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第28話 誘拐 3

 何でこんなことになっちゃったんだろう。


 あー、いま、私の足元には跪いているサンダリがいます。

 虐めている訳じゃないよ。勝手に傅いているだけです。


 「聖女よ、私はあなたの僕です。どうぞ何なりとご命令を」


 いや、聖女って。

 私は何もしていないでしょうに。


 洗脳ならレジストでどうにかなると思っていたけれど、物理的に危害を加えられることを憂慮して、私は取得したばかりの【付与魔法】で自分の身に着けているもの全てに()()の付与を施したのだ。殴られようが蹴られようが切られようが、ダメージは危害を加えようとしている側に撥ね返れ!と。

 取得したばかりの付与魔法はまだレベルが1なので、左右の靴・靴下・ブラウス・スカート・エプロンドレス・バッグ全てにかけた。8つの反射重ね付けだ。


 しかしなんと魔法まで撥ね返してしまうとは。あれか、具体的に何を反射するかを考えずに、私に危害を加えるものは撥ね返せ!と思ったのがいけなかったのか。…いや、いけなくないよね?結果オーライですとも、うんうん。


 サンダリが放った洗脳魔法はサンダリへ。

 あれだね、カエサルのものはカエサルにみたいなもんだよね?え。違う?


 彼が仕掛けた魔法は私と言う鏡面で反射され、本人に【洗脳】効果が発動してしまったのだ。 サンダリは真っすぐ私の目を見ていた。私もサンダリの目を見ていた。つまり、私が彼を洗脳している状態になってしまったようなのだ。


 いや、これ、洗脳とは別物の様な気がする。洗脳って思想を変えさせることでしょう?キルタの教義に染めるとか家族への情を自分たちに振り替えるとかをしてきた筈だよね。


 サンダリの今のこの状態って服従とか従属とか――そんな感じに見えるんだけど。

 

 そういう魔法をかけたの?それとも反射で変質しちゃった?重ね掛けし過ぎた?


 「ホリィ!………おい、これは、どういうことだ?」

 「なにやってんの、ホリィちゃん」


 颯爽と現れたエドさんとサジさん!格好いいね!救出される側が犯人に傅かれているところが問題だけどね!お酒飲んでたのに私を探しに来てくれたんだ。


 「どうしよう、エドさん。この人コワイ」


 この状況に陥った原因は私かもしれないけれど、元凶はサンダリだよ。私を攫って洗脳しようとしたコイツが悪い。私、悪くない。


 「聖女よ、この者たちはあなたを害するものです。ご下命いただければ私が速やかに排除いたしましょう」


 あ、そこはぶれないんだ。


 「黒曜蛇ちゃん!」


 サンダリのたわごとを無視して、足元に寄ってきた黒曜蛇ちゃんを掌に救い上げ頭を撫でると、二又の舌でチロチロと指を舐めてきた。

 私が攫われるときに身を隠したこの子が何故ここに?


 黒い蛇は禁忌だというキルタの教主を見てみたが、彼の眼には黒曜蛇ちゃんが映っていないようで、私をじっと見つめている。


 「あ、ああ。この蛇が俺たちの所に来て、だな。多分、お前の状況を伝えたかったんだろう。食堂にやってきて俺のズボンの裾を一生懸命に引っ張ってたぞ?で、部屋に行ってもいないし、宿の人間に聞いたら具合が悪くなったお前を医者に連れて行くと言って抱えて出た女を見たと言って……この状況はいったいどうなってんだ?」


 「絵面が怖いわよ、ホリィちゃん」


 二人が口々に言うけど、私だってこんなの本位じゃないやい。


 「あのー、洗脳の解き方って知りません?」



 とりあえず地下から上がり、一階にあった応接間の様な所へ移動してそれぞれソファに腰かけた。サンダリは何故か私の背後に立っている。エドさんとサジさんに呆れたような目で見られていても全く気にする様子が無い。この人コワイ。洗脳コワイ。


 「この家にいた奴らはとりあえず拘束して一部屋にぶっこんである」

 「そうですか」


 とりあえず宿から攫われた経緯を話した。エドさんとサジさんには反対されたけど、攫われちゃったんだから誘拐の証拠を握りキルタをどうにかできないかと思ったことも伝える。私を洗脳しようとして何故か自分が洗脳状態になってしまったサンダリはどうしたらいいのかも相談。


 「まさか宿の中で…なぁ」

 「そうよね。薬まで使うなんて」


 二人の鋭い視線が私の背後に集中していたのでそっと後ろを振り向いたら、平然としていたサンダリが私を見てにこりと笑う。アンタの犯罪の話をしてんだよ?


 「私が聖女を攫ったことは認めましょう。その上で、聖女は私と共にあるべきだと申し上げる」


 服従状態のサンダリが言うと、エドさんとサジさんが深くため息をつく。


 サンダリの自白があったところで私はポケットからコインを取り出し、テーブルの上に乗せる。


 「これがどうした?」


 「私を攫った証拠になるかと思いまして」


 「小銅貨がなんの証拠なのよ?」


 ふっふっふっ。

 これはただの小銅貨ではないんですよ。


 私が小銅貨の中央を押すと私とサンダリ、サナビの会話が再生される。私が何度も何度も自分の意ではない、宿に戻ると発言していること、サンダリが強硬手段を取ったことを認めていること、勝手に洗礼を受けさせようとしたことが余すことなく再生された。


 こちらの警察に当たる機構がどのような捜査をするのかを知らないので、誘拐された本人が被害を訴えても認めてもらえるか分からないと思った。三年以上も放置されていた誘拐犯だからね。


 なので、小銅貨に録音機能を付与してポケットに入れておいたのだ。

 本人の自白音声だ、これが証拠にならないわけはないと思う。出来れば洗脳の方法も探って録りたかったんだけど、残念ながら反射のせいでそれは成らず。


 ちなみに小銅貨なのは付与するための道具が無かったため一番小さな額のお金を使用したのだ。提出の可能性を考えたら、まさか食べ物や自分の身分証に付与するわけにもいかなかったしね。


 「ホリィ、お前のいた村では()()は普通の事か?」


 頭を抱えたサジさんの横でうなるようにエドさんが聞いてきた。


 「それってどれでしょう?」


 「音声の記録道具は一般的なものか?」


 「あ-、そうですねぇ。――って、これ一般的にはダメなヤツ……で、しょう…か」


 エドさんの目が怖くて言葉が尻すぼみになってしまう情けない私。


 「おまえはっ!事を起こす前にっ!常識をっ!学べっ!」


 「エ……エドさんだって結界の魔道具を使ってた」


 「結界の魔道具だって希少なの!俺は縁あって譲ってもらったけど、そこいらにほいほい落ちてるようなモンじゃねぇからっ。っつーか、希少だけど真っ当な結界魔道具を見たことも聞いたこともねぇ、会話を保存するとんちきな魔道具と一緒にすんなっ」



 

 話し合った結果、小銅貨を使わずともサンダリが私を誘拐したことを認めていることで自白が録音された小銅貨はお蔵入り決定。頑張ったのになんでだ。いや、分かってますよ、安全第一の為には表に出せないってことくらい。


 サンダリはキルタという組織に関心が無くなったので子供たちの洗脳を解き、大人の信者たちも含めて解放するとあっさりと言った。キルタは消散されるのだ。


 サンダリの洗脳も解きたいから方法を教えてほしいと言っても、本人が頑として抵抗している。これは洗脳ではない、覚醒したのだと言う。


「洗脳が解けたら、この男はまた元のキルタトップに戻っちゃうんじゃない?」


 あ……。


 



読んでくださってありがとうございます。

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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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