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第8話 身の程知らず

管理者さんも色々なんだなぁ。


『で、本当に望むギフトはないの?』

「無いです。生涯食べていけるような職業の情報下さい。ちなみに対人スキルゼロで動物には嫌われ植物は枯らすどころか育てようとしても芽すら出ません」


小学生の頃に行った遠足で小動物とのふれあいコーナーがあったんだけど、私はものの見事に動物に無視された。近寄ったら逃げられた。家族や級友達からのいない者扱いに慣れていたので、おとなしく隅っこでみんなの様子を見ていたが、動物に逃げられている他の子には職員さんが優しく兎を膝にのせていて、やっぱり少し寂しかったことを覚えている。


授業で朝顔を育てようがヒマワリを育てようが、級友たちの植えた種が芽を出し伸び、つぼみが膨らんで花を咲かせる頃になっても、私の植木鉢は土しかなかった。育てるのを失敗どころの話じゃない。


ちなみに、水やりの回数は足並みそろえていたので私だけ多かったとか少なかっただとかの要因は無かった筈。


うーん、と管理者さんが考えて


『あなたの魂はねぇ、ナートゥーラの申し子と言えるほどに第二界の力が強いの』


え、なにそれ、ノーフラグでって言ってるのに。


『そのせいで第四界の生き物たちに忌避されていたんじゃないかなぁ。ごめんね。次元嵐から守れなくて』


「いえ、自然災害?から守れないとか仕方ないので。というか、ナートゥーラってなんですか?次元嵐で他の界に行った人はみんな私と同じような環境だったんですか?」


同じような経験をした人がいるなら会ってみたい。話してみたい。

その人たちの前でなら、私はぬらりひょんでも黒子でもないかも…。


『ナートゥーラは、そうね、”自然”かなぁ。第二界のありとあらゆるもの、空であり大地であり海であり風・光・闇・水・炎・木々であり、世界そのもの、かしらね。言葉にするのは難しいけども。あなたの魂は第二界の因子が強すぎて他界に合わなかったのねぇ。

次元嵐で界渡りした元第二界人で渡った界に合わなかったと聞いたことはないの。流された界を選んだ人と戻ることを選んだ人は半々くらいだけど、戻ることを決めた人たちだって生き辛かったと言った人はいなかったし。

あなたは仕方ないと言ってくれたけど、やっぱり申し訳ないわ』


なんか、嫌な流れだ。

手に職、安全第一・いのちだいじに路線を脅かすつもりじゃなかろうな。


『そうそう、動物や植物との関係は、第二界でなら大丈夫よぅ。第四界が体質的に合わなかっただけであなた自身に問題があるわけじゃないもの。対人関係を学ぶのに成人してからというのはちょっと大変かもしれない……どうせなら肉体を作らずに幸せになれそうなお家で赤ちゃんから始める?』


転移じゃなく転生のすゝめ。


「記憶を持ったままですか?」

『そう、どうかな?』

「赤ちゃんプレイの趣味はないです」

『趣味って、あなた……。嫌なら普通に新しい体を作ってほしいって言えばいいのにぃ。ま、いいわ。新しい体に何か希望はある?』


凄い美人とか超強靭な肉体とかはフラグが立ちそうで嫌だ。安全第一の精神に反する。

かといって、目を背けられるほどの醜貌とか病弱とかも困る。なので


「平均でお願いします。今の私の見た目が第二界で問題なければ、今の自分をベースに平均的な顔立ちで普通の体がいいんです」

『平均ね、了解。あなた自身をベースに、同年代の女の子の平均性を大事にする。で、ギフトなんだけど』

「要らないです。言葉と常識とお金だけで十分なのに、アイテムボックスも付けてくれるんでしょう?これがあれば食いっぱぐれない仕事に就けるんですよね」


それだけで十分。

ただ、アイテムボックスだってレアらしいから、使いどころに気を付けないと。

悪い人の前で使って捕まってアイテムとして使われるだけの人生なんてまっぴらごめんだ。


コミュニケーションに難ありな私は、レアスキル満載で上手に立ち回れる気がしないので一般人として生きるためには一般人としての能力だけを持つ。これ、大事。


『もう、謙虚な子ねぇ。大きい葛籠と小さい葛籠と並べられたら、小さい葛籠すら貰わずに帰っちゃうタイプ』


舌切り雀か。

小さい葛籠を選んだお爺さんだって、もしかしたら謙虚なんじゃなくて腰が痛いから大きな葛籠は持てないとか、家が狭いから大きな葛籠は邪魔だとか、そもそも葛籠は要らないとかあったかもしれないじゃないか。


それを押し付けようとするのは善意の押し売りだ。


あ、


「佐伯君は大きな葛籠……ってことでしょうか。じゃ、中身は…」


蛇とか百足とかお化けとか。


『やだ、ナイナイ、それは無いわぁ。こちらがお願いして来てもらったのに、そんな酷いことはしないわよぅ。あの子、いい子っぽかったし』


いい子じゃなければ酷いとまでは言わなくてもそれなりの対応だったんだろうか。


『そうそう、安泰な職業よね?』


ジト目で見つめた私から目を逸らして話も逸らす管理者さん。


『あなたは何が出来るの?そして、何がしたいの?』


何が出来るか……日本の高校一年生が糧を得るために出来ること。

日本でなら親元で衣食住に不自由しない状態でバイトをして小遣いを稼ぐくらいだ。


『特になし?出来ることもしたいこともなくギフトも不要でたった一人で異世界で【いのちだいじに】なの?

他の人たちは生きていくために考えてギフトを決めたよ?最後の子なんて使うかどうかも分からないのに、考え得る限りの力を欲しがった。それなのに、何も持たずに【安全第一】だなんて、随分と驕った考えだと思わない?』


ここまで言われなきゃわからなかった。


他のみんながチートを欲しがるのを厨二だとおもったり、分不相応で大丈夫かなんて上から目線で心配したりした私が傲慢だった。


うん、私は身の程知らずだ。




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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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