第45話 王都へ行こう 2 ―再会―
投稿を始めてから一月と十日と一日経ちました。
初めて書いた小説をたくさんの方に読んでいただけて光栄です。
本当に、思ったよりずっとずっと多くの方に見て頂けてビックリで嬉しいです。
ありがとうございます。
褒められなかった。それどころか叱られた。
「ホリィちゃん?あれ、何だったのかしらぁ?ただのキャンディじゃないわよねぇ?」
笑ってるけどサジさんが怖い。壁ドンならぬ馬車ドン?私が逃げないようにがっちりとガードされている。しかし、何故怒られてるんだ。
「アレ、お前が作った薬だろう?」
傍に立っているエドさんも笑顔なのに怖い。
何故だ、いいことしたと思ったのに。
「お前、目立ちたくないんだよな?規格外の力を隠したいんだよな?なら、なんでまた自分の特異な能力を宣伝するような真似してんだよっ」
「え、だって、あれ、ただの酔い止め……」
「きっと等級はSよねぇ?」
「……」
「やっぱりそうなのよねぇ」
いや、だって、飲んじゃえば鑑定されることもないし、もっと譲ってほしいと言われても手持ちが無いというつもりだし、どこで入手したのか聞かれたら貰いものだから分からないと言うつもりだったし、面倒な事になったらエドさんに丸投げしようと思ってたし。
私の言い訳を聞いた二人は苦い顔のまま。
「一応、考えてはいたんだな」
「そこに驚いたわ。特に最後のエドに丸投げっていい案だもの」
「おい」
オルダ常識に難がある上に口が立たない私は、もうエドさんとサジさんに頼る気満々である。
その後、更に説教をくらったがどうにか許してもらえた。老婦人が楽になった様子が救いだ。
その後も転んで膝を擦りむいた子どもやら、エコノミー症候群か足が浮腫んでしまった奥さまやらの手当てをして説教されるなどと言うことが何度かあったが、特に大きな問題は無い。お礼にと木の実のパウンドケーキやら香りのいい茶葉などを頂いて得してしまった。
こんなにゆったりした馬車でもエコノミー症候群になるんだねぇ。
盗賊や魔獣が出ることもなく旅程は半ばを超え、途次でも大きいほうだというケビア町に昼前に到着。この町の宿で一泊して、馬を休めたり食料を補給したりするそうだ。
オルダに来てからサラクより大きな町は初めて見るのでちょっとワクワク。
「ホリィちゃん、出発は明日の朝だけど今日はどうするの?買い物?」
「ですねー。あと、お薬の質や相場を調査してみようかと思ってます」
「とりあえず昼飯を食いにいかねぇか?」
エドさんも明日の朝までは自由時間なのだそうだ。
「ヨルちゃん、この町は果樹が有名なの。いっぱい食べて大きくなりましょうね」
『食べる!大きくなる!』
この1週間ちょっとでヨルとサジさんはずいぶん仲良くなったなぁ。主に餌付けと言う手段で。
「あまり大きくなったら肩に乗らなくなるから困るなー。でもいっぱい食べて大きくなるのは良い事だよねぇ」
「いや、そもそも黒曜蛇は成体でこのサイズだぞ?」
そうなのか、なら良かった。でも、食べ過ぎて太さ的に成長することもあるかもだし、それも困るかな。
宿に荷物を置き3人で町に繰り出した。
「活気がある街ですね」
「そうね、サラクはどちらかと言うとのんびりした街だから、雰囲気が随分違うわね」
「この町はダンジョンから近いからな、そこに潜る冒険者が多いんだ」
ダンジョン!あるんだ!ラノベ好きとしては心が躍るよ。
「なんだ?ホリィも潜りたいのか?」
思わず興奮した私の様子を見てエドさんが言う。
いえいえ、まさか。か弱い少女がダンジョンで冒険したいわけがないじゃないですか。ダンジョンという響きに浮かれただけです。
「冒険者としてのお仕事は採取だけで十分です」
「こんな小っちゃな女の子には向かないわよ」
防御には自信があるんだけどねー、エドさんからの攻撃以外では。攻撃力は持っていないし、持ちたいとも思ってないからなー。
――お前、昨日のガチャどうだったよ?
ダンジョンに思いを馳せながら歩いていたが、すれ違った人のその言葉で私の足が止まってしまった。
ガチャ?
あの時の同級生の誰か――がこの町にいる。
「どうした?」
「あの、エドさん、ちょっと用事を思い出したのでここから別行動――っ」
デコピンが来た。
「お前の思いついた用事が何だか知らねぇけど、放牧するつもりはねぇ」
放牧って……。
「えーとですね、さっきすれ違った人が、同郷の人っぽいんですよ。声を掛けるとかするつもりはないんですけど、状況が気になるのでちょっと後を付けて偵察を、ですね」
【隠密】を使えば気付かれる事なく様子を伺えると思う。
彼らの現状を知ってどうこうするつもりはない。あちらも堀ゆうきに興味は無いだろう。――というか、私が彼らの記憶の中に存在しているかどうかすら怪しいと思っているけど。
ただ、オルダでたった15人の日本人だもん。出来ればハッピーな異世界生活を送っていてほしい。それを確認して、勝手にほっとしたいのだ。
ほっと出来ない状況だったら……いや、関わることは無いね。
「規格外人物かよ……」
振り返って、私の同郷を探そうとするエドさん。けど、見た目じゃわからないと思うよ。
「その人たちが昼食のためにお店に入ってくれるといいわね。さりげなく近い席を取れれば話も耳に入って来るもの」
サジさんも一緒に来てくれるようだ。
私は二人と一緒に彼らの後を追い、幸運な事に食堂に入った彼らに続くことが出来た。そこそこ混み合っている店だったが、同郷とおぼしき二人の隣のテーブルに着けて良かった。
うーん、だれだろう?外見を変えた人なのか、見た目ではクラスの誰なのか分からない。お互いさまだろうけどね。
お店のおすすめを頼んだ私たちは、無言で食べながら耳をそばだてる。あ、この唐揚げ、味噌味だ。味噌味の唐揚げって初めて食べたけど、美味しい。――っていかんいかん、舌鼓を打つより聞き耳を立てねば。
「ガチャって、あんま役に立たないよね」
「だよなー、俺、ガチャでウハウハ出来ると思ってたのによ」
ほう、ガチャは今一つなのか。私も習得可能だけどしてはいないスキルの一つだ。
「一日一回って縛りも参った。無限ガチャって言えば良かったのかな?」
「課金制度を使えるほど金持ってねえし」
課金制度もあるのか。課金するとレア度の高いものが出たり、連ガチャできたりかなー。制度を使えるほどのお金が無いと言うことは相当高いんだろうなぁ。エムダさんの大盤振る舞いでも挑戦できないとは、ガチャ、恐るべし。
で、何が出て来たのかお話ししてください。そう願った私の心の声が聞こえた訳でもないだろうけど、彼らは今まで入手したガチャの景品について話し始めた。
「最初が『ひのきのぼう』で次が『ぬののふく』だったのはまだ笑い話にできたんだけどね」
「確かに笑った。勇者始めんのかよ?って」
「始めないよねー」
ちょっと楽しそうだな、ガチャ。
「傷薬が出てきた時は”ポーション寄越せやっ”って思った」
「なー、異世界だっていうのにポーションじゃなくて軟膏ってないよなー」
錬金薬師の数は少ないから、ポーションなんてそうそう出回らないレアものだもんね。
「魔石(小)が今のところ一番のヒットかなぁ。あれ、小金貨で売れたし」
「俺は、三徳包丁かな。商業ギルドの鍛冶部門の人が興味津々で小金貨2枚になった」
ガチャって思ったほどヤバくなさそうだ。とんでもない武器とか超レアな魔道具とか出てきたら困るからと取得しなかったスキルだけど、娯楽として楽しめるかも。
「しっかし、林にはびっくりしたよな」
「そうそう、まさかこっちに来て半月で”運命の人”と出会って?恋に落ちて?結婚して?あっちの記憶を全て消すとは思わなかった」
おー、林さん、結婚したのか。でもって、第四界の管理人さんがくれたギフトを使い切ったのか。びっくりだ。林さんと一緒だったってことは、この二人は森君と木村君かな、確か。
しかし、オルダに来てまだ半月ちょっと。第四界の記憶を消してしまってはほぼ記憶喪失状態なんじゃないだろうか。
運命の人って凄い。
読んで下さってありがとうございした。




