「その者どもを探し出せ!」
スペインとポルトガルの軍を敗退させ、暫く平安は保たれていた。
だがまだキリスト教の普及を企てる、宣教師達の問題が残っている。キリスト教そのものはともかく、その後を見据えたキリスト教国の策略が問題なのだ。日本を植民地などにしてはならない。
それには彼らと対等に戦える軍備と人材、システムが必要なのだ。力の無い国が、侵略してくる欧米を批判するだけでは話にならない。ボクシングで相手が強く殴りすぎると批判するようなものだ。対等の力で殴り合うのが現代の国際ルールなら、一方的に弱い者を攻撃して屈服させるのがこの時代のやり方なのだ。
だいたいポルトガル国王が日本人の売買禁止令を発布しているって、それだけで十分上から目線だろう。日本の国会で、ポルトガル人の売買を禁止するなんて発表しているようなものだ。
軍備は国内の経済を発達させ、物流を活発にすることでいずれ解決出来る。問題は人材で、すぐには育てられないということだ。勝家のような者がもっといる。
そんな事を考えていた年の暮れだった。
「殿!」
幸村がバタバタと走り込んで来た。
「どうしたのだ、幸村、騒々しいぞ」
「江戸で大火だそうで御座います」
「なに」
すでに火は消えているのだが、江戸庶民の殆どが焼け出されているとの情報であった。
「トキ」
「はい」
「江戸に頼む」
「分かりました」
江戸城も焼け落ち、辺り一面焼け野が原となっているではないか。
しかもその惨状を見て一儲け企んでいる者が居るとのこと。
「誰だそれは」
「一握りの商人が材木を買いあさっているいる為、建築資材が高騰しているという事で御座います」
「その者どもを探し出せ!」
「殿」
「ん?」
「探し出してどうなさるおつもりでしょうか?」
一緒に来ていた太郎兵衛が声を出した。
「このままでは庶民が困るだろう。その者どもを何とかせねば」
「その商人達が材木を買いあさるのは才覚で御座います」
「…………!」
「権力で商人を抑えつけてはなりません」
「ではどうすれば……」
「殿がその資材を買い上げればよろしいと存じます」
「しかし――」
「その者達は八方手を尽くして集めて来たのでしょう。だとしたらご苦労だったと声を掛けて言い値で買えば、彼らも喜ぶと存じます」
「なるほど、そうか、分かった」
おれは江戸の火事がたびたび起こっているのが気になった。それも一たび火が付けば江戸の街を焼き尽くす大火になるのだ。何とかならないのかと考えた。
江戸城の主となってる真田信之に防火対策を考えた街造りを命じた。道を碁盤の目にして間隔を十分開け、火に強い常緑の木を道沿いに植えるのだ。
これで完全に火の粉を防げるとは思わないが、何も対策をしないで、また密集した家屋が立ち並ぶよりはましだ。