「佐助のセンスは大したものよ」
ガールズコレクション一六一六が長崎で開催された。
港町復興を祝って、盛大なものとなった。
「佐助、準備はいいか?」
「はい、スカートはもう作りすぎなくらいです」
「そうか」
「佐助のセンスは大したものよ」
トキが断言した。
「扇子?」
「扇子じゃなくって、センス、趣味が良いって意味よ」
「じゃあガールズコレクションは分かったけど、一六一六ってなに?」
それにはおれが答えた。
「西暦なんだけど、未来と繋がる記号みたいな感じで後ろに付けたんだ」
「良い意味なんですね」
「もちろんだ」
佐助とトキは上手くいっているようで何よりだ。
そしてショーは歌舞伎座のメンバー総出となった。それに加え、佐助やトキ、さらにはお国までもがウォーキングに参加するという華やかなもの。
イギリスの商人も多数来場していて、そのファッションの新しさ、奇抜さに目を奪われ、すぐにも商談がまとまりそうな勢いであった。ミニスカートはさすがにまだ早いと、ロングを選んでいた。
それでも、とにかくヨーロッパよりも斬新で、先進的なデザインが評判となり、信じられない出来事だとの噂が広まっていくことになる。
このショーの成果に満足したおれは、さらに翌年、大阪でもガールズコレクション一六一七を開催することにした。商談はすべて豊臣商事を総括する太郎兵衛に任せてある。
「殿」
「トキ、どうした?」
「太郎兵衛様より、ショーを見たイギリスの商人達から、今年は多数の商談を受けているとの事です」
スカートのサンプルを買いイギリスに持ち帰った商人達は、本国での反響に驚き、さらに商談を進めたいと翌年に言ってきたのだった。
おれはファッションの商談もさることながら、かねてより頼んでいた、造船に関するイギリス人技術者の紹介はどうなっているのかと聞いた。
イギリスに技術指導を仰ぎ、造船技術を学ばせる必要がどうしてもある。今は帆船の時代で、原動力はいずれ蒸気機関になるのだが、まだまだそれは先の話だ。
いずれにせよ、今の日本は外国文化の長所をどんどん取り入れなければ将来が危うい。黒船がやって来てからあたふたするなどという事態は避けたいのだ。特に造船所建設に関しては、外国から買った軍艦を自国で修理する必要性もあり、ぜひとも建てなければならない。そのことを太郎兵衛には強く言っておいた。