ。上手くできなくて落ちこむこともあるけど、幸いなことに人には恵まれた。

それは本当に良かったと思う。

「翔也、今日はカレーにしよう」

「うん」

僕たちには両親がいなかった。僕たちが幼い頃に母さんは病死して、父さんもそのあとを追うように亡くなった。自殺だった。僕たちは親戚中をたらい回しにされた。

母さんは高圧的な人だったらしい。誰かと揉めてばかりいて、なにかとトラブルも多かったみたいだ。せいせいした、と陰でおばあちゃんが言っているのを聞いて、僕は落ち込んだ。

母さんは確かにひどい人だったかもしれない。それでもたった一人しかいない母さんであることに変わり無い。僕は泣いた。兄さんに事情を話すと「他の人には言うな」と言われた。その時の僕には理解できなかったけど、今なら分かる。日本という国は「波風を立てない」ことが最重要案件なのだ。事なかれ主義という言葉もあるくらいだし、時々その言葉を思い出して、息が詰りそうになる。

僕は人目を気にして死ぬまで気を張り詰めていなければいけないんだ。

そう思うと急に人生がつまらなくなったような気がした。でも、そんな僕を兄さんは支えてくれた。

兄さんは僕より8つ上で、自分のことは自分でできた。

仕事を始めてローンで車を買った兄さんは休みのたびに僕をドライブに連れて行ってくれた。

大好きな尊敬できる兄さんだ。兄さんは頭もいいけど見た目だってカッコいい。僕は自分がゲイであることに薄々気が付いていた。好きになる相手がいつも同性なのだ。みんな優しくしてくれて僕はそれで満足していた。でも今の僕には猛烈に好きな人がいる。

でも叶わない恋だってよく分かっているつもりだ。僕は助手席でハッとなった。どうやら眠っていたらしい。

「翔也、疲れたな。朝早かったもんな」

兄さんは優しい。完璧だ。

「ううん、大丈夫だよ。帰ったら僕がカレー作るから」

「無理するなよ」

あぁ、なんて兄さんは優しいんだろう。自宅のあるマンションが見えてきた。いつの間にか雨が止んでいる。

空を見ると虹が見えて、僕は何か良いことが起こらないかワクワクした。

車から荷物を下ろす。すると濡れた段ボールが駐車場の隅に置かれていた。

なんだろう、ドキドキしながら近付くと子猫が2匹なあなあ鳴いている。

「兄さん」

「捨て猫かぁ」

見つけてしまった以上、放置するわけにもいかない。僕たちの住むマンションはペットを飼っていい。僕は段ボールを持ち上げた。子猫が僕の顔を見つめてくる。可愛い。

部屋に入って子猫たちの濡れている体をドライヤーで乾かした。風邪をひいたら大変だ。

「なあ」

猫たちに取り囲まれている。

「兄さん、飼っちゃ駄目?」

兄さんは迷っているようだ。これは答えが出るまで時間が掛かりそうだぞ。


つづく



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