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第62話 ヨルの異変

誤字報告ありがとうございますm(__)m

本当に助かっております

 アズール商会に突撃して、リズ様にレーグルさんの隣国同行を取りやめてもらうように頼んだが

 「あの人は役に立つから」

 と、にっこり笑われて終わり。

 エドさんが抗議に来なかったところを見ると、リズ様が意思を変えることは無いと分かっていたんだろう。サジさんはレーグルさんのこと好きだからね、抗議の気持ちすらなかった。


 私だって、レーグルさんが私を崇めるのをやめてくれさえすれば同行に否やは無いんだ。そっち方面をリズ様から説得してもらえないかなぁ。


 レーグルさんからはストレスかけられまくりだし、リズ様にお願いを蹴飛ばされて鬱憤も溜まっている。パーッと気晴らししたいところだけど、したいことも無し。


 「あ、あのっ、ホリィさん」

 商会を出て行く当てもなくブラブラしていると、レーグルさんとの再会時に割って入ってきたローマンさんが声を掛けてきた。まさか、ずっと付けていた訳じゃないだろうな。


 「先ほどは大丈夫でしたか?」

 「ローマンさん、でしたよね?はい、大丈夫です。あの人はちょっと思い込みは激しいですけど、悪い人じゃないんです。前にいた町で知り合って……って、これはさっきも言いましたっけ」

 面倒くさいから”悪い人じゃない”と言い切ってしまったけれど、いい人かどうかは分からない。サジさんのお姉さんとの話を聞く限りでは人格者っぽいと思うけど、あの私を崇拝する感じが偏執的に思えて仕方ない。

 率直に言えば面倒くさい人、関わり合いになりたくない人だ。しかし、それをローマンさんに言っても仕方ない。


 「でも、凄く困ってらっしゃいましたよね。僕で助けになれたら……」

 「確かに困らされてはいますけど、リズ様のお墨付きの人なんですよ?」

 「副会頭の――お墨付きですか」


 おお、リズ様は副会頭だったのか。知らなかった。鑑定士というだけじゃないんだね。


 「はい。なのでご心配なく。お気遣いありがとうございました」


 一礼して踵を返そうとしたが、ローマンさんに腕を掴まれた。あなたにも困らされてますよ、今現在。レーグルさんの次に関わり合いたくない人だ。


 「お……お茶でもご一緒に」

 『ホリィ、ヨル、なんか変』

 「え?」

 「ですから、お茶を」

 『熱いのー。体全部がじんじんするのー』

 「そ……そんな、どうしたの?」

 「え、お茶、ですよ?どうしたって……」

 『ムズムズして熱くて体が壊れそう。ホリィ、ヨル、変なのー』

 「どうしよう、どうしたんだろう。しっかりして!」

 「しっかり……はしていますが、あの、ホリィさん?ホリィさんこそどうしたんですか?」

 『ホリィ……』

 「だ、大丈夫、私が絶対何とかするから!」


 ヨルは熱いというけれど、その体は冷え切っている。温めなきゃ……って違う、ヨルの体は元々冷たかった。落ち着け、私。

 ヒールは効くだろうか、キュアの方が必要か。どちらにしろ、大通りで出来ることじゃない。宿に戻ってエドさんとサジさんにも見てもらって……。


 「ホリィさん?」

 「あー、もう、邪魔しないでください!今、大変なんです!早くエドさんの所に戻らないと」


 言っている段階で(八つ当たりだよな―ー)と考える自分もいたけれど、今はそれどころじゃない。


 タマコとヨルを抱き、私は一目散に宿に向かった。残されたローマンさんがどんな顔をしていても知ったことか。頭がおかしいとでも何とでも思っておくれ。



 ◇◇◇


 「ヨルが?」

 「そうなんです。熱くてじんじんしてムズムズして体が壊れそうって……。ヒールかけても大丈夫でしょうか?」


 宿に戻りエドさんの部屋に直行してヨルの事を説明するも、エドさんも症状に心当たりがないそうだ。魔獣の生態はあまり知られていないし、テイマーも少なく文献は無いに等しいと。

 サジさんはレーグルさんと一緒に旅の為の買い物に出かけているらしい。


 タマコはヨルが心配なのか、舌を這わせている。優しい子だ。


 『ホリィ……』

 「ヨル、ヒールかけるよ?いい?」

 『お願い、ホリィ』


 ヨルからのOKが出た。

 

 【ヒール】

 唱えるといつもより濃い水色のシャボン玉がヨルを包む。じわじわと吸い込まれるように消えていくシャボン玉。ヨルに変化は……。


 「どう?ヨル、大丈夫?」

 『熱いのー』

 「まだ熱いのね。【ヒール】」


 本当にヒールでいいんだろうか。ああ、どうしてこの世界に獣医がいないの!?魔獣がいるんだから魔獣医がいたっていいじゃないか!ヨルは何の病気なんだろう、キュア・ウォーターを飲ませようか。


 次にキュアをかけ、またヒールをかけていくうちにヨルの肌が変質してきた。艶々のウロコのあちこちにひびが入り、見る間にその場所が裂けていく。

 ヨルはもう声も発しない。


 「ヨルっヨルっヨルっ」

 大丈夫かとは聞けない。体が裂けて大丈夫な訳がない。

 泣いている場合じゃないのに涙があふれてきて視界がぼやけてしまう。


 【ヒール】【ヒール】【ヒール】


 裂けた部分が修復するように願って何度もヒールを唱えるのに、ヨルの体はどんどん変化してしまう。


 「え……ヨル?ねぇ、ヨル、ヨルぅ」


 どうしてこんな事になったんだろう。


 「エドさん……ヨルが、ヨルが」

 「落ち着け、ホリィ」

 「だってヨルが……なんでこんな……」


 ヒールとキュアをかけ続け、何度も何度も名を呼んで助かって、助けたいと思ったヨル。


 何故なんだろう。


 裂けた部分から手足が生え、胴体がやや太くなり――その姿はどう見てもトカゲだった。



 ねぇ、蛇がトカゲになるってありなの?


読んで下さったあなたに感謝を

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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