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第24話 意外と強かです

 「ホリィ?お前、マジでそれ言ってんじゃねぇよな?あの女に何を言われたかは想像ついたが、本気にしている訳じゃねぇだろうな?」


 「いやいや、エドさんがあまりにも緊張感バリバリだったので、ちょっと場を和ませようかと……冗談ですよ、冗談」


 「今の問題発言の何処に和む要素があるんだよっ!」


 もちろん本気で疑っている訳じゃないよー。子供を見捨てられないお人よしさんだってちゃんと分かって言ってます。私の顔から手を離したエドさんが怒りながらもちょっとホッとしたような顔をした。私が本当にエドさんをそういう人だと思っていたら同じ宿を取ったりしないよ。

 そこまで警戒心無く見えるのだろうか。


 「ったく。それでアレか、俺の傍だと危ないから自分の所に来いって言ってたか」


 「ですねー。結構きわどい言い回しでしたよ。真偽はともかく、エドさんってばそういう評判が立ってるのヤバくないですか?彼女の一人や二人いないんです?」


 「二人いてどうするよ」


 「おお、一人はいるんですね。ギルドで”女っ気ない”とか言われてたからいい歳なのに彼女もいないなんて可哀想――もとい心配だなぁと…ってロープロープ!!」


 「いなくて悪かったなっ。あと、いい歳とか言うな、まだ23だ!」


 アイアンクロー再び。

 宿まで向かう道はそこそこの賑わいがあり、道行く人がエドさんの所業を見てギョッとしたり、私の方を心配げに見たりしているんだけど、エドさんは気にしないんだろうか。

 児童相談所案件だぞー。おまわりさんが来ちゃうぞー。私は児童じゃないけど18歳未満は対象だったはず…って、この世界に児相はないか。おまわりさんじゃなく、警備兵とか衛兵とかに連れて行かれちゃうぞー。


 「女っ気が無いのは本当だったんですねぇ。さっきの女性は私が既にエドさんの毒牙にかかっているんじゃないかと心配してくれていました。何かあったらいつでも頼っていいと言ってくれて、いい人ですね。ホームには頼りになる人が沢山いて、皆さん優しい人だから安心だって。ホームってどんな所なんでしょう?一度見てみてもいいかもですね」


 「やめろ!キルタの巣になんざ……」


 口を滑らせたエドさんが慌てて言葉を止めたけど、もう遅い。


 「キルタかぁ。やっぱりさっきの女性は思い込みの激しい善意の第三者と言う訳ではないんですね。私は何を警戒してどういう心構えでいればいいんでしょうか」


 サジさんが言うにはキルタが狙うのは5歳から10歳位の筈だったのに、成人女性である私を狙うとは宗旨替えしたか。


 「ホリィ、抜けているように見えて、お前、けっこう(したた)かじゃねぇか」


 「エドさんが私を舐めてただけでしょ」


 私の事を子ども扱いし続けていたエドさんがきまり悪げに私の頭を撫でた。


 「ん、悪かった。見直した。――キルタだがな、俺が今まで保護した子供とお前の毛色が違うせいでちょっかい出してきたんだと思う」


 エドさんは”保護”と言っているがサジさんに聞いたら”たかり”とでも言いそうだな。


 私はお金に困っているようにも見えないし、怪我をしている訳でもなく誰かに追われている様子もない。それなのに何故エドが傍についているのか、これはいつもの”保護”ではなく彼の特別な少女なのではないか、ならばせっかく見せた弱みだ、此方に誘い込み使わせてもらう――という考えではないかと言うのがエドさんの予想。

 やっぱりあの女性は方便ではなく本気でエドさんがロリコンだと思ってるんじゃ……。


 結局、一人になるなと言うことに尽きるらしい忠告に頷き、エドさんと一緒に宿に戻った。



 さて、どうしようか。一人部屋の中で考える。


 1.エドさんと離れて別の町に行く

 2.自衛に徹する

 3.キルタの誘いに乗ったふりをして敵方を駆除する


 安全第一に考えるのなら選ぶのは1番。2番はいつまで続くのか分からない上にエドさんが”何とかする”なんて言ってフラグ立てたから悪手だろう。少なくとも3年以上の間、エドさんはこの問題に取り組んでいるのに解決していないのだ。

 誘拐された被害者が犯人側に付いちゃっているからなぁ。


 3番は【いのちだいじに】に反するようでいて、根本原因の排除と考えれば妙案じゃないだろうか。誘拐された被害者(わたし)が「犯人はコイツだ!」ってやればいいんじゃない?


 わざと町を一人歩きすれば、さっき話しかけてきたオバサンか、あるいは他のキルタメンバーが私を誘いだそうとする可能性がある。それに付いて行っては誘拐にならないが、多少の抵抗をすれば実力行使してくるだろう。本気の抵抗をすると怪我したりするかもしれないし、幸い私は”小さなお嬢ちゃん”に見えるようだから、怯えているようにさえ見えればそれほど手荒な事もされまい。


 ただし、私も洗脳されてしまったらアウト。エドさんの心にさらに傷をつけることになってしまうだろう。


 なので


 身を守るため、安全第一の為、いのちだいじにの為にギフトを習得しよう。


 ギフト要らない、チートもりもりは勘弁してと言ってまだ一日も経っていない。それこそ舌の根も乾かぬうちにってやつだ。


 なんでこうなったんだ?


 一般モブ市民としてひっそりと暮らしていく筈だったのに。


 それもこれもエドさんが悪い。投げヒールで済んでいたらこんな事にはならなかったんだぞ――と責任転嫁しようとして、そもそもヒールをかけようとしなければよかったんじゃね?と思い当たり反省。


 「黒曜蛇ちゃん、私、今からゾワゾワ人間になるけど心配しないでね?大丈夫だからね?」


 肩にいた黒曜蛇ちゃんを手に誘導してベッドに移す。


 名前を付けたいな、なんて思ったりもするけどただでさえ第一遭遇第二界生物として思い入れが強すぎるのに、これ以上に情が移ってしまったら去られた時に辛いからなぁ……。


 なぜ付いてきたのか、なぜ一緒にいてくれるのかがわからないから、突然去っていっても理由は分からないだろう。


 今、一緒にいてくれてありがとう。



 新たに習得したスキルは


【土魔法】【風魔法】【空間魔法】【付与魔法】


【探知】【索敵】【身体強化】【隠密】


【複製】【スキルコピー】【レジスト】


あー、ゾワゾワした。


勿論、全て隠蔽済みです。




読んでくださってありがとうございます。


5月1日より投稿を始めたのですが、昨日、初日の100倍を超えるPVがあり、ビックリするとともにとてもとても嬉しかったです。


ブクマ・評価、励みになります。


これからも読んでいただけるよう頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。


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2020/08/22 短編の異世界恋愛もの「スライムの恩返し」を投稿しました 宜しかったらこちらも是非
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