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第64話 サンストーン国へ行こう 2

初投稿のこのお話を2か月間毎日更新出来たのは読んで下さっている皆様のおかげです

ありがとうございますm(__)m

 ヨルとタマコ、エドさん、サジさん、レーグルさんと相乗りした馬車は意外にも快適だった。レーグルさんは再会した時のイカレっぷりが嘘のようにまともだ。サンストーン国のお国柄や風土、名産、美味しい食べ物やお勧めのスポットなど、こちらが引き込まれるほどに上手に語ってくれる。

 まともなレーグルさんって初めて見たけど、いつもこうなら人当たりの良い聖職者だと言われる事にも頷ける。ずっと、こうでありますように。


 後になってサジさんから聞いた話。


 レーグル様の狂信的な接し方ではホリィちゃんは逃げの一手だから、穏やかに、いつものレーグル様でいて下さい。彼女は滅多に人を嫌う事も避けることもないので、ホリィちゃんと共に行動したいのであれば、先ずその信奉するような態度は封印する。色々と訳ありなので踏み込み過ぎず一定の距離感を持つことを心がけるべきです。


 そう説教してくれたそうだ。

 要は今の態度では嫌われるよ、改めないと逃げるよ――って事ですね。うん、逃げたかったよ、切実に。

 サジさん、ありがとう!



 「お客さん達、昼休憩にするから降りてくれるかい?」


 馬車が止まり、御者さんの声がして私たちは馬車を降りた。馬車酔いは今回も無し。丈夫な三半規管をくれたエムダさんに改めて感謝する。


 さて、ヒール・ポーションを入れる隙を探さねば。リズ様には出来れば事後報告にしたいところだ。鑑定されて詰め寄られるに決まっている。肉食獣なリズ様に詰め寄られるのは、出来れば人目が無いところでお願いしたい。


 初日の昼ごはんは王都でリズ様が調達してくれたお弁当。デラックス幕の内といった感がある豪華なお弁当だ。火をおこし調理したスープまで付いてきた。


 食べながら足に炎症を起こしているバイコーンのベルちゃんを見ると、大人しく水を飲み、飼葉を食べている。肉食だと鑑定では出ていたけど、草も食べるようだ。


 急いでお弁当を食べ終え、バイコーンたちの世話をしている御者さんに自分もお手伝いしたいと申し出るも、気性が荒いから慣れていない人には任せられないとにべもなく言われてしまった。


 「エドさん、どうしましょう?」

 「リズづてしかねーだろうなぁ」

 「ですかねー、やっぱ。ちょっと怖いけど行ってきます」


 優雅に食後のお茶を飲んでいるリズ様の周囲にはお付きの女性二人と男性一人。どうやって伝えようかと悩んでいたら、リズ様の方から私に声を掛けてくれた。


 「ホリィ、馬車の乗り心地は如何?」

 「とても快適です。ありがとうございます、リズ様」


 私はきっともの言いたげな顔をしていたんだろう。リズ様はお付きの人たちにそのまま待つように告げて私の傍まで来てくれた。


 「リズ様、バイコーンのベルちゃんなんですが、右前脚に筋肉の炎症が見えます。このまま放っておくと重症化して拙い事になるかもしれません」

 声が聞こえる範囲に人がいない事を確認して、リズ様に小声で伝える。

 「まあ、ホリィはあの子たちを鑑定したの?」

 「はい、初めて見る魔獣だったので興味本位だったんですが……」

 「ベルというのはどの子?」


 リズ様に問われ、私はリーダー格の子だと説明しながら指で示した。


 「魔獣に効くかどうか分からないんですが、ヒール・ウォーターを飲ませてもいいでしょうか?良ければ栄養剤も」

 「ありがとう、ホリィ。私はバイコーンの不調に気付かなかったわ。ヒール・ウォーター?と栄養剤を見せていただける?」

 「はい」


 差し出した薬瓶を鑑定するリズ様。


 「等級Sの初級ポーションと同じく等級Sの栄養剤、ですわね。これをバイコーンに?」

 「魔獣にあげるのは拙いでしょうか?」

 「いえ、そんなことは無いと思うけれど……」


 リズ様の鑑定眼でもこの薬が魔獣に効くかどうかは分からないようだ。


 「このまま悪化させるわけにはいきませんものね。駄目で元々……と言っては気を悪くさせるわね、ホリィ。薬代はお幾らかしら」

 「あ、代金は要りません」

 「ホリィ?」


 リズ様の目が釣りあがる。美人さんが凄むのは怖いよー。


 「魔獣に効くかどうかの試験薬として使ってみてください。アズール商会の契約魔獣をテストに使って申し訳ないですが、検証できれば嬉しいです」

 「私は商人ですからね、商品には対価が必要だと、そう思っていますのよ?」

 「おお、鑑定士さんだというだけではなく商人さんですか、さすが副会頭さんですねぇ。旦那様に惚れこんでの商会入りという噂は本当ですか?」


 わくわく。上位貴族の令嬢と大きな商家とはいえ市井住まいの平民の恋物語……ロマンチックだよねぇ。リズ様の方が惚れこんで押せ押せだったというのは、外面手弱女、内面野獣系だと知った今ではとても納得できる話だ。


 リズ様は一瞬頬を染めたが、すぐ平静な顔に戻ってため息をついた。


 「不意打ちはお止しになって下さいな。惚気が聞きたいというのなら一晩中だって聞かせて差し上げますわ。私が言っているのは対価が必要だという事でしてよ」


 「初めて会った時のエドさんにも”見返り無しに赤の他人に食料を差し出そうとするな”って言われました。相互扶助の精神が根付いているんですねぇ」


 「相互扶助……いえ、そうじゃないわ、ホリィ。あなたは一体どんな育ちをしているの。もう少し、警戒心をお持ちなさい。安易に施しを与え続けていると、今に身ぐるみ剥がされて売り飛ばされます事よ!?」


 「あはは。それ、エドさんにもしょっちゅう言われました。警戒心をもてー、世の中には悪い奴らがいるんだーって。リズ様とエドさんって似てるんですねぇ」


 付き合いも長いようだし親密そうだし、仲がいいと性格も似てくるのかな。


 「ホリィ、私とエドが似ているかどうかといえば全く似ていないと思いますわ。あなたを前にすると小言を言いたくなる人間はきっととても大勢いることでしょう。年齢性別性格に関わらず、ですわよ」


 リズ様がため息をつく。

 私を心配して小言が出る人は大勢いるって、それってみんなが親切だってことだよねー。

 私がそう言うと、リズ様のため息がさらに深くなってしまった。


 大丈夫、警戒心は持ちますよー、てか持ってますよー。


 そう言っても信じてもらえないんだろうなぁ……。

 オルダに来て4か月、友人はエドさんとサジさんだけ。別格でヨルとタマコ。知人枠でレーグルさんとマージカレアさんとリズ様とあとは町の人と商会の人が少し。残りはせいぜい顔見知りだというコミュ障かつ人見知りの私が誰彼なくサービスをするわけがないじゃないか。


 火事の時は緊急事態だったし、火傷の女性の件は人命救助。どちらも対価云々の話じゃない。ぬらりひょんのブレスレットのおかげで誰にも知られていないのだし。


 ――と、自分で考えていて気付いた。

 警戒心があるのは大前提だけれど、基本的に人と関わることが苦手なのは変わらないのだなぁ……と。



読んで下さったあなたに感謝を

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
― 新着の感想 ―
[一言] 更新2か月おめでとうございます! これからも面白い物語を楽しみにしています。 お体に気を付けて頑張ってください!
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