「没年不詳だって?」
「佐助」
「はい」
「ネットショップに行こう」
「ねっと……」
「あ、いや、ちょっとジュースを飲みに行こう」
佐助を隣に座らせて、おれはパソコンの電源を入れると、鶴松と検索してみた。
豊臣鶴松
時代 安土桃山時代
生誕 天正十七年五月二七日(一五八九年七月九日)
死没 没年不詳
改名 棄丸→ 鶴松→豊臣秀矩
…………
…………
「没年不詳だって?」
今度は佐助と検索してみた。
猿飛佐助
生涯
真田幸村(信繁)に仕える忍者で、真田十勇士の第一・筆頭であるというのが一般的な設定である。
また俗説で、佐助は男でなかったというものがある。豊臣軍と徳川軍との遠州決戦や江戸城攻略でも諜報活動をしたのち、秀矩と共に突然消息を絶ってしまい、その後は行方が知れないままとなっている。
なるほどね、そうなっているのか。
その後もしばらく検索を続けたが、それ以上の収穫は無く、店を出ることにした。何か知れない、見えざる手に招かれているように感じて、ここまで来たのだが……
それにしても不思議なのは、二度目の転送だ。あのパソコンはネットでジャンク品を探しているうちに見つけた物なんだが、鶴松とキーボードを叩いていたらとんでもないことが起こってしまった。
だが今回は違う。何もしてないのにいきなりタイムスリップした。どうなっているんだ。他の誰かに転送されたような感じだ。まるであのパソコンにそんな意思があるみたいではないか。
とにかく浜松城や江戸城跡地に来れば何かヒントでも見つかるかと期待して来たんだが、何も無いし起こらない。あのパソコンさえあればなんとかなるのかもしれないが、どうしたらいいのかもう全く分からない。
「佐助、おれちょっとトイレに行って来るから、待ってて」
「といれ」
「あ、厠だ」
「はい」
店の奥に行き、用を済ませてトイレから出てくると――
「あれ?!」
隅の棚にポツンと置かれたノートパソコンを見つけた。汚れて古いものだが、見覚えがある。
というのも、このパソコンの蓋には端の方に、二頭のゾウが向き合っているステッカーが貼ってあるのだ。見間違える訳がない。これはおれが以前ジャンク品の中から偶然手に入れ、戦国時代に転生してしまったものと同じやつ!
何でここにあるんだ?
すぐ店員を呼び、このパソコンを使いたいと言った。
「それはかまいませんが、……こんなのがあったっけ。多分これ具合が悪いですよ。他のパソコンがいくらでもあるんだから――」
「いや、これが良い。これを使わせてくれないか」
いぶかる店員を無視して、そのパソコンをセットし、電源を入れた。
さっそく鶴松と検索を始めると、ちかちかと文字が点灯し始め――
「あ、そうだ佐助、おおい、佐助、こっちに――」
これは……、あの時と同じだ。身体が浮くような感覚。やばい、早く呼ばなくては、サスケ……
「もう、なんでこうなるの。面倒見切れないわ」
「…………」