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第63話 サンストーン国へ行こう 1

魔獣に関しては、この話独自の特性や習性を以って表しております。

この魔獣はこうじゃない、と思われるかもしれませんがご了承ください。

 手足が生えてトカゲになったヨルは、1時間もすると元気になった。


 『ヨルは元気なのよー』

 うんうん、よかったね。でも、一体何事なのよ、これ。

 エドさんも、帰ってきたサジさんとレーグルさんも、こんな事例は聞いたことが無いという。ただし、魔獣の生態が知られていない以上ヨルの変化が奇態だとも言い切れないということも口にする。

 私はヨルが元気になってくれたなら蛇でもトカゲでも、なんならカメでもイグアナでもいいけどさー、不思議だよねぇ。


 「お騒がせしました。何がなんだか分からないけど、理由も原因も不明なのは魔獣だから仕方ないってことですよね?私はヨルが元気ならそれで問題ないんで、深く考えない事にします」

 魔獣がいる世界に生きている彼らが知らないんだ。私が考えてもしょうがない。


 「考えても分からんもんは分からんからなぁ」

 エドさんも同意見のようだ。


 その後、部屋に戻った私はヨルに鑑定をかけてみた。焦って思いつかなかったけど、ヨルが異変を訴えたときにも鑑定していれば対処方法が分かったのではないかと思う。いまさら思いついても後の祭りだけれど。


 ―ヨル―


 ブラックサラマンダー(幼体)

 年齢 : 1

 性別 : 雌


 LV : 4

 HP : 9135/10350

 MP : 27100/27100


 ホリィの従魔


 花の蜜や果実を好む

 食用に非ず


 スキル

 【耐火(Lv1)】【火魔法(Lv1)】【ファイアブレス(Lv1)】

 ―――――


 何も言うまい。私は見なかった。ヨルが黒曜蛇からブラックサラマンダーに進化?変化?したことも、火系のスキルが生えていたことも私は知らない。HPとMPが爆上がりしていたなんて知りもしない。うん、何も見ていません。


 「ヨルはヨルだからなんでもいいやー」

 『ホリィはホリィだからなんでもいいのよー』

 「ねー。タマコだって蛇だったり猫だったりするもん。でも、タマコはタマコだからおっけー」

 『おっけー』

 タマコも異存はないのか、私の膝の上でヨルと寄り添って喉を鳴らしている。可愛いなぁ、もう。


 でも、ちょっとマテ。

 ブラックサラマンダー(幼体)ってことはブラックサラマンダー(成体)になるってことで、黒曜蛇は大人でもあのサイズって聞いたけど、ブラックサラマンダーってのはひょっとして大きくなるんじゃないか?


 魔獣図鑑とか売ってないだろうか……。


 ◇◇◇


 天気は上々、荷物もバッチリ。中々の旅日和です。

 アズール商会の馬車は中々に立派で、足が四本の代わりに立派な角が二本あるお馬さんの4頭立て。この子たちも魔獣かな?駅馬車ほど大きくないけれど、その代わりに3台もある。

 リズ様がお付きの人たちと乗る馬車。私たち――残念ながらレーグルさんも含む――の乗る馬車。リズ様の着替えやら日用品やらがぎっしり詰め込まれた三台目の馬車。


 食料なども積まれているのだろうけど、4日間の道中なのだからそれほど大量じゃあるまい。リズ様は元お貴族様だから、必要な物が山ほどあるに違いない。私は平民で良かった。TPOに合わせた着替えやら装飾品やら面倒としか言いようがない。


 リズ様はそれが当たり前の状態で育ったんだろうなぁ。


 さて、お馬さんたちを鑑定してみますか。角が二本は長さ30センチくらいかなー。漆黒の体は引き締まっていて体高は2メートル半ってところだろう。格好いいので目に嬉しい。


 私たちが乗る馬車の子は、と。【鑑定】


 ―モノ―


 バイコーン

 年齢 : 7

 性別 : 雄


 LV : 8

 HP : 19135/19350

 MP : 10100/10100


 アズール商会契約魔獣

 肉食

 食用可


 スキル

 【忠誠】【風魔法(Lv2)】【突進】【刺突】

 ―――――


 バイコーンのモノ君ね。おお、肉食かぁ……で、食用可なんだ。日本でも馬肉食べるもんね。へぇ、忠誠なんて言うスキルがあるんだ。スキルを見ると魔法も使えるけど、肉弾戦派っぽいかな。

 お、こっちの子は女の子なんだねー。おお、この男の子は風魔法がLv.4もある。凄いなー。

 次々と鑑定眼スキルでバイコーンを確認していくうちに、一頭だけスキルの後に別の表記のあるバイコーンがいた。アズーロ商会所属バイコーン総取締などと仰々しい特記が付いたベルと言う名のリーダー格の女の子なんだけど……。

 

 あちゃー。

 

 「ホリィ、そろそろ出立だとよ」

 「はーい。ねーねー、エドさん、あの先頭にいるバイコーンなんだけども」

 「ん?」

 私が指さした、リズ様が乗る馬車の右前列にいるバイコーンをエドさんも見てくれた。


 「あの子、右前脚の筋肉が炎症を起こしてます」


 鑑定には正確には【病症:右前脚コズミ 軽傷】と出た。コズミとは何ぞや?と、注視していると病症の表記部分にコズミについて詳細が出てきた。この機能は知らなかったが使えると便利そうだ。


 コズミ:筋炎や筋肉痛 

     軽傷時 軽い痛み

     重症時 血液性状の異常に至る場合がある。歩行困難。


 拙いよね。馬は重すぎて4本足のうちの一本でも怪我をしたら自重を支えられなくなると聞いたことがある。骨折でもしようものなら殺処分になることが多いとも聞いた。それがバイコーンにも当てはまるかどうかは分からないけれど、炎症が良い事なわけはない。


 「まだ、軽い症状だけど、放っておくと重症化して歩行困難になるかも。治してあげたいけど、私のヒールってば目立つからどうしようかと思いまして」


 エドさん、サジさんしかいないなら問題は無いが、今ここにはリズ様やレーグルさん、リズ様のお付きの人たちや御者さん達もいる。その人たちの前で治癒魔法を使いたくはない。いきなりシャボン玉が現れたら騒ぎになるだろうし、火事現場で火傷の女性を治したのが私だとバレてしまいそうだ。


 「あー、俺からじゃ異常は見当たらねーけど、お前が見たんならそうなんだろうな。野生が強い生き物は自分の不調を隠すもんだし。けど、今すぐ、どうこうじゃねぇな?」

 「うん、軽傷って出てるから、無理をさせなければ大丈夫だと思う」


 エドさんはちょっと考えてから言った。


 「今回は無理するような旅じゃねぇからその辺は大丈夫だ。お前、ヒール・ポーション持ってんだろ?昼休憩の時に、バイコーンの水桶ん中に入れちまえ」

 「おお、それはいいですね!そうします」


 お昼休憩まで頑張ってね、ベルちゃん。





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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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