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第36話 初調薬に挑戦 2

2020/06/04 矛盾がありましたので一部修正いたしました。話の流れは変わりません。

 やってきました冒険者ギルド。

 開け放たれた扉をくぐると、中は前回エドさんに連れてこられた時より、やや人が多い。朝だからかな。


 真っすぐにカウンターへ行き、受付のお姉さんに冒険者登録したいことを告げると、カウンター端の用紙に必要事項を記入して持ってくるように言われた。字が書けなかったら代筆すると言われたのを断って用紙を手にする。


 親切なお姉さんだ。子供も小遣い稼ぎをすると言うくらいだから、冒険者ギルドはラノベで読んだような殺伐とした場所ではない様子。よしよし、ノーイベント・ノーフラグ、安全第一で行けそうだ。


 冒険者登録申請書の必要事項に記入していく。名前や生年月日、出身地なんかはいいけど(エムダさんがくれた身分証のままでいいからね)【スキル【任意】】欄はどうしようか。魔法スキルは書いちゃ駄目だろうな。無双したいならともかく、冒険者ギルドでの目標は目立たず大人しく自分用の薬草採取のついでの日銭稼ぎです。

 空欄のままでいいか、任意だし。【賞罰歴】も空欄。討伐、護衛、採取などの一覧の中からもちろん採取に○をする。


 「お願いします」


 最低限の項目を埋めて受付嬢に書類を渡すと、こぶし大の水晶に手をかざすように言われた。


 「こちらは報告の虚偽を判定する魔道具です。書いてあることに間違いがないかを確認させていただきます」


 「はい」


 平然と言ったけど、内心ドキドキです。エムダさんが作ってくれた経歴は虚偽になるの?ならないよね?それに、魔道具あるじゃん!エドさんがレアだレアだと言うから一般では全く流通しないものでお目にかかることは無いのかと思ったよ。私が作った道具位でお偉いさんに囲い込まれたり、悪い人たちに目を付けられたりするわけないじゃん!大袈裟なオカンだよ、全く。


 あ……そういえば、第二界常識さんが”ギルドの登録、教会での洗礼、裁判”で鑑定魔道具が使われるって言っていたような。ああ、登録前に思い出せばよかった。


 水晶に手をかざしてみても何の反応も無い。大丈夫なんだよね?


 「はい、確認が終了しました。こちらがギルドカードになります。再発行には手数料がかかりますので無くさないようにお気を付けください」


 エムダさん、GJ!


 「ありがとうございました」


 「初めてのご登録ですので、簡単にご説明させていただきます」


 依頼の受け方やランク制度、虚偽の報告や横取り行為の禁止など基本的な事を教えてもらって依頼ボードを見に行く。私はFランクなので受けられる依頼は一つ上のEランク依頼までだけれど、薬草採取狙いでランクアップを狙わない私にはあまり関係ない事だね。


 ボードは依頼の種別ごとに分かれており、更にランク事に纏められていた。私の受けられるランクの依頼の中にタタラの根を始めとする風邪薬と傷薬に必要な薬草が常時依頼で出ていることを確認。


 受付嬢の所に戻り情報を聞こう。


 「すみません、私はこの町に来たばかりなので出来れば薬草の生えている場所を教えていただきたいのですが」


 「薬草採取依頼を受けるのですね」


 そう言って受付嬢がこの町とその周辺の地図を広げて指をさしたのは、町の北側に位置する森だった。


 「大概の薬草はこちらで自生していますし、野生動物や魔獣なども危険なものはおりません」


 野生動物や魔獣の危険度ってどのくらいなのかなー。冒険者には危険が無いと言う事なのか、一般市民でも問題ないのか。


 「町の子供たちも採取してきますから安全だと思いますよ。でも、十分に気を付けてくださいね。油断から怪我をしたりしても詰まらないですからね」


 疑問が顔に出ていたのか、私が弱っちそうに見えるからか受付嬢が安心させるように笑ってくれた。ホント、親切だ。うん、安全な森だと言ったって、思わぬアクシデントが無いとは限らないよね。町に隔壁が無い事から見て、この辺りに襲ってくるような獣がいないとしても。


 「はい、気を付けます。ありがとうございました。行ってきます」


 「行ってらっしゃい」



 ◇◇◇


 屋台で肉や野菜を挟んだピタパンに似たサンドイッチを買って森を目指す。携行食は有事の為に取っておこう――というのは建前で、屋台から漂ってきた匂いに逆らえなかったのよ。もちろん、黒曜蛇ちゃん用に果物もゲット。


 「索敵・身体強化・隠密」


 安全だとしても、備えは大事。取りあえず3つのスキルを発動だ。

 森まで二kmほどとは言え、脆弱なこの体にはしんどいので身体強化。安全第一で索敵と隠密。常時発動(パッシブ)のレジストもあるし、身の守りとしては中々なのではないだろうか。


 「黒曜蛇ちゃん、ブドウ食べる?」


 肩に乗せた黒曜蛇ちゃんにおやつをあげつつ、森を目指す間も道すがら見えた草花や低木、石ころや虫に至るまで目についたもの全てに鑑定をかけながら歩く。


 「お、こんな所にも薬草だ」


 ―紫花―

 傷薬の材料

 食用:可

 等級:E


 黒曜蛇ちゃんや自分にかけたときには無かった【等級】が出た。ランクが高い方がいいお薬が出来るんだろうな、多分。


 ―クミタ草―

 風邪薬の材料

 食用:可

 等級:C


 ―タタラー

 風邪薬の材料

 食用:可

 等級:A


 等級Aが来たー。よし、まだ森ではないけれど、採取しておこう。タタラは根っこが必要なので、用意しておいたスコップで掘りあげよう。


 「水」

 シャワーをイメージして唱え、根っこに付いた土を洗い

 「風」

 優しく吹く風をイメージして唱え、濡れた根を乾かす。


 「うん、ばっちり」


 ギルドの売店で買った採取袋にタタラを入れて、更に収納袋をインベントリに入れる。幸先のよさにホクホク。

 いい感じだねー。



 その後も鑑定をしながら歩き、等級がAと出たものは採取しつつ森へ到着。2kmに一時間ちょっとかかっちゃったのはご愛敬。鬱蒼とした森もそれはそれで雰囲気あるけど、ここはTVでしか知らない白神山地のような静謐さが心地いい。ゆったりと森林浴でもしたいところだけれど、ここにはお仕事に来たわけだし、調薬の為にもバリバリ採取しますか。


 「探知:紫花 等級A」


 鑑定で等級を見たときから思ってたんだよねー。鑑定しながら等級を確認するのではなく、等級を指定して探知すれば楽なんじゃないかと。探知に引っかかった紫花を鑑定してみると等級Aと出た。予想通り!私の賢さが上がった!かもしれない。


 紫花の根は20本で銀貨1枚。数日の間だけれど買い物をしたり店を覗いたりしていた感覚では銀貨=1000円くらいに思う。紫花の根は1本50円。子供の小遣い稼ぎ程度と聞いていたからがっかりはしない。私は素材を売るよりも調薬して薬を売った方がお金になるはず。


 スキル【調薬魔法】で必要な物を確認しつつ探知で素材を集めていたらお腹が鳴った。


 「黒曜蛇ちゃん、ご飯にしようか」



 お昼を食べた後は、採取の前に錬金術を使ってみちゃったりする。倒木を使ってメモ用紙と風邪薬用の薬包紙。河原の砂を使ってポーション用のガラス瓶。石を使って傷薬用のケース。


 木の種類が紙に向かないものだったのか、ややざらついた感触だけどまずまずの出来かな。ガラス瓶は宿の調味料入れを参考にしてみた。元の世界の知識でイメージしたら、こちらとまるで違うものでした――なんてことの無いようにね。こちらの調味料入れが私から見て違和感なかったので大丈夫だとは思うけども念のためです。


 初錬金術、成功です!



 


読んでくださってありがとうございます。

ブクマ・評価もとても嬉しいです。


これからも読んでいただけるように頑張ります。

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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