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#103 夢の外で夢を見る

今は、目の前に広がっている憧れのテーマパークのお城や緑ではなく、あなたとこの景色を共有していること自体に感動を覚え、視界がキラキラに輝いている。


クマのキャラクターの耳を付けてイチャつくカップルに、私の意識を飛ばして、あのふたりの愛の成分を想像してしまっている私がいた。


ストローで嬉しそうに吸い上げるあなたと、タピオカミルクティーを交互に飲みながら、むせる音を従えて、テーマパークを跡にした。


暗い世界の隅に寄り、リップクリームを指で掬い、あなたの唇にねっとりと付けてあげたが、その感触はいつもより弾力も硬さもあるものだった。


あなたに撮ってもらった黄色と青で構成された、カラフルなキャラクターとのツーショットを見つめていたが、その写真よりも、あなたとのツーショットをキャラクターに撮ってもらうことの想像の方が膨らみ、暴走していた。


夜の黒い空が、街に溶け出しているような光景と、そこに溶け込む身体のほとんどが黒で出来ているあなたに、何度も何度も息を詰まらせた。


寝ているとき、そっとキスをすれば驚かせずにキスが出来るはずだと、ホテルの玄関を抜けて、鼻息荒くロビーを歩みながら、拳を深く握る。


今、身に付けているあなたから貰ったハートのネックレスの、綺麗な輝きとは逆で、口内の側面の壁を舌でなぞると、口内とは思えないくらいのザラザラを感じた。


「この部屋、凄いね」


「はい」


「こんなところ来たことないな」


「ま、まだ高校生な訳ですしね」


「修学旅行とかではホテルに泊まったはずだけど、あまり覚えてないな」


「そういうものですよ」


「ねえ、いいベッドだよ。窓からの景色も綺麗だし」


「はい。それに意外と広いですしね」


「玲音でもテンション上がるんだね」


「まあ、はい」


「ねえ、玲音?」


「はい。何でしょうか」


「一緒の部屋に誰かいても、本当に寝られる?」


「はい、大丈夫です」


「本当に大丈夫?」


「はい。菜穂さんとなら」


このままいい感じにあなたの感情が転んでくれたら、隣り合うベッドで横になるという行為の一段階上に、もしかしたら行けるかもしれないという、気持ちが溢れてゆく。


ベッドでリラックスしている状況では、常に肘をバランスの軸にしているので、肘から腕にかけて痺れを感じることが多々あり、今もそれを強く感じている。


あなたとの夜を想像に置きながら、シャワーを思う存分浴び、頭に乗せたタオルを頻りに動かしながら、あなたを再び見ることを目的として歩を進めた。


あなたに近付きながら、何気なくスマホを取り出して親指で触れると、歌姫が今年、冬眠宣言をすることがスマホ画面一面に映っていた。


私が来たことを確認したあなたは、私がプレゼントした穴なしベルトと細パンツを身に付けながら、私に会釈をして、正面の顔をこちらに向けないままに、浴室へと消えていった。


あなたを痛め付けるような出来事が起こる度に、喉に酸っぱさを含む気持ち悪さの塊が湧き出てくるが、今は理由なき酸っぱさが僅かに放たれていた。


私はホテルのベッドの神聖な匂いを感じながら、あなたと皮膚だけで抱き合ってみたい、裸でぎゅっとして玲音に溶けてみたい、そして、私に敏感を溶かしてほしい、そう願っていた。


あなたを待ちながら弄るスマホの前で、踊る親指の爪は、平面や綺麗にカーブしたものではなく、僅かなうねりが見受けられる歪なものだった。


お風呂から帰ってきたあなたは、私に全てをさらけ出すように疲れた顔を見せ、私にペコペコして許可を得た後、アイマスクと耳栓を慣れた手つきで付けて、眠りに就いた。


横になって少し経ったあなたを確認すると、私はそっとあなたに口付けし、身体をぎゅっと縮めて腕を胴体に引っ付け過ぎたせいか、腕にはトップスの横線が何本も写っていた。


ラブストーリーに似合うラブソングが、オルゴールバージョンで脳内を席巻し、あなたの口元を見ると微動が見受けられ、それは私への愛情を伺わせる、あの二文字の口の動きのように見えた。

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