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ねむる冬

 除夜の鐘は108回鳴るという。

 清司郎はいちいち数えることはないし、煩悩の数といってもぱっとしない。

 そもそも煩悩にそんなに数があるとは思ってもみなかった。


 外に出ると、ほおをぶつのは冷たい風。


 コートを着込んでも、まだ寒い。

 肩をさすって、どこからか聞こえる鐘の音を聞く。


「ふー」


 息を吐き出すと、白いもやが空へと消えていった。


 星がちらつく空。

 清司郎は目をほそめて、その星を見上げる。


「星はきれいだねぇ」


 そう、星はきれいだ。

 コートのポケットに手をつっこんで、ひとりごちた。

 ふと隣に誰かがいることにきづく。

 

「主」

「お、円寿」

「なにをしているんですか?」

「ちょっと星をね」

「星?」


 清司郎は人さし指を上に向けて、笑ってみせた。


「きれいでしょ。星」

「たしかにそうですね」

「除夜の鐘も鳴ってるし。あーあ、一年って早いなぁ。ていうか寒っ」


 身が縮こまる思いだ。

 腕を再度さすって、ふう、と息をする。


「円寿」

「はい」

「もうじき来年になるけど、来年もよろしくね」

「はい。主」


 鐘の一定の音に耳をすます。

 

 107回は今年ぶん。

 のちの108回目は来年のぶん。

 と、聞いたことがある。


「あ」

「なにか?」

「たぶん、今のが108回目」


 にっと笑ってみせると、円寿も笑った、ような気がした。

 星を見るのに飽いて、視線をもどす。

 視界の端に、南天の赤い実が見えた。


「今年もよろしくね。円寿」

「はい。よろしくお願いします」

「円寿と組んでから、もう長いよねぇ。今年も、生き延びられたらいいな」

「……主。新年からそんなことをいうものじゃないですよ」

「あはは、ごめんごめん」


 除夜の鐘はおわり、静寂が流れる。

 天照に入って以降、つねに危険と隣り合わせだ。

 こうやって除夜の鐘をきき終えると、いつも思う。

 今年も生き延びることができたらいい、と。

「折れず曲がらず斬れる」円寿を、今年も通せたらいい。

 それを、見ていたい。

 叶うのなら毎年、この時期に。

 そう願えれば、いい。

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