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第34話 サラクの町を見てみよう

 職業をどうするかは置いておいて、とりあえずサラクの町見学に出発。

 エドさんは魔道具屋に行こうと煩かったけど却下です。サジさんも付き添うと言ってくれたけど遠慮させていただいた。一人でやっていけるようになりたいのだ。


 ということで、黒曜蛇ちゃんと二人で散策だ―。


 町の雰囲気を見たいので、ぶらぶらと歩く。自動マップが便利でありがたい。拡大縮小思うがままだし、つらつらと店の看板を読んでいくと、マップに店名が追加される。素晴らしい!方向感覚に自信が無い私にすこぶる付きに重宝するスキルだ。


 果物屋さんが目についたので、黒曜蛇ちゃんの為に苺をゲットして私もご相伴にあずかる。うん、甘くて美味しい。


 初めてサラクに足を踏み入れた時から思っていたけれど、町の雰囲気がいいんだよね。

 整備された綺麗な街並み。行きかう人々も清潔で表情も穏やかで余裕がある。服を買うために行った商店街でも小さな子供達だけで買い物をしている姿を見かけたのは治安が良い証拠だと思う。安全第一の為に治安の良さは重要事項だ。


 宿もサジさんに教えてもらった食堂もごはんが美味しかった。食文化が近いのはとても有難い。そして未知な食べ物も美味しかった。


 あとは、ここで私が生計を立てられるかどうかだね。薬師が飽和状態になるほど多いとしたら新規参入の成人したての子供に出る幕は無いだろう。不足しているなら目がある。


 「すみません。この辺りで薬を扱っているところを教えていただけませんか?」


 町の人に尋ねてみる。


 「ん?お嬢さん、お使いかな?薬種問屋や薬鋪や医薬師ギルドなら、この2つ先の十字路を右に行った薬種通りに並んでいるよ。一人で大丈夫かい?」


 親切なお姉さまだ。大丈夫だとお礼を言って頭を下げると、気を付けてねと声をかけてくれた。ああ、やっぱりこの町に住もうかなぁ。通りすがりの子どもに見えるらしい私に優しくしてくれたお姉さんの存在で、町の好感度はさらに上がったよ。


 お姉さんに教わった通りに薬種通りを目指す。もちろん、道すがらお店の名前のチェックは怠らない。マップに細かな表記がどんどん足されていくのが面白い。


 黒曜蛇ちゃんは定位置である私の肩でまったりしている。可愛いなぁ、もう。


 このまま私と一緒にいてほしい。テイマースキル取るか?とも思うけど、出来れば彼女の意思で私と一緒にいることを選んでほしい。そもそもこの子はなんで私と一緒にいてくれるんだろうね?魔獣は人に懐かないとエドさんは言っていた。この子が魔獣じゃないのか私がこの世界の人間じゃないからなのか、それとも別の理由があるのか。

 ま、考えたって分からない。成績は悪くは無かったが、私の頭は結構残念に出来ているのだ。




 「ここが薬種通りかぁ」


 先ずは通りを端っこまで歩いてみた。医薬ギルドは冒険者ギルドよりだいぶ小さい。隣の薬種問屋の方がずっと大きいが、これは商品を並べたり保管したりする関係で広さが必要だからだろう。

 通りの両脇に治療院、薬鋪、薬種問屋などの看板が掛けられた店が並んでいるが、薬鋪の店は三軒ほど。ハッキリ言ってショボい。


 他の店は日用品、雑貨、食料品の店や食堂などで、これで()()()()とは恐れ入る。

 サラクはそこそこの規模の街なのでもっと需要があるかと思ったんだけど、そうでもないのかなぁ。病人もけが人も少ないことは良い事だけど、飯の種に困った。


 食いっぱぐれのないお仕事の筈なんだけどな。ねぇ、エムダさん?


 町の雰囲気は良し、食事も良し、治安も良し、けれどお仕事が無ければ他所に行くしかないだろうな、やっぱり。


 

 ◇◇◇


 「やだ、薬種通りに薬鋪が少ないのなんてあたりまえじゃない」


 パジャマを買って宿に戻りサジさんに話すと笑われた。


 「薬屋さんがずらっと並んでいてどうするのよ。そんなの町のあちこちに散らばっているに決まってるでしょ。薬種問屋さんは多かったでしょう?」


 「あー、なるほど」


 そりゃそうか。


 「武器や防具なんかの店は通りにずらっと並んでいてお客さんが見比べたりもするけれどね」


 そう言われれば、かっぱ橋で料理道具や製菓道具のお店をハシゴする人はいても、ドラッグストアのハシゴをして値段以外の部分を比べる人はいないよね。薬種問屋さんは多かったんだから、それを買う人も多いと言う事なのに、そこまで頭が回らなかった。


 「ホリィちゃんはお店を持つつもりじゃないのよね?だったら薬師ギルドに登録してそこに卸したり、冒険者ギルドと契約して売店に置かせてもらったりとかはどう?」


 お店を持つなんて御大層なことは出来ないです、はい。

 薬師ギルドでも冒険者ギルドでも薬の買い取りは行っているそうだ。製作者の名前が付いた状態で売り出すので、買う側は効果の高い薬を作る薬師を見極めることが出来るとか。固定客がつけばギルド側も買い取り量を増やしてくれるし、将来的に店を持つなら名前の売込みにもなる。


 「契約するにも先ず、どんなものが作れるのか、どの程度の品質かが分からないとお話にならないわよ?」


 「サジさん、ありがとう。参考になりました」


 この町で暮らすかどうかを決めてから調薬を始めようかと思っていたけど、調薬の腕が認められるかどうかが暮らせるかどうかの決め手になるのか。


 エムダさんからスキルを貰っているから大丈夫だと勝手に思っていたけど、他の人は私のスキルなんて知らないんだし、一度も調薬をしたことのない小娘が「薬を作れます」なんて言っても鼻で笑われるだけだろう。


 社会経験のないラノベ慣れした子供の考えることは底が浅いと自分のことながらしみじみ思ったよ。


 よし、調薬をしてみよう!


 自分の力を確認するためなんだから、普通の調薬のほかに錬金調薬もしてみよう。自分用に各種ポーションと薬を持っていても損はない。ヒールがあるから大丈夫だと思うけど、備えあれば憂いなしだもんね。



読んでくださってありがとうございます。

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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