8話
ちょいとえっちな感じ?
そいえば6、7話山塚部長の名前間違えてたから訂正しました
風邪を引かないように部長をベッドまで連れて行く。
圧倒的に部長の方が体格では優っているから連れて行くのは大変だったけれど、なんとかベッドの上まで運ぶことができた。
「…ん〜」
「っわ!?」
部長をベッドに寝かせて布団を掛けてあげていたら、不意に腕を引かれ、そのまま部長の上に倒れこむ。
「な、何してるんですか!ってか寝てなかったんですか!?」
「…一緒に寝てくれるんでしょ?」
部長は私の抗議を総無視して、甘えるような縋るような、そんな視線を私に向けた。
そんな瞳で見られたら私はどうすることもできなくて…
「わ、わかりました」
吃りながら答えると、部長は満足したように微笑んで目を閉じた。
私の身体をがっしり両手でホールドしたまま。
これじゃ幾ら何でも寝れない。
「…あの、部長?」
返事はない。
今度は部長の耳元でさっきより大きい声で叫ぶ。
「部長ー!起きてください!」
「…んん、うるさい」
ホールドされていた身体がぐるんと動き、身体の右側に布団の柔らかい感触が当たった。
いわゆる抱き枕状態にされた私は必死で抵抗するけれど、部長は何故かビクともしない。
そうこうしているうちに私も眠たくなってきて、気づいたら部長の抱き枕にされながら眠りについていた。
『っ…ふっ…っんく…』
くぐもった声が聞こえる。
その声に嗚咽が混じっているのを聞いた時、誰かが泣いているんだと理解した。
そうしたら泣いている人は1人しかいないわけで…
「せんぱい」
眠くて目が開かないので、手探りで部長の頭を探してゆっくり撫でる。
昔懐かしい“せんぱい”という呼び名で部長を呼んでいたことに気づいたのは、それから少ししてからだった。
「いかないで…」
魘されているんだろう、部長は力強く私の身体を抱きしめる。
幼子をあやすように背中をさすってあげてると、少し落ち着いたのか部長の身体の震えが止まった。
と思いきや…
「…抱いてちょうだい」
「…え?」
「お願い、杏奈…いつもみたいに」
急に何を言い出すのかと思った。
部長は私を“誰か”と勘違いしているのだ。
「部長、私は」
「寂しいの…もうどうしようもないぐらい寂しいのよ…」
「…」
寂しい。
つい最近、私も感じたことのある感情。
理解できてしまう感情。
「これでおしまいにするから…お願い杏奈…」
この時、私はどうするのが正解だったんだろう。
いくら考えても答えは出なかった。
部長の喘ぎ声を聞きながら頭に浮かんだのは……あの子の顔だった。