それぞれの気持ちⅡ
「森、いつのまに」
加奈子も私も気配を感じていなかった。だから驚いた。
「こっちは、急いで女子を撒いてきたのに、二人の世界だったな。軽く疎外感を感じたぞ」
不機嫌そうに森君が言う。
「そうかなぁ」
私が首を傾げると、加奈子が森君を小突いた。
「森、百合は洒落にならないこともあるから、乙女には考えて使うように」
と国語の先生の様に教えていた。
「軽率だった。サンキュ、塚本」
「森君、急いで来てくれてありがとう」
「鈴木が大声出すなんてよっぽどだろう。俺は塚本に話がある。鈴木は塚本を待ってろよ」
「うん。じゃ加奈子、私どこで待ってればいい?」
「サンタモニカでパフェでも食べていて。私、勝ち目のない戦いに出陣するわ」
そういいながらも彼女は勝気な顔を魅力的に輝かせて、私に二回目のウインクをした。
ゆっくりと学校を離れてサンタモニカに行きながら、私の頭はずっと昔観た『早春物語』という映画のテーマ曲をリピートしていた。年の差のある少女と男性の恋物語だ。
加奈子がからかいながらも森君のことを憎からず思っているのは、むしろ好意を抱いていることは側にいた私が強く感じていた。だけど彼女は私の前では特に、それを悟らせないようにしていた。それがなぜか分からないほど、私も幼い少女では無くなってしまった。それが嬉しくて、悲しくて。芳原先生、こんな時でも頭に浮かぶのは貴方です。どうして私たちは恋を知ってしまうのでしょう。私はまだ咲き方がわからない花です。
問いと答えは堂々巡りで、ぼんやりとした幸せな思い出だけが浮かんでは消えていく。ぼんやり歩いている間に、サンタモニカに着いた。店のデコレーションも春モードになっていて気持ちが明るくなった。加奈子と二人で食べるつもりでスペシャルパフェを注文して待っていた。
校門を出てもう四十分が経ってしまった。スペシャルパフェも溶け出してた。遅いな。心配だけど彼女が負けるとこなんて想像できない。
『リン』
チャイムの音がした。
「加奈子」
振り向くと森君が静かに、私を見つめていた。




