表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/111

第38話 調薬成功したのに叱られた

 薬包を持って食堂に行くとサジさんがいた。いつも食堂にいるね?ここを通らないと玄関までいけないからじゃないよね?私のこと見張り……見守っているとかじゃないよね?

 エドさんはともかく、サジさんって地元民だよね?お家に帰らずに宿を取っているのは私の為だったりしたら、とても申し訳ないんだけど。


 「サジさんサジさん、今、お暇ですか?風邪薬を作ったので見てみてほしいなーと思いまして」


 サジさんに声をかけると何故かギョッとされた。


 「ホリィちゃん、薬を作ったって……言った?薬草採りから帰ってきたのって、ついさっきよね?」


 「迅速に頑張りました!」


 胸を張って言う私にサジさんが懇願するように両手を合わせ


 「元々持っていたと言ってちょうだい。せめて、素材は以前から加工してあって包んだだけだと言って……」


 私の手の上の薬包を見た。


 「いえ?さっき採ってきたばかりの新鮮な薬草で作りました。フレッシュな風邪薬です。ばっちり大成功です!」


 バッチリ大成功って言われても――とサジさんが呟く。失敗報告より成功報告の方がいいでしょう?なんでこんなに青い顔をしているんだろう。


 と、そこにエドさんが帰ってきた。


 「おう、サジ、ホリィ、今から飯か?」


 「お帰り……エド……」

 「エドさん、お帰りなさい」


 「サジ、どうした?具合でも悪いのか?」


 顔色の悪いサジさんにエドさんが心配そうに声をかけた。

 さっきまで元気だったのに急にどうしたんだろう。風邪かな。――ん?風邪?なんと、都合の良いことに私の手の中には風邪薬があるじゃありませんか!等級Sですぞ!他の薬を知らないから等級Sが当たり前なんてこともあるかもしれないけど、少なくとも低品質ってことはあるまい。


 「サジさん、風邪ひいちゃいましたか?私の作ったお薬をどうぞ!品質もばっちりだと確認済みです。お世話になっているので、勿論お代は頂きません!」


 飲んで、味を教えて欲しい。効果のほどを知りたい。経過観察、もとい看病させてくれないかなぁ。


 「…え?いえ、いいのよ、ホリィちゃん、大丈夫だから」


 「だいじょぶくないですよ、顔が真っ青ですよ」


 「おう、マジに顔色わりーぞ、サジ」


 私とエドさんが心配するも、サジさんは首を振るばかり。


 「ここじゃちょっと……、部屋で」


 「お部屋で休みますか?付き添いましょうか?」


 そして経過観察させて―。


 「休むと言うか……付き添いは要らないけど一緒に来てちょうだい。エドも」


◇◇◇


 私たち3人と黒曜蛇ちゃんとでサジさんのお部屋に移動し、冒険者ギルドへの登録から採取、調薬までの流れをエドさんに話した。


 「で、お前は、宿に戻って30分で薬を作った、そう言うんだな?」


 「そう!早く試してみたくて、張り切って超特急で頑張りました!」


 凄いでしょ?褒めて褒めて。


 「お前はっ!常識をっ!学べ――っ!!」


 「えーっ」


 エドさんのアイアンクロー、痛い。何故レジストが発動しないんだ。パッシブスキルの筈なのにエドさんのデコピンとアイアンクローを見逃すのはどうしてなんだ。働け、レジスト!私の身を守るんだ!

 ……守られませんでした。


 そして、エドさんとサジさんの二人がかりで懇切丁寧に私の非常識を説かれてしまった。


 二人とも調薬に詳しくはないと前置きした上での作り方の話。採取した薬草を洗浄し乾燥させてから刻むか砕くかする。それを必要な素材ごとに行い、分量を量り混ぜる――らしい。


 「それを30分でとか、馬鹿なのかお前は!」


 スマン。人前じゃないからいいかと思った。しかも、調合時間よりもしつこい位の清浄が所要時間のほとんどを占めてたーーなんて言っちゃ余計怒られるので黙って俯いておく。


 「エド、この子なんなの……私じゃ手に負えないわ」


 「自覚がねぇんだよ、こいつは。自分が非常識な事を教えてやらねーと、今に痛い目に遭う」


 常識が無いのは自覚してます。お手数をおかけしていて、その辺りは本当に申し訳ない。でもさ、言わせてもらえるなら異世界移住4日目で常識的な行動なんて取れないと思うんだよねー。説教してくる二人だってさ、地球に移住してみてごらんよ、絶対に非常識だって思われるから。


 「常識は勉強中です、スミマセン」


 何と言おうと私に常識が無いのは確かで、二人は私を心配してくれていることが分かるので頭を下げる。


 「お前は張り切るな。そして、何か行動を起こす時は俺に言え。馬鹿臭い事をしないか逐一見ててやる」


 「え、やだ、エドさんやらしいっ。事細かく余すところなく詳細に私の行動を見て乙女の秘密を暴こうだなんて……やっぱり少女――いたっ」


 少女趣味(ロリコン)なんじゃと言いかけたところでデコピンをくらった。冗談なのに。本当にそういう趣味があったとしても、「Yes Lolita No Touch」を貫いてくれるなら何も言わないよ。白い目では見るかもしれないけど。


 そこまで考えたところでまたデコピンが来た。


 「益体も無い事を考えていただろう」


 なぜ分かった。エドさんは時々読心術を使っているんじゃないかと思うほど私の考えを読んでくるから怖い。


 そして、やっぱりレジストが発動しない。エムダさん、スキルが不良品です。要交換お願いします。痛む額をさすっていると、今度は頭をなでなで……と見せかけてがっちり掴んだエドさん。


 「さあ、吐け。あとは何をやらかした」


 黙秘権を使わせていただきます。


 鑑定は知られているにしてもね、探査とかね、錬金術とかね、そりゃもう黙秘案件ですとも。


読んで下さってありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
― 新着の感想 ―
[良い点] 読んでて楽しい笑 これからニタニタしながら読みたい。 [一言] もっと人気でそうなのに。 頑張って☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ