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「ショーグン」



 イギリス軍も豊臣軍と共に薩摩に向かっている時、パインがおれの前にやって来た。


「ショーグン」

「ん?」

「スペイン軍船とのバトルなんですが、ただいま入りました報によりますとイギリス軍が勝利したようです」

「そうか!」


 パインの話では、当初はやはり風上を確保しようと、終日チェイスが行われていたんだが、そのうちに風が強くなって来た。ここは判断が難しいところだ。より強くなれば風下の方が有利になるが、この時代は当然天気予報など無い。空の雲と波を見て、後は船長の判断次第。間違えれば途端に不利になる。


 ところが風は弱まる気配が無い、どんどん強くなる。もちろんスペインの船長も風下にかじを切るタイミングをうかがってはいたのだろうが、台風の話を聞いていたイギリス船の船長の判断が一瞬早かったようなのだ。一気に風下をとるとキープした。こうなると簡単には位置を変えられない。


 やがて砲撃戦が始まり、風上のスペイン船から流れてくる硝煙で視界が悪くなってきたが、ここで風はさらに強く吹き始めたようだ。

 スペイン船は風下側に傾き低くなってしまった為、浸水のリスクから低層甲板の開口部を閉じなければならない。下層甲板に装備した重砲を使うことが出来なくなったのだ。


 これに対しイギリス軍船は全ての砲をスペイン船に向け砲撃を続けた。

 ついにスペイン・ポルトガル軍の二隻が大破し、一隻はマストを折られて操舵不能となったその三隻を沈め、平戸に帰って来たという。残り二隻は逃げて行ったらしい。


 おれは平戸に戻っているイギリス軍船の船長に、今行われている鹿児島湾岸での戦闘に協力してくれないかと問い合わせてみた。船長は台風の話が大いに参考になったと喜んでおり、破損個所の応急修理が終わり次第、すぐ鹿児島湾に行ってくれることになった。


 「トキ」

 「はい」

 「忠恒殿の所に頼む」


 忠恒殿には事情を話し、沿岸から二キロ離れたくらいの防衛ラインを敷いてほしいと頼んだ。

 ただこの頃になると、さすがに豊臣側藩主や周囲の者達がおれの神出鬼没ぶりを怪しみ始めた。伝令のように早馬を使えば、一日で最高一〇〇キロくらいを移動出来る。ほぼ中心の熊本城から馬を走らせれば、九州の全域に二日から三日以内で到着出来る計算になるのだが……


 もっとも鹿児島に居たその直後、平戸に現れ、さらには他の豊臣側軍の本陣などと次々に移動したとしても、それぞれの場所に居る者同士は、すぐには確認のしようも無いのだから憶測にすぎない。とうとう影武者をうまく使っているのでは、との噂から、さらには天狗と共に空を駆けていたのを見たと言う者まで現れる始末であった。


 やがて豊臣軍が到着したすぐ後で、イギリス軍船四隻が鹿児島湾に姿を現した。スペイン軍の騒いでいる姿がはっきり見て取れる。

 翌朝、湾岸沿いに陣取るスペイン軍に対して、陸と海側からの熾烈な総攻撃が始まった。薩摩軍はありったけの銃を出して来ているのではないか。見ると女性のスナイパーまで居る。

 そして正午過ぎ、ついにスペイン軍から降伏のサインが出された。




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