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TO ZION  作者: T@KUMI(画)、MIKI(文)
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チャプター1 イメージ映像 襲撃

 週末のラブホテル街に、一台のハイエースが停車した。車からは大柄な男達が弾かれたように飛び出してきた。男たちは揃いの服装をしている。上下黒づくめだ。背中には揃いのプリントがされている。その内の何人かは野球のバットケースを担いでいる。

 明らかに怪しい集団であるが、腕を組む男女や千鳥足の通行人は誰も気に留めなかった。人口密度が高く他人に無関心な土地柄ゆえだろう。

 

 車から降りた男達は、迷うことなく進んでいく。同時に、周囲を注意深く警戒していた。

 先頭の男が立ち止まると、仲間たちに眼で合図を送った。心得たとばかりに全員が懐から黒い布を取り出し、頭から被った。目出し帽だ。

 バットケースの中身を取り出している者もいるが、中から出て来たものは鉄パイプだった。


 男達の目線の先には一棟のビルがある。築年数が比較的に浅く、それなりに良い造りの建物だ。メインのエントランスはシャッターが閉まっているが、その横には地下への階段が口を開けている。階段の上にはスーツ姿の屈強そうな男が二人、入り口を守るように立っている。神社の狛犬のようだ。


 男達の殺気はもはや隠しようが無い程に高まっている。仲間の昂ぶりを察したのか、先ほど合図を送った男は無言で歩きだした。集団もそれに続いていく。

 スーツの二人が集団に気付いた。それを察した黒づくめの男達が全力疾走で突っ込んでいく。スーツの片方が手に持っていたトランシーバーに何かを叫ぶ直前、振るわれた鉄パイプがその側頭部を直撃した。『カン』と高い音を立て、スーツは地面に昏倒した。ほぼ同時にもう一方のスーツも制圧されていた。


 黒づくめの集団は階段を駆け下り、地下に殺到した。そこには頑丈そうな扉があった。先頭の男が扉に手をかけるも、施錠されているため開かない。

 だが男達は落ち着いている。一分ほどその場で待機していると扉が中から開き、一人の男が顔を覗かせた。中から手引きしていたらしく、黒づくめの集団に目配せを送る。夜の街で遊んでいそうな、だがこれといった特徴も無く、印象に残りにくい男だった。


「うぉらぁぁぁあ!」

 獣のような叫び声を上げながら、男達が扉の中に突撃する。彼らの背中には、堂々たる楷書体で次のようなプリントがされていた。


『日本人のための日本』

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