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TO ZION  作者: T@KUMI(画)、MIKI(文)
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チャプター0 イメージ映像 踊る少女

挿絵(By みてみん)

 一筋のスポットライトを浴びて少女が舞っている。少女の姿は流れるように、あるいは唐突に変化する。

 水源の水が時に静かに、時に荒々しく、細くなり、太くなりながら、大河の濁流となるかのように。


 少女の舞をなんと表せばよいか分からない。ある者が見れば、ロック、ヒップホップ、ブレイクダンス等のストリート系のダンスが渾然となっていると思うだろう。バレエや日本舞踊のようでもある。

 時として決めるポーズは妖艶なカルメンのようだ。


 その姿はどこまでも美しく、頭からつま先までの軸がぶれることが無い。しなやかに、指先まで完璧なラインを描いている。

 肩までの髪は墨で描いたように黒く、つやを帯びて輝いている。髪と同じ色の薄いドレスの胸元で激しく揺れるロザリオが、スポットライトを浴びて幽かに瞬く。


 決められた振付ではない。即興で舞っている。直観でわかる。

 そうして少女は長い時間舞っていたが、やがて力尽きてその場に腰を着く。大きく吐き出した息は白かった。

 少女は遠くを見つめている。邪気を感じさせないその顔は幼な子のようだ。

 彼女の視線が向きを変える。こちらと目が合った。少女が放つ印象が変わった。不思議な事に慈母に見つめられたような安らぎに包まれた。


 踊り疲れているのだろう、立ち上がる時に少しよろめきながらも、少女は静かに歩み寄り、手を伸ばしてくる。

 触れ合いたい衝動に駆られた。こちらも手を差し出す。アームカバーから延びた蝋細工のような指先は、ラピスラズリに似た深い瑠璃色に彩られていた。


 その手を握りたい。手を取れば安らぎに包まれる。

 衝動は一瞬にして確信に変わった。

 あと少し・・・。だが、時間はハイパースローモーションのように遅々として進まない。


 手と手が触れる刹那、スポットライトが消えた。

 そして、全ては闇の中に消えていった。

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