6話
今回短めです
翌日。
昨日の曇天はどこに行ったんだと思うぐらい雲ひとつない空を見上げ、大きな欠伸をする。
昨日の夜は目が冴えてあまり眠れなかったせいか、気怠さがハンパない。
出社してパソコンと睨めっこをしていると、山塚部長がやってきた。
いつもより遅いなぁなんて思いながら挨拶をすると、部長は珍しく疲れが隠しきれない表情で微笑む。
「おはよう香菜ちゃん」
「…ちゃん付けはやめてください」
少しでも心配した自分が馬鹿だった。
「いいじゃない、高校時代はそう呼んでたんだから」
「いやもうちゃん付けされるような歳でもないですし…」
丁重にお断りすると部長は何故か噴き出した。
「…何で笑うんですか?」
「ふふ、だって見た目高校生の香菜がそんなこと言うんだもの。面白くて」
「…もうこれ以上言ったら今度から飲み付きあってあげませんよ」
え、それはいや!という部長の言葉を無視してパソコンに向き直る。
部長は暫く何か言ってたけれど反応しないでいたら、諦めたように自分のデスクへ戻っていった。
お昼休み。
ご飯を買いに行こうと財布を持ってオフィスを出ようとしていたら、山塚部長に呼び止められた。
「今日の夜、空いてるかしら?」
「?空いてますけど…」
部長は気まずそうに目をそらしつつ、言葉を続ける。
「…飲み、付き合ってくれない?」
いつもの先輩らしくない弱々しい口調。
滅多なことじゃ崩れない微笑みフェイスが今は思いっきり崩れていて、私は考えるより先に頷いていた。
「ごめんなさいね」
それに対して、部長はありがとうじゃなくてごめんなさいと言った。
それが意味するものを、私はすぐに知ることになる。