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第78話 王都よ、私は帰ってきた

誤字報告ありがとうございますm(__)m

お世話になってます

 「ドラゴンに乗って空を飛んじゃいましたー」

 「……飛んだな」

 「…………飛んだわね」


 さすがにドラゴンに乗ったままで町に入るわけにはいくまいと、手前の平原でタマコには着地してもらってエドさんたちが乗った馬車を待ち、合流した。流石に足の速いバイコーンでも空を飛ぶ竜の速度には敵わなかったので、私とヨルとタマコは小一時間ほど平原でピクニック状態だった。


 ドラゴンの目撃情報はそこここで聞かれるだろうけど、タマコはすでに黒猫になっているので見つかる由もない。


 「ヨル通訳でタマコに聞いたら、まだ、変化できるんですって」

 「今度は何だ?フェンリルか?ヒュドラか?リヴァイアサンか?竜が出て来たんだから、もう驚かねーぞ?」

 「鶏です」

 「……は?」

 「こけこっこーって鳴く、鶏?」

 「ですよー。アイトワラスは四足の蛇が基本体で、ドラゴンになったり猫になったり鶏になったりできるんだそうです」


 変化後の姿のチョイスが分からないねー。共通点ある?オムレツ好きなタマコが卵を産んだりするのだろうか。卵を産む子がオムレツ好きだったらちょっとやだなぁ。


 

 その晩の宿でシオンさんがこちらをチラチラと見ているのが気になったが、何も言ってこないのでこちらからアクションを起こすこともせずにいた。


 「タマコちゃんが気になるようね、彼」

 「ですかねー?アイトワラスの姿とかドラゴンの姿とか見ちゃったからには、もう、タマコの事は侮らないですよね?」

 私とベルちゃんたちの間を引き裂くような真似もムカついたけど、ヨルとタマコの事を馬鹿にしたことが何より腹立たしかったので、今後はぜひ態度を改めていただきたい。


 「それは大丈夫よ。それより、興味津々、近づきたい触りたいって感じかしら」


 あー、それはまた図々しい。自分はバイコーンたちと私の間に距離を取らせて、私のタマコに近寄りたいとな。流石に厚かましく言ってくることは無かったのは、そこまでの面皮ではないという事か。これでバイコーンたちとの触れ合いを許すようなことを上から目線で言われたら笑っちゃうところだった。


 「バイコーンたちが商会に戻された後、ホリィならリズにでもマージにでも言ってあいつらに会いに行けるもんな。分が悪いのは、今までホリィに底意地悪くしていた自分の責任だし、あんだけ見下すようなことを言っておいて、どの面下げてお前に頼めるかってんだよな」

 エドさん、結構辛辣である。私もそう思うけど。

 「レーグル様が別行動で良かったわ。シオン君のホリィちゃんへの態度を見たらあの方がどういう行動に出るか分からないもの」

 「あ、そういえば。レーグルさんは、あっちでも別行動でしたね」

 すっかり忘れてたわ。

 「リズ様に思い切りこき使われてるわよ。ホリィちゃんがレーグル様をどう見ているのかは知っているけど、あの方、本当に有能な方なのよ?」

 ほうほう。その有能さはぜひ私と関係のないところで発揮していただきたい。



 部屋に戻ってヨルとタマコと就寝前のお喋りはペロペロつきである。


 「タマコが格好良かったから、シオンさんもタマコが気になっちゃうんだってー」

 『ヨルもー。ヨルも格好いい?』

 「ヨルは格好いいより可愛いかな?」

 『ヨルも格好いいがいいー』

 そう言われましても。可愛いじゃダメなのか。


 「にゃーご」

 『タマコはあいつのこと嫌いだってー。ヨルもきらーい。ホリィに意地悪したからー』

 「そうだねぇ。シオンさんが最初から友好的だったら、タマコだってヨルだって嫌いにならないのにね」

 もう今更だよねぇ。エドさんが言う通り、王都に戻ってからベルちゃんたちに会いに商会へ行けばいいもん。


 


 ◇◇◇


 「おはようございまーす」

 「おはよ、ホリィちゃん」

 「おう」

 私にサジさんとエドさんが挨拶を返してくれる。シオンさんはいつも顎を少し引くような、それで挨拶か?というような態度だ。

 今日も、もの言いたげに私を見ているねぇ。私から歩み寄る気は無いので、ベルちゃんたちに会いに行きたいと願う事はしないよ。交換条件にタマコとの触れ合いを求められても嫌だもの。


 今日はいよいよ王都に到着する予定。


 「タマコ、今日は馬車でいいの?」

 『今日は馬車でいいのよー』

 ヨルが通訳してくれる。

 さすがに王都近くでドラゴン姿は拙いだろうから良かった。


 エドさんとサジさん、ヨルとタマコと馬車に乗り込んでゆったりとお喋りをしているうちに、半日はあっという間に過ぎて昼休憩をし、夕方には王都に到着した。


 王都よ、私は帰ってきた。――って、留守にしたのは半月ちょいだけどね。それでも、”帰ってきた”という感じがして、この地に根付いてきたのかなぁと、少しうれしく思う。


 結局、シオンさんは私に何か言う事もなく、ただ眼で何かを訴えたままお別れとなった。私はちゃんと挨拶したよ?ムカついたからって、4日間の御者を務めて王都まで連れてきてくれた人だもん。それに対しても、シオンさんは顎をやや引いただけで何も言わなかった。失礼だよねー。

 エドさんとサジさんにはちゃんと挨拶したのに。やっぱり私はこの二人のおまけだと思われてたんだろうなぁ。モブ市民としてはそれでOKだけどさ。


 「前もって言っておきますけど、不憫だと思わないでくださいね?」

 私の発言でエドさんとサジさんが”可哀想に”モードに入りそうなので、最初に断っておく。


 「初めて人に嫌われました!新鮮な経験です。――不憫発言じゃないですからね?もと居た場所では人と関わることが出来なかったので、好かれるとか嫌われるとか縁が無かったんです。こっちに来て、エドさんとサジさんと友達になれて、マージカレアさんにはよくして貰って、リズ様には可愛がっていただいて、レーグルさんは……なんかちょっと違う気もするけど、一応、好意的ですし」

 うん、レーグルさんはここの枠に入れていいのかどうかちょっと迷った。


 「この世界ではずっと、人に好かれるばっかりだったんですよ。あー……ケビアの町で同郷の二人があーだこーだ言ってたのは、ま、八つ当たりの様なものだから置いておいて。私、生まれて初めて嫌われるっていうのを経験しました!」

 「あー……そう」

 「……それで?」


 「道中ではムカついたりもしましたけど、振り返ってみると結構新鮮な体験だったなぁと。これで、人付き合いレベルが一つ上がったと思いません?」

 まあ、そうそう嫌われたい訳ではないけれども。


 「ホリィちゃんが気にしていないならいいわ」

 「っつーか、最後は嫌ってるって言うよりも……」

 エドさんが言い難そうに口ごもる。


 「分かってます。タマコの姿を見て羨ましくなっちゃったんですよね。仕方ないです。タマコ、めちゃくちゃ格好良かったから」

 猫のタマコだってめちゃくちゃ可愛いんだけどねっ。それが分からないなんて、奴もまだまだよのう。


 「だからって触らせてあげませんよー。初めての経験で勉強になりましたけど、それはそれですから」


 「あー、うん。お前がそれでいいならいいんじゃね?」

 「ホリィちゃんですものね」


 サジさんはなにかと”ホリィちゃんだから”で思考停止するけど、それ、癖になっちゃってないかな?

 ま、いいか。



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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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