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第42話 予定外ですがテイマースキルが生えました

 「どうしようエドさん、ヨルが付いてきてくれるって、でも、ヨルが喋ってるの。初めてのお友達が私のことを好きだって言ってくれてるの。それも大好きって言ってくれたの。どうしよう、エドさん」


 エドさんが招き入れてくれた彼の部屋で私は一生懸命訴える。


 「落ち着け。何を言ってんだかさっぱり分かんねーから」


 あ、ナデナデ。デコピンやアイアンクローをする手なのにナデナデは本当に優しい。オカンの手は厳しくも温かい。


 「ごめんなさい。ちょっと理解の外の出来事がありまして、混乱しちゃいました」


 エドさんが勧めてくれた椅子に座って落ち着いたところで頭を下げる。


 「何かあった時に俺んとこ来たのは正解。落ち着いたなら何があったか話してみろ」


 私はつい先ほどあった事をエドさんに説明した。黒曜蛇にヨルと名前を付けて呼んだこと。ヨルが突然に話し出したこと。王都まで付いてきてくれると言ったこと。私のことを大好きだと言ってくれたこと。


 「………は?」

 「は?じゃなくて、魔獣ってお話しするの、エドさん?あ、ビックリしちゃったけど、王都まで付いてきてくれるって言ってくれたから問題ないのか。私、何でパニクったんだろ?落ち着いて考えたら、素晴らしく嬉しい事だった。やだなーもう、私ってば。スミマセン、夜分にお騒がせしました」


 そうだよ、驚いたけど何てことないじゃないか。ヨルと相思相愛でこれからも一緒だってだけだもん。

 狼狽した自分がちょっと恥ずかしいぞ。


 「おい、自己完結してないでちょっと待て」


 立ち上がって部屋を出ようとした私の襟首をエドさんが掴む。エドさんは人を止める時にこの方法しか知らんのか。


 「黒曜蛇が喋ったってのはどういうことだ?」

 「この子に”一緒に来てほしいなー”って言ったら”いいよー”って言ってくれたんです。それだけの事なのに大騒ぎしちゃってごめんなさい」


 私の中では万事解決なのだけど、エドさんにしてみたら意味不明だよね。重ね重ね申し訳ない


 「それだけって……お前なぁ。魔獣は喋らんだろ、普通」

 「おお、そうなんですか?ってことはヨルはめちゃめちゃ賢い子!?ヨル、凄いねー、お利口なんだねー。可愛くて綺麗で優しくてお利口だなんて、なんて完璧な子なの。お友達として鼻が高いよ!」


 『ホリィも可愛くて、いい子で、美味しそうに見えてやっぱり美味しくて、気持ちよくてサイコー』

 「……ハイ?ヨル、何を言ってんの?」


 美味しくて気持ちいいってなんだ?怖いよヨル。


 『ホリィ大好きー』


 うっ、そんなこと言われちゃったら陥落するしかないじゃないかっ!


 「ヨル!私も大好きだよっ!」


 美味しいとヨルは言うが、舐められたことはあれど齧られたことは無い。だから実害はない。大丈夫だよ多分。…大丈夫だよね?舐めて美味しいってのも怖いけど、汗!?汗が美味しいの!?乙女としてちょっと嫌だ。


 「愛情を確かめ合っているところ悪いが、ちょっといいか?」


 エドさんにストップかけられた。ヨルといちゃいちゃしている間も、襟首に手がかかったままだ。逃げないのに。


 「あ、はい、スミマセン」

 『ヤダー』

 「こら、ヨル、ここはエドさんの部屋なんだよ。私たちが勝手に押しかけて来たの」

 『押しかけたのはホリィ。ヨルは何もしてない』

 「あー、そりゃそうだけど」


 「おい」

 再度エドさんから声がかかる。ヨルと話しているとつい脱線してしまうなぁ、気を付けないと。


 「黒曜蛇が喋るって聞いたが、俺には聞こえん。大体、蛇は発声器官が無いんじゃなかったか?」

 「え?魔獣でも?」

 「俺も詳しかないが、そう聞いたことがあるような……」


 え?蛇は声が出せないの?じゃ、私に聞こえているヨルの声は一体……もしかして私――


 「ヨルが好きすぎて幻聴!?ヨルが付いてきてくれるっていうのも私の妄想!?ヤバイ、友達いない歴=年齢で、それを気にしていないつもりでも実は病んでた!?どうしようエドさん」


 この世界に心のお医者さんっているのかな!?


 『ホリィ、幻聴じゃないよ。ヨルはホリィとお話してるよ?』

 「ヨルが幻聴じゃないって言ってくれても、それすらも私が作った想像のヨルかもだし。――って、ヨルは今ここにいるよね?存在すら私の妄想じゃないよね?」


 自分に自信がなくなってきた。実は私は交通事故で死にかけていて、第二界(オルダ)に来たというのも死の間際に作り上げた妄想で、体はまだ地球にあって、想像世界に逃げ込んでいるだけだとしたらどうしよう。


 「落ち着け、ホリィ。黒曜蛇の声は俺には聞こえないっつっただけだろ?存在はしている。妄想じゃないから大丈夫だ」

 『ホリィ、ヨルはホリィの傍にいるよ?落ち着いて。ホリィはヨルの主になったから、ヨルと心でお話しできるの。他の人には聞こえないの』


 「私が、ヨルの主になった……?お友達なのに?主と(しもべ)とか、そんなマニアックな友人関係コワイ」


 ただでさえ人間付き合いの経験値がゼロに近いのに、そんな特殊な友人関係を私は築けるんだろうか。ヨルは蛇の魔獣だから人との繋がりがゼロでもいいのか。人と蛇との関係は人同士の関係から見たら特異なのかもしれない。

 でも、主と僕はヤダー。


 『ホリィとヨルは、主と従魔。ずっと一緒」

 「従魔」

 『そう、ヨルは従魔』


 「――エドさん、従魔ってなんでしたっけ?お友達とは違うんでしょうか。ヨルと相思相愛で、王都に一緒に行って、いつまでもキャッキャウフフ出来ると思ったら主とか従魔とか言いやがるんですけど」


 「言いやがるってお前なぁ。ソイツが従魔だって言ってるんならそうなんだろ?テイマースキルも持ってたのか、ホリィ。それにしても、会話が出来るなんて聞いたことねぇな」


 テイマースキルは取得してないんだけどな。ゾワゾワもしてない。


 「ヨル、鑑定かけるよ?」

 『いいよ、ホリィ』


 ―ヨル―

 黒曜蛇

 年齢 : 1

 性別 : 雌


 LV : 4

 HP : 350/350

 MP : 7100/7100


 ホリィの従魔


 花の蜜や果実を好む

 食用に非ず

 ―――――


 ノー!!従魔とか出てるし!!わ、私は?



 ― ホリィ―

 人間

 年齢 : 15

 性別 : 女

 職業 : 薬師

 Lv : 8

 HP : 4300/5200

 MP : 5400/5400


 スキル

【鑑定(Lv3)】【錬金術(Lv3)】

【調薬魔法(Lv2)】【治癒魔法(Lv1)】

【火魔法(Lv1)】【水魔法(Lv2)】【風魔法(Lv1)】【土魔法(Lv1)】

【清浄(Lv2)】【探知(Lv2)】【索敵(Lv1)】【付与魔法(Lv1)】

【テイム(Lv1)】【身体強化(Lv1)】【料理(Lv1)】【調薬(Lv1)】

【複製(Lv2)】【スキルコピー(Lv1)】【レジスト(Lv2)】

【自動マップ(Lv1)】【結界(Lv1)】

【インベントリ(MAX)】【幸運】【体力超回復(Lv1)】【魔力超回復(Lv1)】


 ―従魔―

 ヨル(黒曜蛇)


 ―特記―

 界渡り人(出戻り)

 

 ―称号―

 ぬらりひょん

 黒衣

 ナートゥーラの申し子

 ―――――


 テイムが生えてる!従魔:ヨルって出てる!

 自分を鑑定することなくあれこれとスキルを習得した結果――結構ヤバイ人になっている。これはチートもりもりを勘弁してくれと言った人間のステータスじゃない。


 「エドさん、いつの間にかテイムスキルが生えてたようです。そして、ヨルが従魔になってます」

 「あー、まあ、そうだろうなぁとは思った」

 「でも、これでヨルが一緒に来てくれるって確信が持てました。嬉しい」

 『ヨルもホリィと一緒、嬉しいー』


 主従関係になっちゃったけど、私はお友達だと思っているからね、ヨル。


 「良かったな、ホリィ。で、蛇の件が落着したところで聞きたいんだが」

 「ありがとうございます、エドさん。何でしょう?」


 「この世界とか、交通事故で死にかけてとか、オルダに来たとか、地球とか――一体どういう事なんだ」


 え?口に出してた?心の中で思ってただけじゃなく?


 ノーーーーー!!




読んで下さってありがとうございました。

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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