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「これは最近造られたものですね」

 仙台の城は引き渡しが終わり、豊臣政権の基盤を整える時が来た。もちろんおれ一人で出来るわけがない。豊臣家臣の者達だけでもそれは無理だろう。世の中から大勢の賢者を集める必要がある。

 それともそんなこざかしい真似をせず、もっと大きな時代の流れに任せれば良いのか。だったら何もしないでいいか。それはないな。さてどうしたらいいのか。

 

「殿」


 佐助が声を掛けてきた。


「あの」

「なんだ」

「さくらミルクラテ……」

「ん」

「はい」

「飲みたいのか」

「……だめですか?」


 なんか急に現実的な場面になったな。


「そうだな、行くか」

「はい」

「よし、行こう」


 という事になった。

 誰も居ない頃を見計らい、二人は着替えをして、隠してあったパソコンを取り出した。


「行くぞ」

「はい」


 パソコンを畳の上に置き、鶴松、東京と打ち込んだ――


「佐助、このパソコンをしっかり掴んでいろよ」

「はい!」




 この時、パソコンの中で起こっていた不可思議な現象、いや会話を、秀矩や佐助が知る由もない。


「やっぱり人の居ない安全な所に転送させるのがいいわね」

「もちろんよ」

「じゃあ公園とか?」

「そういう事」




 おれたちは綺麗な芝生を踏んで立っていた。

 

「よし、着いた」

「わあっ!」


 そしてタクシーに乗り、近くのスターバックスに行ってくれと頼んだ。現金はまだ前回のがたっぷり残っている。

 

「鉄の籠ですね」

「佐助はおれのジョークを覚えていた」

「あっ、カレーショップだ」


 タクシーを降りると、スタバの近くにカレーショップを見つけた。


「佐助、おなかはすいてないか?」

「そうですね、少し」

「よし、先にカレーを食べよう」

「かれー」

「はは、そう、かれーだ」


 カレーショップに入る。きょろきょろと落ち着かない佐助だが、特に店員のきびきびした動作が目に付くようだった。

 渡されたメニューの中から、辛さは中くらいを選んで、肉はまだだめだろうと、野菜カレーを注文した。

 なかなかリラックス出来ない彼女だが、運ばれて来た料理を眼を丸くして見ている。


「変わった食べ物ですね」

「まあ食べてごらん」


 スプーンの使い方を教えて上げる。

 だが、食べ始めた佐助が泣き始めてしまったので、食事もそこそこに出てしまった。


「そんなに辛かった?」

「なんですかあれは」


 佐助は涙をぽろぽろ流しているではないか。

 これは失敗だった。

 やっぱりさくらミルクラテだな。さっそくスタバに入った。

 まだ佐助は涙を拭いているので、おれが代わりに注文することにした。

 もちろんさくらミルクラテとケーキを見繕って注文。

 食べ始めた佐助はやっと満足の笑みを浮かべた。


 という事で、佐助の希望は叶えた。次はおれの番だ。

 前回は小刀が良い値段で売れたのだが、今回も実は持ってきた物がある。

 前もって電話をいれ、サザビーズ東京オフィスに行った。

 大阪城より持ち出した、天正大判てんしょうおおばん。天正菱大判を三枚、オークションに出品してみることにしたのだ。

 秀吉が金細工師の後藤四郎兵衛家に鋳造を命じた大判で、海外のオークションではとんでもない値段が付くという。

 本当かどうか試してみようと思う。

 サザビーズでは、出品者の個人情報の保護には厳格で、たとえ盗難品の出品者の個人情報でも警察に開示することはないという。

 出品者はおれだが、もちろん匿名だ。

 スタッフが黄金色に輝く大判を鑑定してくれている――

 その横顔を息をのんで見つめた。

 だが、


「残念ですが、この大判は、出品者が希望されているような値段にはならないでしょう」

「えっ、なぜですか?」


 そんなことはないだろうと、食い下がる。


「よく出来てはいるんですが――」

「あの、希少価値という点では……」

「本物でしたら四百年以上もの時を経ているんですよ。こんなに綺麗なわけがないんです」

「いや、だけど――」

「これは最近造られたものですね」

「…………」



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