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肉欲のち恋欲  作者: にし
11/12

11話


ゆさゆさと身体を揺すられる。


「香菜、降りるわよ」


と同時に部長の声が降ってきて私は慌てて飛び起きた。


「ぐっすり寝てたけど、寝不足?」


涎は垂れてないかと口元に手をやる私に部長はクスクスと笑って言った。


「いえ、むしろ健康的なくらい寝たはずなんですけど…」


電車が止まり、ホームに降りる。

と同時にモワッとした蒸し暑い空気が襲ってきた。


「あーつーい」


あまりの暑さに辟易としていたら、後ろから随分と間延びした聞き覚えのある声が聞こえた。


「っ!?な、何でいるの!」


ばっと後ろを振り向くと、ごくごく自然に彼女がいた。

私と視線が合うと、にぱっと笑う彼女こと春生、ちゃん。


「このお姉さんに誘われたから」


春生ちゃんはそう言って私の隣に立っていた部長を見る。

どういうことかと部長に視線をやるけれど、はぐらかすように微笑まれてしまった。


「ほら、ケーキがあるから急ぐわよ」


そして部長は私を置いてさっさと歩き出す。

その後ろ姿を呆然と見つめていると、ぎゅっと手を握られた。


「行こう」


春生ちゃんに引っ張られるように部長の後を追いかける。

部長はタクシー乗り場で当たり前のようにタクシーに乗り込もうとしていた。


「大人ってずるい」


そんな部長を見てボソッと呟く春生ちゃん。

ほんとにねと心の中で同意しながら私達も後に続く。





5分後。


「…大人ってずるい」


部長のマンションに到着してタクシーから降りた春生ちゃんがボソリと呟いた。

同じように心の中で同意する私。


「はい、入ってちょうだい」


部屋に案内された春生ちゃんは何か言いたげに口を開いたけれど結局何も言わずに口を閉じた。

言いたかったことを察した私はやっぱり心の中で同意した。


「んふふ、早く食べましょ」


部長は早速キッチンからフォークとお皿を3人分持ってきてテーブルの上に置く。

ケーキがよほど楽しみなのか、ニマニマした笑みが浮かべている。

こんなに楽しそうな部長久し振りに見たな…と思うと、私も自然に笑みを浮かべていた。


「…ふーん」


隣から不意に聞こえた声に首を向けると、何故か不機嫌そうな顔をした春生ちゃんと目が合う。


「どうしたの?」

「…何でもない」


何でもないと言う割にはツーンとわたしから顔を背けて不機嫌オーラがダダ漏れな彼女。

なんか怒らせるようなことしたかなと不安になる私。


そんな私たちを部長は微笑ましげに見ていた。

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