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第61話 私は聖女じゃございません

ブクマが400を超えました(*´▽`*)

ありがとうございますm(__)m

 「エドさん、この人をどうにかしてください!」


 三歩下がって付いてくると言い張るレーグルさんの手を取って無理矢理に連行するような形で宿に戻り、エドさんの部屋へ突撃。


 剣の手入れをしていたエドさんはその手を止め、私とレーグルさんの顔を見てため息をついた。


 「拾ったところへ戻して来い」

 「捨て猫じゃないんだから!いや、戻せるのなら戻したいですよ。猫だったら戻しませんが。ああ、拾うなら猫が良かったー!」

 「お久しぶりにございます。エドヴィリアスタ様」


 私とエドさんの酷い会話を聞き流してレーグルさんが優雅な礼をした。この人、本当に空気とか雰囲気とかに頓着しない。教会の偉い人だったんだよね?こんなに周囲が見えていない人なのに、教会ではそれで良かったのだろうか。周りが見えていて敢えてこの態度だったら、神経の強度が私の100倍くらいありそうだ。私だって細かないのに。


 「サジさんは?」

 私も空気を読まずにエドさんに聞く。レーグルさんの事はエドさんに一任することに決めたので。

 「サジは買い出し。リズが丸ごと面倒を見てくれるっつったけど、それなりに準備は要るからな」

 ああ、サンストーン国行きの準備か。私も薬以外に何か用意するものはあったかな?

 「お前はいいだろ。薬の準備だけしておけば」


 「それにございます、ホリィさん。隣国に聖女が現れたと耳に入りましたが、真の聖女はホリィさん、あなたなのでございます。隣国の聖女とやらは偽物に違いございません」

 「……はい?」

 「貴方様が正しき聖女であることを周知すべく行動いたす所存にございます」

 「……はい?」


 レーグルさんの妄信は、一体どこへ向かっているんだろうか……。


 「あのですね、先ず、私は聖女じゃありません。それに、聖女って一人しかいちゃいけないんですか?この国にも隣国にも他の国にも、それぞれ聖女様がいたっていいじゃないですか」


 「お前、つまり、ホリィが一般市民やってんのに隣国で聖女が出たのが納得いかない、気に食わないと、そういうことかよ?」


 「そこ!?」

 「多分」

 「そもそも、何で私が聖女なんですか、レーグルさん」


 そうだよ、そもそも何を持って聖女というのか。キリスト教なんかだと神の恩寵を受け奇跡を起こした女性みたいな感じだったと思うけど、オルダでは――というか、レーグルさんの所属していた教会での聖女の定義を聞かせてもらおうか。


 「貴方は私を救ってくださいました」

 「それだけ!?」


 駄目だこの人。


 「洗脳されていた私の真実を見抜き、解放してくださった。キルタの子どもたちを救済し、親元に戻してくださった。高潔にして慈悲深く、神の加護を、大自然の加護をお持ちでいらっしゃる」

 

 は?

 ――神の加護というかエムダさんの力でチートバリバリですけど、大自然だか何だかわからないけどナートゥーラの申し子とか特記にありますけど……レーグルさんはそれが見えてるのだろうか。この人、鑑定眼スキルは持ってなかったよ?聖職者って看破とかそういう力があったりするの?怖い。


 高潔とか慈悲深いとか、誰の事を言っているのか分からない発言もあったけれど、確かに神の加護と言われそうなほどのスキルとステータスを持っているし、大自然=ナートゥーラだったら、その加護持ちだと言っても問題ないかもしれない。これは困った。モブ市民を全うするためには聖職者から距離を取らなきゃならないのかもしれない。


 エムダさんの加護や大自然ナートゥーラの加護を持つものが聖女だと定義されているのなら私は彼らにとっては聖女かもしれない。しかし、エムダさんの力でスキルを持っている人間はあと14人いる。彼らも聖人・聖女になるのだろうか?私を含め、平和な日本の高校生だというだけなんだけど。


 レーグルさんに何て言えばいいんだろうと考えていると顔が引きつってくるようだ。


 「エドさん、こんな時、どんな顔していればいいのか分からない」

 「笑ってればいいんじゃね?」


 笑えるかーっ!って、元ネタ知らずによくその台詞が出てくるな、おい。



 「エド、ただいまー……って、なに、この混沌とした空気」

 買い物から戻ってきたサジさんが、部屋を見回して棒立ちになって言う。


 「ホリィが拾ってきた」

 エドさんがレーグルさんを指して言う。

 酷いっ。私だって拾うなら猫とかヨルとかタマコがいいに決まってるのに。


 「レーグル様、お久しぶりです。お元気なご様子で嬉しいです」

 サジさんにとってはお姉さんの心を救ってくれた恩人だもんね。裁判の結果は、この人がここにいるという時点で安心できるものだったって事だ。良かったね、サジさん。レーグルさんは……個人的には私に関わらないでいてくれればどうでもいいよ。


 「あの時は迷惑を掛けました。あなたも元気そうで何よりですよ、サジ」

 サジさんが嬉しそうに笑う。


 「キルタの事はどうなったんですか?」

 気遣いのサジさんが四人分のお茶を用意してくれて、私たちはテーブルに着いた。エドさんと話していた時は私とレーグルさんは立ったままだったのだ。


 「子供たちは無事に親元に戻りました。暫くは監視の目もありますが罪に問われることはありません。集められた金品は元の所に戻し、使い込まれた分は私の財から補てんすることで刑の代わりとされることに。エドヴィリアスタ様への償いは、まだこれからですが……」

 「いらねー」

 「そう仰るかとは思っておりました」


 結局は被疑者死亡だもんなぁ。

 ただ、黒幕はサンダリにしても、レーグルさんの刑は軽い気がする。こちらの法律に疎いから日本人の感覚として。


 「教会に席は無いものと思っておりましたが、どういう訳か慰留されまして。元の地位からは下げられましたが、こんな私でも使い道があるようです」


 うん、それが分からん。私の前にいるレーグルさんはとても残念な人なんだけど、本当に教会が引き留める程に有能な人なんだろうか。


 「エドヴィリアスタ様が王都に出たということはサラクのギルドで聞きました。王都ならばリザベツ様に誼を繋がれるであろうと推測し、四日ほど前にアズーロ商会へ向かいましたら、偶然にも商会から出ていらしたホリィ様をお見掛けいたしましてこの宿を突き止めた次第でございます」


 ストーカーだ!ストーカーがいるぞー!

 この宿を突き止めたって……ぬらりひょんのブレスレットが――あ、火事の日の帰り道、付け忘れていたことがあったな。たまたま付け忘れた日にたまたまレーグルさんが商会に向かっていただなんて間の悪いことだ。


 「リザベツ様にもご挨拶をさせていただきまして、隣国への同行をお許しいただきました」

 「は!?」


 聞いてないよ、リズ様。




 ちなみに薬瓶は使いまわしが基本で、煮沸消毒しているそうだ。除菌の観念があって喜ばしいと思う。

 なので、複製しても問題なしとのお墨付きをもらった。ただし、非常識にならない範囲でというお小言も貰った。


読んで下さったあなたに感謝を

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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