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第53話 ヤミィダンジョン 1

誤字報告ありがとうございますm(__)m

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 サジさんと話した後、エドさんの所へ行って癇癪を起こして申し訳なかったと謝った。

 エドさんも行き過ぎた心配を謝ってくれ、そこから暫く「私が悪い」「いや俺が」「いえいえ、私こそ」「それでも俺が」と不毛な会話が続いたけど、サジさんがぶった切ってくれて終了。


 「明日、ダンジョンへ行こうと思いますが、エドさんとサジさんに不都合が無ければ付き添ってもらえませんか?」

 「あら、早速なのね。私は大丈夫よ」

 「おう、いいぞ」


 食材の宝庫であるダンジョンは名をヤミィと言うそうだ。そのまんまやがな――と思ったが”ヤミィ”に美味しいという意味を見つけるのは同郷の彼らだけなので、エドさんとサジさんには突っ込みを入れない。


 「認識阻害を付与したマントと、スキル【隠密】を使ってどこまで出来るのか確認したいので、問題なければ手出し無用でお願いします」


 そう、明日の目的は採取よりもこっち。一人で採取の為にダンジョンに潜るのが無理なら、他の採取場所を探すか購入を検討しなくてはならない。安全第一なので、無理してまでダンジョン産の薬草にはこだわらない。

 正直、少々等級の落ちた薬草でもSクラスのお薬が出来るからね。

 何か言いたげなエドさんは、それでも言葉を飲み込んだ。友達としての適切な距離だと思う。


 ◇◇◇


 ダンジョンまでの乗合馬車は、さすがに私たちが乗ってきた駅馬車の様な快適さは無かった。そりゃそうだ、値段が違い過ぎる。あちらは半月とはいえ金貨1枚と小金貨5枚、こちらは銀貨1枚だ。この馬車には私たちを含めて10人が乗っている。如何にも冒険者然とした格好のいかつい男性もいれば、ちょっとお買い物に行くのと言った感じの町着を着ている女性もいる。10を超えたくらいの少年もいる。

 馬車の面々を見て、これなら私でも大丈夫かな、と思う。


 そしてダンジョンに入るのに銀貨3枚かかった。なんで?アミューズメントパークか何かなの?


 「管理費だよ。このダンジョンは危険性が少なく、得るものは多い。国の管理下で冒険者ギルドが保全と制御を担当してる」

 「銀貨3枚以下の成果はあり得ないってことですね」

 「いや、あるぞ?薬草が見分けられないとか、収穫した物が未熟だとか熟し過ぎて売れないとかは聞く」

 「何度か通うなり勉強してからくるなりすれば問題ないわよねぇ。あと、運悪く罠に引っかかったり、魔獣に襲われたりとか?」

 「比較的安全って聞きましたけど、やっぱり罠とか魔獣とかの危険はあるんですか?」

 「難易度が低くてもダンジョンだからな」


 そうだよね、ダンジョンだもんねー。アミューズメントパークじゃないよね。それとも罠やら魔獣やらがアトラクション?そんな遊園地こわっ。


 「あとは対人トラブルか。浅い階層では衆目を気にして小競り合いくらいだが、深く潜るとガチのいざこざもある」


 ダンジョンには向かないかもなぁ、私。トラブル嫌い。安全第一。王都に長く住むのなら貸し農園みたいなものを探したい。庭の広い貸家でもいい。薬が順調に売れて資金の確保が出来、オルダでなら私の手で植物を育てられるという前提を先ずどうにかしないといけないが。


 「フロア1なら大したことはねーよ。冒険者より商人やら料理人やらが多い位だ」


 銀貨3枚である程度の量の売り物やら料理の材料やらが手に入るのなら、育てるよりもお得だろう。薬草の質がいいと言っていたし、果物なども上等なのかもしれない。


 岩場をくりぬいたような洞窟を奥に進むと、そこは草原だった。


 「なんで、岩窟の奥に草原があるんです?」

 「ダンジョンだから」


 うーん、そうなんだろうけどねー。ラノベあるあるだと思うけど、実際にこの目で見るとシュールだ。


 「ここからは一人で……じゃない、ヨルとタマコと行きます」

 一人でと言いかけたら肩に乗っていたヨルが抗議するように耳を噛んだので慌てて言い直した。

 今日はヨルもタマコも一緒に来たのだ。タマコは猫姿だ。アイトワラス本来の大きな蛇の状態じゃ馬車に乗れないし、ダンジョン内にいる冒険者に魔獣として攻撃されちゃうかもしれないもん。


 「基本的には見守るけど、何かあったら手を出すわよ?」

 サジさんの言葉に頷く。一人でこなせないようなら最初で最後となるであろうダンジョンでの採取だ。異世界あるあるのダンジョンを堪能しよう。安全第一でね。


 認識阻害を付与したマントを付け、隠密と小声で唱える。声に出さなくてもいいんだけど、それじゃエドさんとサジさんにわからないから、敢えて口に出してみた。


 さらにぬらりひょんブレスレットを付ける。

 エドさんとサジさんの驚愕の表情からすると、効果はありそうだ。


 「ヨル、タマコ、行くよ」

 『いくよー』


 探知魔法でタタラを探してみる。等級指定をしないのは、もしかしたらA級以上のものがあるかもしれないからだ。

 探知にかかった物を片っ端から鑑定してみる。等級A、等級B、等級A、等級A、等級S……あった!やっぱりSクラスの素材がある!

 

 ―タタラー

 風邪薬の材料

 食用:可

 等級:S


 やったね!


 だが、ここでふと我に返る。等級A~Bの素材で作って、上級風邪薬が出来ちゃったよね?等級Sの素材で作ったらどうなる?私の鑑定眼では【風邪薬】としか出ないが、リズ様の鑑定眼にかかったら詳しい情報が出ちゃう。

 アズーロ商会に持ち込んだら、きっとリズ様が鑑定するだろう。上級風邪薬のままならいいけど、さらに上、例えば特級風邪薬とかになっちゃったらどうしよう。

 等級Sの素材は自分たち用の顆粒薬にするか、素材のままギルドに卸すかだな。


 サラクの森より種類が豊富で、群生と言っていいほどの生え方をしている薬草を私は夢中になって採取した。周囲を見渡してぬらりひょんの効果を確信したけれど、さすがにインベントリをホイホイ使う訳にはいかないので、容量拡張と鮮度維持を付与した採取袋に入れていく。


 拡張した採取袋がタタラの根でいっぱいになったところで、立ち上がって腰を伸ばした。草取りの姿勢って長時間続けていると結構つらい。


 さて、お次の素材は、と振り返ると何故か足元に角のある兎が倒れていて、その兎を覆うようにタマコが横になっている。

 どうした?


 『ホリィが美味しそうだから食べに来たのよー』

 「はい?」

 『突進してきてホリィの壁にぶつかって、キューっとなっちゃったのよ』


 キューっとって、それはあれか、ご臨終的な。


 


 

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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