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ツヅチ

「村長」

山の斜面

岩がごろごろと転がり

木も低い物が、二三本生えているだけ

そんな中を、老人が、頼りない足場で徐々に登っていた

「村長」

村長の足下の岩が崩れ

男のヘルメットに当たる

「村長」

男は、果てしない道を見上げていた


「それで、あんた、当たりを本当に、交換するのかい」

彼女が、アイスを食べ終わると叫ぶので

彼女に近寄ると

「見てみて、当たった」

そう言って、当たりと書かれた棒を、僕に付きだしてきた

「其れはよかったね」

僕は、そう言うと、彼女は店の中に、駆け出す

「おじさん、おじさん、当たったもう一本ちょうだい」

そう、それが、全ての元凶だったに違いない

もし彼女が、食い意地を張らず

当たりの主張を取りやめていれば

今になってそんなことお思う

「お嬢さん、本当に、当たりと、交換で、よろしいですね」

おやじは、何か、

物騒な物言いで、彼女にいったが

彼女は、そんなことは気にしていない様子で

うんと頷いた

何だろう、客も来ないからケチって居るのだろうか

こんな場所では、仕方がないのかもしれない

「其れでは、奥に」

僕はその時、気づかなかったが

背後に、村人らしき男達が

何人も八百屋の前にたむろいでいた


「村長休みましょう」

岩場の中腹に、洞穴のようなくぼみがあり

そこからは、激しい日光も届かず

わずかばかりの涼しい空間が存在した

「そんなことをしている暇はない

気が付くと老人は

また岩場を登っていく

もしこんな場所に、わき水があっても

水を引くことを考えればと男は思った


「それで、丁なのか半なのか」

脇の男が、僕に言う

が、別の男が、そいつを殴り飛ばす

目の前の片目の男が、僕をみる

「あの、すいません丁とか半とか意味が分からないのですが」

場の空気が一瞬で凍った気がした


「村長」

山の尾根伝いに歩くが

一枚岩のようなその足場は

一歩ふみまちがえば、ヘルメットなど容易く意味をなくしかねない

しかし、はちまきを巻いた村長は

山猿のように、その岩場にへばりつき

先に進んでいく

「村長」

声がこだまし、二重三重に帰って行くる

「村長」


「それじゃあ丁で」

当たりが静まりかえり

所々で「ちょう」「ちょう」と聞こえる

「丁でよろしいで、やんすか」

男はその時始めて声を発した

その声は、僕を、不安のどん底に変えた

もし間違えばどうなるというのだろう

まさか、この山のどこかに、秘密の地下鉱山があり

そこで日夜、賭に負けたアイスの当たりを引いた人たちが、重労働を、強要されているのでは無かろうか

しかし、今のご時世そんな

僕は、うなずきかけて、目の前の

がらんどうの男を見て

考え直した

さて、どうしたものか



「村長」

村長は、崖っぷちに、手をかけ

もう片方を、私が握っていた

「私は大丈夫だ、だから、水を」

其れは、賭に負けて、どうしようもなくなった

どうしようもない役の役者を、居間で見ている気がする

「大丈夫ですから、もう少し、力入れてください」

脂汗がにじむ老人の丸い顔

私は、ぎりぎりと、村長を、引きずる

「いたいいたいいたい」

村長は、そんなことを言ったが

全力で引きずることにした


「丁で、お願いします」

男は、こちらをにらむ

もう何回目の打診だろうか

「早くしなよ」

と後ろで彼女が、リュックを背負ったまま聞いてくる

暢気なのかそれとも

「丁で」

男は、賽子を、お椀に入れて

こちらを目のない方で、もう一度にらむ

「はい、今度こそ」

賽子が、カランと音を立てた


「村長大丈夫ですか」

腕が、プらーんと揺れている村長は

顔を赤くしたり青くしながら

岩の上で、天を向いていた

「村長ー」

僕は無意味に叫ぶ

心底うざそうに、村長の顔が歪む

良く晴れた晴天くゆる昼のことである


「半」

辺りから、歓声の声がひびいいた

どう言うわけか彼女まで叫んで喜ばしそうにしている

「じゃあ」

男が、声を上げた

その低い声は、その高い歓声の中で

ひときわ低くよく響いた

男は、アイスの棒を、手に取ると

高く掲げた

「よっしゃー」

男は、そう叫ぶと

その際すの棒を、おじさんに、渡しに行く

僕は、一人たたずんでいた


「村長ありましたよ」

それは、この山の山頂と言っても言いような

高い岩肌であった

その中に、ぽっかりと穴があり

青い透き通った水が

懇々と漏れ出す

「ありましたね」

村長はそういうと、腰をついた

「ええ、しかし、どうやって、これをしたまで」

村長は、携帯を取り出すと

どこかに電話をした

「いやー、疲れた疲れた」

私は、辺りの絶景をみながら

今の自分が非常に、危険な場所にいることを再度

認識する

しばらくして、巨大な爆音が鳴り響いた

僕はそこに、軍用ヘリのような

巨大な巨影をみたのである


「結局、温泉、入れなかったね」

手には、袋いっぱいのトマトやキュウリが詰め込まれたものを

抱えていた

「まあ良かったじゃん」

彼女はそう言って笑った

どうも大変な日曜日であり

二度と田舎に来ないと誓った午後の昼下がりである

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