ＴＯ ＺＩＯＮ

チャプター３１ イメージ映像 体に気を付けて

　

シュウ君、ごめんね。お母さん・・・ってシュウ君に言うの、なんだか恥ずかしいね

　・・・お母さんは、ずっとシュウ君に嘘をついてました。

　ごめんなさい。

　死んでるくせに、生きてるふりするなんて・・・・・・ひどい親だよね。

　ごめんね。

　お母さんね。死ぬ前・・・踊ってみたかったの。

　ダンス・・・すごく上手だったでしょ？あれは、お母さんがなりたかった自分なの。

　本当は踊った事なんて一度も無くて、ザイオンで生まれて初めてダンサーを見て。とっても素敵だなって思ったの。

　ダンサーってかっこよくて・・・自由で。お母さんには出来ない事が全部できる感じで・・・。

　シュウ君が気になってしょうがなかった。

　アッキーと結婚して、シュウ君が生まれて・・・世界で一番幸せぇって思えて。

　なのに、お母さん死んじゃった。

　ごめんね。

　暗い所にずっと一人でいたんだよ。

　そしたら急にシュウ君がラップやってる声が聞こえてきたの。嬉しかったぁ。気づいたら公園のベンチにいたの。すごくびっくりしたよ。

　・・・シュウ君のマンションでね、ヤクザに喧嘩させようとしたのは私の我儘。

　もちろん、シュウ君が危ない目に遭うのは嫌だよ。

　でも、シュウ君が死んだら一緒にいれるかな？って。それもいいかな？って。

　もう、親として最低だよね。

　ごめんね。

　なんか暗い話ばっかりでごめんね。

　森林公園、毎日すごく楽しかったなぁ。

　シュウ君はどんどんラップが上手くなっていって、周りにいる子はいい子ばっかりで。

　警察から逃げた時なんて、すっごいドキドキして、もう死ぬかと思ったよ！

　な～んて、もう死んじゃってました～きゃはは。

　シュウ君が手を引っ張ってくれた時ね、いい子に育ってるな～って思ったよ。

　そうだ！シュウ君が住んでた車あるでしょ？あれってね、お母さんとアッキーが結婚した時に買ったんだよ。

　軽だけど、せめて大きい車が良いって、お母さんがアッキーにお願いしたんだよぉ。

　ほんとは一緒に色々なところに行きたかったなぁ。

　シュウ君がアクティに連れってってくれたとき、すっごい懐かしくて、なんだかキューンとしちゃったよぉ。

　赤ちゃんの時、おっぱい飲ませたのとか思い出して・・・。

　でも、まさかあそこで飲ませる訳にもいかないよねぇ。

　なんかヘンタイみたいになっちゃうもんね。

　アクティ、今はザイオンに置いてあるんでしょ？

　へへ～ん。お母さんは何でも知ってるのだよぉ。

　ピッカピカにしてもらって、エントランスの所にかっこよく飾ってあって。

　うん。ホントに良かった。

　思い出の車だからね。安心、安心だよ。

　シュウ君はかっこよく育ったね。

　きっと私に似たんだよ。良かったねぇ。

　お母さん、ドキドキしちゃたぁ。

　これって浮気になるのかな？キャー、アッキーに怒られちゃうよぉ。

　いい子に育ったのはアッキー似だね。感謝、感謝だね。

　お母さんが、アッキーの事を好きになった理由、シュウ君は知らないでしょ？

　アッキーと初めて会ったのは、ザイオンの近くなんだよ。

　あの時、辛いことが重なっててね、本当は死のうと思って橋の上にいったの。

　そしたらアッキーがたまたま向こうから来て、運河で泳いでる鴨の親子を見て『かわいいね』って。

　すっごい優しい顔して笑ってくれたんだよ。

　お母さん、あんなに優しい顔された事なかったから『この人はいいお父さんになるんだろうな』って思ったの。

　そしたら急にね、アッキーの奥さんになりたくなっちゃいましたぁ。

　キャー恥ずかしい！

　なんだかお話ししたら満足してきちゃった。

　『お迎えの時』的な感じがしてきましたよぉ。

　ごめんね。

　悲しまないでね。

　シュウ君の周りはいい人が多いね。アッキーの育て方が良かったんだね。

　人志君はいい子だから、ずっと仲良くね。

　マイクさんに生意気なこと言ったらだめだよ。

　無駄遣いしたらダメだよ。

　かわいい彼女を見つけてね、できればたくさん子供ができたらいいね。

　シュウ君が好きになる子はきっといい子だから、お母さんはどんな子でも安心です。

　死んじゃってごめんね。

　アッキーと待ってるね。

　体に気を付けて、元気でね。