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第47話 王都へ行こう 4 ―ガチャ―

昨日UPしました46話の最後のホリィのセリフがしっくりこなかったので、修正しました。

話しの流れに変わりは有りませんm(__)m

 店の外に出て、ホッと息をつく。

 あーあ、テンパっていたとはいえ、またやっちゃったな。彼らも気付いたよね、私が元同級生の誰かだってことを。

 まぁ、超美人さんになっているから、私が誰なのかは分かるまい。


 「アホか、一人でやってきた女はお前だけなんだろうが」

 「確かに!」


 いやいや、容姿は変わっている可能性があるんだから、エドさんたちが同郷と思うかも……


 「ちなみに男二人と女一人の組み合わせはさっきの子たちだけなのよね?」

 「そうだった!」


 つまり、私の正体はバレバレだということだ。


 「ま、いいです。もう会う事もないでしょうし」

 『ホリィがいいならヨルもいいやー』


 実際、たまたま見かけて興味本位で会話の盗み聞きをしたのだから、これ以上の接点は無いだろう。これ以上も以下もなく、もともと関係ない人たちだ。それに、この町は王都への旅程でたまたま止まった町だから、再びここに来ることもない。


 「さっきの子たち、よっぽどここでの生活が苦痛なのね」

 「え?楽しそうに話してましたよ?」

 「馬鹿ね、ホリィちゃん。現状に満足している人間は、他人をあんな風に悪しざまに言ったりしないわ」


 そう言うものだろうか。良く分からない。


 「だろうな。ここで苦労しているから自分より下の存在を作って、それよりはマシだと自分を慰めてんだろうよ」


 見下すのに丁度いいのが私だったって事か。成程。


 「けど、ざまぁねえな。ホリィはあいつらに惨めに思われるような筋合いはねぇ。なんなら自分の力を自慢してやっても良かった位だ」

 「いやいや、それはちょっと。大体、あの人たちも私に聞かせようとしていったんじゃなくて、自分たちを慰めてただけなんでしょう?意気込んでこちらに来たのに思うようにいかなくて、ちょっとやさぐれているだけですよ」


 自分が貰ったスキルを”使えない”という位だからね。まだ半月ちょっとなんだし、自棄にならずにこの世界に根付けるといいんだけど。


 「話を聞いてると”レベルが低いから”使えねぇんだろ?だったらレベルを上げりゃいいじゃねーか。それをせずにグチグチ言ってる奴はボンクラだろ」

 「まあ、そうなんですけどねー。こっちに来て半月ちょっとですし、まだまだこれからですよ。スキルが思ったようにならなくて気落ちしているだけで、そこを超えたら努力するんじゃないかなー」


 努力せずに愚痴を言っているだけならそれまでだし、私には関係のない事だ。友情に厚いこの二人に比べたら、元同級生たちのことは取るに足りない事だ。


 「それよりお買い物行きましょう!」


 彼らの会話に出てきたスキルや、元の世界の話などをしながら私たちは町を散策した。



 買い物と市場調査を済ませて宿に戻ると、何故かエドさんとサジさんが私の部屋に付いてきた。


 「なぁ、ガチャってのやって見せてくんねぇ?」

 「私も気になってたのよー。話を聞いた限りでは景品が出てくる遊びなんでしょう?」


 買い物中に説明したガチャに興味を引かれたようだ。


 「いいですよー。私も興味ありましたし。何が出てくるか怖くて試したことが無かったんですよ」

 「そ……そうね、ホリィちゃんだものね」

 「だ…だな、何が出てくるか――心構えが必要だな」


 大袈裟だなー、二人とも。”ぬののふく”とか”ひのきのぼう”とかだよ?元ネタ分からないと受けないと思うけど、と思いながらガチャスキルを習得。何回やっても慣れないな、このゾワゾワ。あ、服が出るならパンツも出ないかな?男性陣の前でパンツに出てこられると嫌なので、後日にでも。複製をしているから数はあるけど、バリエーションが無いのは乙女として寂しい。


 部屋には小さなラウンドテーブルと椅子が一脚しかなかったので、失礼して私が座らせてもらい、二人は向かいからのぞき込むような体勢を取っている。ヨルは安定の位置、私の肩の上だ。


 「いきますよ?【ガチャ】」


 唱えた途端に、何も乗ってなかったテーブルの上に手のひら大の透明度の高い青色のガラス細工が現れた。


 「わー、綺麗。宝石みたい」

 『キレイねー、ホリィ』


 森君たちのよりも当たりなんじゃない?これをカットしてアクセサリーを作れないかな?スワロフスキーのようなカッティング技術ないかなー。


 「き……綺麗ね。ねぇ、エド、これって――」

 「おう。これは…アレだ…」


 アレってなんだろう?【鑑定眼】を発動させる。


 ―竜の逆鱗 (ガチャ景品:希少度 SR(スーパーレア) )―

 水竜の逆鱗

 神薬の材料のうちの一つ

 等級:S


 「竜の逆鱗?」

 「逆鱗!?竜鱗でなく!?」


 鑑定結果を読んだらエドさんが叫んだ。竜鱗も逆鱗も要はウロコだよね?


 「竜鱗だとしてもとんでもねぇのに、逆鱗とか……お前、どうしたいの」

 「どうしたいも何もないですけど、これ、拙かったですか?」

 「拙いとか拙くないとか、もう、何て言ったらいいのかしら……。遊びで出てくる景品が竜の逆鱗だなんて……」


 確かにスーパーレアアイテムのようだけど、”神薬の材料”とか厄介事の匂いしかしないけど、この3人とヨルしか知らないんだから問題ないです。綺麗だねーで終わり。アクセサリーにするのは無理っぽいのが残念だ。ちなみに竜鱗はエリクサーの材料の一つだそうです。


 「やっぱり、ホリィちゃんはホリィちゃんだってことよね」

 「どういうことです?」

 「常識から逸脱してるってことだろうよ」

 「そこまで言ってないわよ。規格外な存在ねってくらい?」


 サジさん、一緒だと思うよ、それ。


 「さっきの奴らが聞いたら憤死しそうな景品だな」

 「筋違いにもホリィちゃんを恨んで危害を加えようとするかもしれないわね」


 ……確かに。”ぬののふく”と”竜の逆鱗”じゃ価値が違い過ぎる。前者は使い道のない外れ(ノーマル)アイテム、、後者はSR(スーパーレア)だ。理不尽だと言われても仕方ない――けど、私のせいじゃないでしょ、それ。

 逆恨みを受けるのも嫌なので、絶対に聞かせられない話です。


 なんだか疲れてしまった私たちは挨拶もそこそこに解散となった。エドさんに、くどいほど秘匿するように念を押されたけど、私だって馬鹿じゃないんだから厄介事の種はインベントリに死蔵しますよーだ。オカンは本当に心配性だ。


 『キレイだったのよ?』

 竜の逆鱗を仕舞い込んだ私にヨルが言う。

 「そうなんだけどねー。トラブルの元みたいだから封印かな」


 薬師としての技術もガチャも中庸ならばこんな苦労はしないんだ。”スキルが使えない”と嘆いていた森君たちには聞かせられないが、”スキルが優秀すぎる”ことが私には重くて辛い。

 エムダさんにどういう事なのかと問い詰めたい気持ちでいっぱいだ。


 「もう、ねよっか」


 持って行きどころのない憤りを抱えたままわたしはベッドに潜り込んだ。



 昨日のアレはとんでもない確率の景品が偶々最初に出ただけで、そこで運を使い切ったんじゃないかな?あとはノーマルばっかりとかさ。

 例えばSRの確率が0.1%だとして、千分の一が偶々最初に来ただけ、この後は999回のノーマルが続くだろう。目が覚めてスッキリした頭で私はそう考えた。


 竜の逆鱗が出たことを自分の中で処理する為にはそう考えるのが一番納得がいくからだ。そんな希望を胸に、私は唱える。


 【ガチャ】



 ―不死鳥の風切り羽 (ガチャ景品:希少度 SR(スーパーレア) )―



 嗚呼、望みは断たれてしまった。

 いや、千分の一が2回続いただけ、明日のガチャは大丈夫に決まっている。


 毎日そう考えて毎日ガチャを回し続けた結果、私のインベントリに死蔵品が溜まっていったのだった。




ブクマ・評価に感謝です

読んで下さってありがとうございました

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
― 新着の感想 ―
[一言] そりゃ ガチャをつけるなら無限機能か幸運必須でしょ?www
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