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第7話 【いのちだいじに】はスキルじゃないってよ

評価、ブックマークありがとうございます

初めて投稿した作品で、見知らぬ方々に読んでいただけただけでも有難く思うのに

多少なりとも気に入っていただけたかと思うと、本当に嬉しいです


これからも読んでいただけるよう努力いたします

どうぞ、よろしくお願いいたします

「えーと、堀さん?ごめん、気が付いてなくて。俺、こんな状況でやっぱテンパってるみたいでさぁ。悪気はなかったんだけど」


いえいえ、私がぬらりひょんで黒衣だからであって、佐伯君は悪くないです、多分、ちょっとしか。


「お詫びになるかどうかわかんないけど、俺のまねしていいよ?正直、最初に希望出したやつらばっかでーとか思ってたし」

「いえ、真似はいいですし、お詫びも要らないです。私はギフトよりも、食いっぱぐれのない職業の情報が欲しいので」


正直に伝えたのに、佐伯君は「はぁ?」みたいな顔をした。


「異世界で特別な力を使って何かをしたいって特にないので」

「そなの?じゃ何で異世界に…って、死ぬの怖かったから?」


おお、クラスメイトと雑談してるよ、私!

いや、これも必要な連絡事項に当たる?当たらないよね?雑談だよね?


「死ぬことよりも、その後ですかね、怖かったのは。あっちの管理者さんの話だと、来世でも他生の縁があるようだったので、それが嫌だったんです」

「……家族になんか問題が…って、悪い、無神経で。ゴメンナサイ」

「いえいえ、家族に問題はなかったです。大丈夫です。私の言い方が悪かったので、すみません」

佐伯君は眉をしかめ、唇を尖らせた。

「なんで敬語?俺、嫌われてる?怖がられてる?そりゃ、ほとんど喋った事ねぇけどクラスメイトっしょ、俺ら」


そう言われても。

今までのうっすい繋がりもここでおそらく切れるんだし、私、対人スキルもってないし。

困って曖昧に笑う私を見て、佐伯君は肩をすくめて”しょうがねぇなぁ”とでも言いたげに苦笑した。


「んじゃ、スキル貰わねぇの?」

「そうですねぇ…。手に職情報のほかに欲しいものと言っても……【安全第一】【いのちだいじに】をモットーとしてチート不要、ノーフラグ且つノーイベント希望なんですよ、私」


「いのちだいじにって、それ、スキルじゃねーしっ」

知ってるよ。私だってスキルとして言ったんじゃないんだから、そんなに笑わなくても。


佐伯君はお腹を抱えて笑っている。

ムッとする気持ちと『友達っぽい』雰囲気を喜ぶ気持ちとがないまぜになって、どんな顔していいのか分からない。

対人スキルゼロだからね。


「でもよ、貰っておいて損はねぇよ?俺だって強欲と言われるほど強請ったけどさー、それ全部必要かって言われたらそうじゃねーだろうし、あるものは使()()()()って選択肢があるっしょ?無いものは使()()()()んだぞ?」


ギフト不要の言葉に納得がいかない佐伯君の言葉に、管理者さんまで頷いている。


「能力があったら、使うか使わないか、するかしないかの選択肢が出来ちゃいますから困ります。出来ない事は『しない』一択です。迷わずに済みます」


ノーフラグ・ノーイベントだからね。一般人枠でよろしく。


「あんま話したことなかったけど、堀って結構面白い」


と…友達っぽいー。”堀”って呼ばれたよ!?

堀さんと呼ばれることすら稀なのに。コミュ強ってすごい。

黒衣頭巾の前垂れ外れてるんじゃないかな、今。

”面白い”の理由は分からないけど。


「俺、ソロのつもりだったけど、堀さえよかったら一緒に…」

「お断りしますっ」


すっごく嬉しいけど、お断りするしかない。

今のこの雰囲気は、一対一ゆえにだからね。集団の中に入ったら私はぬらりひょんであり、前垂れを降ろした黒衣だ。

集団に入ってまた佐伯君との関係が「友達っぽい」から「目に入らない人」に変化するのを目の当たりにしたくない。だったら、「友達っぽい」状態を思い出として私に下さいっ。


「そんな食い気味に断らんでも」

「いえっ、お気持ちは本当に嬉しかったです。ありがとうございます。でも、ソロでお願いします」


誘ってくれてうれしかったよ?本当だよ?


「そっか、じゃ、まぁ、お互いガンバローな。俺、見た目を変えないからあっちに行って見かけたら声かけてよ」

「ありがとうございます。お元気で」


結局、佐伯君の望んだギフトは『あちらに着いてからのお楽しみ』ということで何が貰えて何が貰えないのか分からないままだったが、彼は笑顔で旅立っていった。


今度こそ本当の「最後の一人」だ。


『面白い子ぉ。ちゃっかりしていて世渡り上手そ。それにいい子っぽい』

「そうですね…って、いきなり口調が砕けてません?」


二人きりになったとたんに管理者さんの言葉遣いが変わって驚く。


『あー、うん。第四界からの移住者を初めて迎えるからちょっと気張ってた。もう、みんな行っちゃったから楽ぅ』


ちょっと待って!

わたしが!まだ!ここにいる!

目の前にいるのに……やっぱり黒衣なのか!?話をしていても!?


焦った私の顔を見て管理者さんが吹きだした。

態度も思いっきり砕けてるよ。美人さんなのに可愛いとかどういうことだ。


『あなたの場合はね、”いらっしゃいませ”じゃなくて”お帰りなさい”だから』


なんですと?


聞くところによると、私は向こうの管理者さんが言っていた『次元嵐に巻き込まれ飛ばされた第二界人』なのだそうだ。

こちらの管理者さんがやっている他界からの移住者勧誘に、飛ばされた第二界人を探すと言う目的もあるらしい。

飛ばされた先で幸せに暮らしているなら無理に帰ってこなくてもよいが、生き辛いようなら帰還を促したいと言う。


その割にあちらの管理人さんは厭々送り出したように見えると言ったら、思い切り頷かれた。


『そうなのよぅ。他の界ではね、私が出向いて元第二界人を見つけて話を聞いて連れてきたり、あなたたちのように多人数の死亡時に説明に行って見つけたりもしてたんだけど、第四界のあの人は排他的でねぇ。今回も、ほんっとうに渋々だったのよぅ』



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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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