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第5話 第二界の狭間と管理者

目を閉じていても痛い程だった光が収まったことを感じて目を開けると、そこには二十代後半くらいの女性が立っていた。


『ようこそ、第二界へ。私はこの界の管理者です』


んん?

目を閉じて開いたら、もう第二界なの?


「おおー。綺麗なお姉さん」

久保田君が言った。余裕だな。


だが、確かに美人さんだ。真っ白なホルターネックのイブニングドレス?のような服を着て、キラキラと光るレースのケープをまとっているその美人さん――第二界管理者さんは、その白い肌も波打つ黒髪も顔の造作もTVや映画などですら一度もお目にかかった事がないほど美しかった。


あっちの管理者さんも美形だったのかなぁ。魅力的なややハスキーな声のイメージからすると美魔女系じゃないだろうか。目の保養に一目でいいから見たかった。


「あー、初めまして?佐伯と言います。ここはもう第二界ってことでいいんですね?」

『初めまして。ここは第二界の狭間です。あなた方は第四界の狭間からこちらに送られてきました』

「あなたが俺たちをここに呼んだという認識で?」

『間違いありません』

「移住する人間にギフトをくれるというのも?」

『はい、希望を全て叶えられるとは限りませんが出来るだけお気持ちに沿うように尽力いたしましょう』


(やったっ。今度こそチートだ!)(何貰う?何貰う?)


佐伯君が管理者さんと話している後ろでクラスメイト達が小声で話している。

やっぱり皆さんチート希望なのね。

15~6才の子供が手に余る力を貰っても困る…と考える人はいないようだ。

確かに、全く知らぬ自分たちの常識がどこまで通るか分からない世界への移住だもの、力はないよりあったほうがいいとは思う。しかし、大きな力を扱えるだけの器が私たちにあるのだろうか。


小心者の私はそう考えるのだ。


(ガチャがいいな、俺)(テイマーか召喚士でモフモフ天国。あるいは料理スキルで日本食無双)(万物創造じゃね?)(魅了かなー。お偉い人だと面倒くさいから、平民のお金持ち狙いで)(錬金術だろ、やっぱ。あ、異世界通販も捨てがたい)


お…おぅ。

そういう世界だといいね。


「さっきまで俺たちがいた世界が第四界ですか。えー、その第四界の人からは第二界は俺たちの世界で言うところの”ファンタジー”の世界だと言われたのですが、実際、どういった世界なのでしょうか?」


『第二界に住みし者たちにとっては現実ですので”空想世界”と言われましても困るのですが、そうですね、第四界との差異を申し上げますと、先ず動力が違います。電気やガスなどは使われておりません。

魔法や魔道具などもありますが、基本的に人力で水力・風力はあります。それらも電気に変換するのではなく、水車や風車などの原動力です』


(魔法キターっ!)(魔法使いになる?)(人力メインの世界で魔法ナシはうちらには厳しいよ、やっぱ)


魔法来たか。

異世界転生・転移あるあるなのか。

しかし、第四界の管理者さんよりこっちの管理者さんの方が丁寧だなー。受け入れ側だから当たり前と言えば当たり前なのかもだけど。


「魔法は俺たちのように異世界から移住した者にも使えますか?」

『界に関わらず素質があれば使えます。第二界の住民で魔法の素養があるのは三割程度、実際に使える人は一割ほどです』

「素質をギフトとして貰うことは可能でしょうか」


(おおーっ。魔法使える人が一割ってことは、魔法の素質貰えばそれでもう安泰じゃん)(だな。でも、ガチャも捨てがたい)(モフモフ…)(いやいや、魔法を使えるユニークスキルとかさー)


『移住者さんたちには、魔法素養のある新しい体と第二界で一般的な服、言語や読み書き、一般常識などの基礎知識、身分証明書、一カ月程度暮らせるだけの金銭と当座必要な日用品、5日分の携帯食と飲料をお渡しします。その上で希望するギフトを第二界の調和が乱れない範囲で贈ります』


一か月分のお金か。

お金が無くなる前に生活基盤を作れってことなのか。無理じゃね?未成年(こども)だぞ、私たち。

それに、身分証ってナニ。第四界出身日本人とか書かれてるの?異世界からやってきましたーって言ってもいいもんなのか。


そう考えていると、第二界管理者さんがチラとこっちを見たような気がした。

私、ぬらりひょんなのに。


『この世界では平民は十歳位から店奉公や職人見習い・冒険者見習いなどで家を出ることが少なくありません。成人は十五歳なので、皆さんはちょうど成人したてですね。

身分は辺境にかつてはあって今はない村の出身として作ります。架空の村なので同郷出身者と出会うこともありませんし、辺境の出であるということで、振る舞いに多少の問題があっても風習が違うからと誤魔化すことが可能かと思います』


…あのー、心読めるんですかね?顔に出てましたかね?


「あのー、新しい体って、見た目を好みにできたりします?どうせなら美人でスタイルいいほうがいいんですけど」

小野寺さんが聞いた。

「それなら俺、マッチョがいい!筋トレしても筋肉つかないのコンプレックスだったから」

「見た目どうこうより、身体能力が高い方がいいんじゃないの?足が速いとか力が強いとか」

「どっちもってのはダメかね?見た目も性能もいいほうがいいし」

「ピンクブロンド……」

「それ、フラグ立ってるし。残念ヒロイン臭しかないし。悪役令嬢役の転生者にざまぁされちゃうし」


『現在の住民との差異が大きくならない程度の優遇することは可能です。匙加減を私に任せてもらうことにはなりますが、希望をお聞きいたします』


みんな凄いね。

私は平均的な容姿と能力でノーフラグ、ノーイベント安全第一・いのちだいじに生きていくから、みんなは冒険したり大ロマンスしたりチートで俺TUEEEしたりして下さい。





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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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