51.5話 独白(彼の場合)
これはもう、諸手を挙げて認めざるを得ない。
こんな言い方をすると随分上から目線に思えるが、そう言いたくなる俺の気持ちの昂りは誰にも否定できないだろう。
俺個人としては、彼女の才能に疑問を持っていたわけではない。初めて歌を聴いた時も、初めて詩を聞いた時も、彼女の世界に一瞬のうちに引き込まれたのだから。
だけれども、自分が感じたその衝撃を他者が共有できるのかどうか、そこに確信は持てなかった。何せ、自分が好んで聞く音楽は所謂売れ筋の主流からは外れているからだ。別に世の中で流行っている音楽に対して逆張りをしているつもりはない。自分の好みが、単純に流行りものと合わないのだ。
だから、俺が感じた彼女の輝きを、世間一般の人たちが同じように受け入れてくれるのかは確信が持てなかった。あの能天気な馬鹿は、そのことになんの疑いも持っていなかったようだが。それはそれで羨ましいとも思うけれど。
でも、今日でその疑問もすっきり解消だ。だって、このフロアのお客さんたちを見て、その表情を見て、疑えと言う方が無理な話じゃないか。
(無名のインディーズバンドにひと時の夢を見させる悪趣味なドッキリ企画でもあるっていうなら話は別だが。)
俺は今、見たことの無い景色をこの目に焼き付けている。
だが、それはすべて彼女のおかげだろうか。
きっと違う。では、彼女を見つけたあいつのおかげだろうか。強引にバンドをまとめて動かしたあの人のおかげだろうか。はたまた、曲を作った俺のおかげなんじゃないだろうか。
いや、そのどれでもない。
誰が欠けても駄目だった。今ここにある熱狂は、俺たち全員が勝ち取ったものだ。
それを俺は今実感している。だからこそ、認めざるを得ない。それでいいじゃないか。もっと、もっと今を楽しまなくちゃ。




