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0話 惰性という名の悪魔
「お疲れ様」
「次のスタジオは明後日の18時からだからな。遅刻すんなよ」
「わかってるって」
渋谷のライブハウス「SHAKER」の前で溜息をついた。今日のライブ、自分たちが呼んだ観客は7人。ライブハウスから課されたノルマと機材費を合わせて、25,000円ばかりをバンドメンバーの3人で支払った。
「まぁ、こんなもんだよな」
落書きだらけの、高架下の壁を眺めて呟く。駅への歩道橋を渡る時に、背負ったRickenbacker4003がやたらと重く感じた。3月の終わり、春も間近だと言うのに、ひどく寒い夜の、あまりにもあり触れた日常の光景。