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第25話 提案は即刻却下されました

 夕飯をエドさんとサジさんと一緒に宿屋で取った。

 唐揚げが美味しい。お肉だけど鶏唐揚げとはちょっと違う気がする。無詠唱で鑑定行けるかな? 試してみたらできた。やった!


―ロック鳥の唐揚げ―

巨大鳥ロック鳥もも肉の唐揚げ

旨味が濃くジューシー


 ほうほう、ロック鳥か。魔獣なのかな? 野生動物にあたるのかな? どちらにしても美味しいから良し。


 サラダのドレッシングが和風でこれも美味しい。

 お米がジャポニカ米なのも嬉しい。美味しいご飯にほくほくしていたが、その後の展開は思うようにいかなかった。


 「誘拐された被害者さんたちからの訴えは望み薄なんですから、いっそのこと、狙われている可能性のある私が囮になればいいと思うんですよ。で、エドさんがキルタのアジトに乗り込んできて攫われの少女を救出。少女の証言でキルタ一味は一網打尽」


 どうだ、いい考えだろう! と自信満々に言ってみたんだけど、エドさんもサジさんも渋い顔をしている。


 「却下」


 虎穴に入らずんば作戦は二人に即刻却下された。私が大丈夫だと言っても


 「ホリィの大丈夫は当てにならない」


 とも言われた。何故だ。ともあれ、二人の協力が得られないのならこの作戦は無しか。流石に助けが当てに出来ない状況でも一人でどうにかできると思えるほどの自信はないし、実際にキルタに何かされたわけでもないから、何が何でも組織を潰したいと言う気持ちも無い。町の平和の為に! とか、攫われた子供たちとエドさんの為に! と思うほど善人でもない。


 「大丈夫だ。俺がなんとかするって言ってんだろ」


 エドさんはそう言うけど、何とかしようと思ってずっと何ともできなかった人に言われても……。

 そう思ったのが顔に出たのかデコピンが来る! と思った瞬間に私はデコを両手でガード。ふふふん。いつまでもやられっぱなしじゃないですよ。経験から学ぶ女ですし。


 ――それって、経験しないと学べない女って感じもするのでちょっと嫌かも。


 「ホリィちゃんが何かする必要はないわ。いい?暫くは窮屈かもしれないけど私かエドの傍にいなさいね」


 サジさんもエドさんと同意見。


 だとすると、やっぱり「この町を出る」かなぁ。割引になるからって一週間分も宿代を先払いするんじゃなかった。

 目先の得につられて損するおバカか、私は。


 結界やレジストなどのスキルを伝えていないのだから、信用されなくても仕方ない。これはこれで諦めよう。サラク近隣の町の情報を二人から得たいところだけど、保護意識に凝り固まったエドさんが他の町へ行く私を止めないわけがない。この町にいたら危ないっていうのに。


 「ところで、エドさんとサジさんって恋人同士だったりします?」


 「はぁ!?」

 「やだ、ホリィちゃんったら。ま・だ・そんな関係じゃないわよぉ」


 「サジ、お前、ナニ言ってんだよ。ホリィも!お前らアホかっ」


 体をくねらせるサジさんと、心底嫌そうな顔をするエドさん。

 サジさんはアレだな、遊んでるでしょ?面白がっている顔をしている。


 「エドさんは女っ気は無いし、少女趣味でも幼女趣味でもない。少年趣味でも幼児趣味でもないんですよね?だったらソチラの方かなぁ、と思いまして」


 サジさんは隣の席のエドさんの手に触れてうっとりした顔を向けてる。エドさんはそれを見てうへぇとでも言いたいような顔だ


 「ソチラってどっちだ!サジも悪乗りしてんじゃねえっ!お前はそんなんだけど好きなのは女だって言ってただろうがっ」


 エドさんはいつものデコピンをする元気もなくテーブルに肘をつき掌で自分の額を覆った。


 「ホリィ、今までの世迷い言の中でもこれは最悪だ……」


 ははは。大丈夫、本当にそんな雰囲気に見えた訳じゃないから。キルタの話から私が町を出る決意を固めたことがバレないように、全く別の話を振っただけだから。これで、サジさんに返事をしなかったことは有耶無耶になっただろう。


 私は、ついうっかり口が滑る傾向があるので話を逸らしてみた。ただそれだけです。


 ひとしきりエドさんをからかって遊んで食事も終わり。


 「ごちそうさまでした」


 手を合わせ挨拶をし、お酒を飲んでいる二人を残して席を立つ。部屋に戻ってすることがあるからね。温泉前に絶対にしなくてはいけないのだ。



 それは【複製】!

 パンツを自作するか異世界通販するかで悩んでいたんだけど、スキル習得するときに目に入った【複製】で「これだ!」と思った!いま着けている下着を洗って乾かして複製しておけばいいんじゃね?わお、私、案外頭いいぞ!


 え?チートもりもりは勘弁じゃなかったのかって?そんなの快適な下着事情の前では塵も同然。


 下ろし立ての様なこの下着のセットはエムダさんの仕事の細やかさのおかげで好みに合い、サイズもピッタリ。自作or異世界通販の二択は将来的にサイズが変わったら考えよう。

 それまでに移住組の誰かが下着を売り出して流行らせてくれるかもしれないし。あ、もちろん私にその気はないけどね。


 自分の閃きに自分で感心し部屋に向かってルンルンと歩いていると、前から歩いてきた女性が擦れ違いざまに私の口に湿った布を押し付けてきた。浮かれていたこともあり避けられなかった。


 変な臭いがする。これは、もしかしてアレか。麻酔薬とかいうヤツか。

 

 これは……気を失った方がいいのかな?

 エドさんとサジさんに作戦は却下されたけど、宿の中で私が攫われたら助けに来てくれるだろう。

 私が仕組んだことじゃないし。

 上手く行けばこの町を出る必要は無くなって、一週間分の宿代を損せずに済む。上手く行かなくても逃げるだけなら可能だろう。


 何の実績も無いけれど、エムダさんから貰ったスキルの優秀さを当てにしてるだけで自信満々な私。”大丈夫が当てにならない”女だけど、一般モブ市民生活獲得の為に頑張るっ!



 問題は……いま誘拐されたらパンツの複製と温泉堪能が後回しになることだ。




ブクマ、評価、誤字報告ありがとうございます。


昨日(か一昨日)に初めて誤字報告を頂きました。

誤字があったと言うことで喜んではいけないんですが、初めての誤字報告!嬉しかったです。

読んでくださった上に、報告の手間を取ってくださった!申し訳なくも嬉しいこの気持ちはどうやって落ち着かせたらいいんでしょうか。


本当にありがとうございます。


これからも読んでいただけるよう頑張ります。


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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
― 新着の感想 ―
「これは……気を失った方がいいのかな?エドさんとサジさんに作戦は却下されたけど、宿の中で私が攫われたら助けに来てくれるだろう。」 愚かすぎて、共感がとても難しい主人公ですね。
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